「あかやあかしやあやかしの」ゲーム感想


あかやあかしやあやかしのあかやあかしやあやかしの

HaccaWorks
売り上げランキング : 206

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


「花帰葬」がコンシューマー化もした、HaccaWorks* さんの最新作、「あかやあかしやあやかしの」通称、『あかあか』が制作告知から3年の歳月を経て、発売されました。
公式サイトで予約受付されているのに、なんとか期限内に気付けたので、公式通販で無事ゲット出来ましたv


空環(うつわ)市の郊外の山にある、神社で生まれ育った少年、由(ゆえ)。
普段、山から出る事を禁じられている由は、いつも一緒の幼友達の黒狐(クロギツネ)に誘われ、こっそりと冬の大祭に遊びに行く。
生まれて初めて見た、外の世界を楽しむ由は、そこでふたりの少年に出会う。
山に戻った由が、その事を神社の主であるミコトに告げると、彼女は由にこう言った。

『食事』の準備をするように。

由は山を降り、ふたりの少年に近づくことにするが……。



DVDロム1枚で、ディスクレス可、ボイスはありません。
システムは、前作同様、おなじみの吉里吉里ですが、ゲームシステムは前作とはだいぶ様変わりしています。
会話途中に現れる選択肢を選ぶ以外に、神社や町のマップから、行く場所を選ぶことでゲームが進行します。
ルートによって、行ける場所が増えたり減ったりしますが、どこを選んでも何らかのイベントがおきます。
神社でどこに行くか、街でどこに行くかでルートが分岐するので、難易度自体は前作よりも上がっていました。
今作ではメッセージ枠にセーブやロードなどのボタンは無く、右クリックでシステム呼び出してセーブやロードをするようになっています。
マップ画面で右クリック出来なかったので、最初、マップ画面ではセーブできないのかなあ…と思ってたら、よく見たら下の方にセーブ&ロードボタンが付いていました。
また、前作ではエンド数自体は複数あったものの、攻略できるキャラは花白1人でしたが、今作では、4人のキャラが攻略できます。
男キャラしか攻略できないとはいえ、やはりBLゲームではありませんので、キャラエンドは存在しても、恋愛っぽいニュアンスはほとんどありません。
キャラによっては、多少、恋愛感情らしきものを感じられなくもありませんが……。
どちらかというとあっても、友情、くらいですね。

初回プレイは、共通バッドエンド(エンド13)までにかかった時間が3時間弱程。
既読スキップ使ってやりなおし、椿エンド(エンド6)までにかかった時間が、1時間半くらいでした。
2周目以降は、1時間半〜2時間ほどでした。
フルコンプまでにかかった時間は、約10時間半ほど。
ただし、エンドを見るために何度かやりなおしたりもしたので、実際はプラス1時間〜くらい余分に時間がかかっています。
攻略サイトに頼りながらやったのに一発でエンドを見られないへぼプレイヤーっぷり……(^_^;)。

エンド数は、全部で15個で、その内キャラエンドは12個。
スチルは、キャラスチルが差分抜きで56枚です。(内2枚は、OPムービーとゲーム内ムービー)
背景スチルが差分抜きで41枚です。
前作でもそうでしたが、背景スチルもCG回想から見られるのが嬉しいですね。
今回は、手描き背景と、写真を手描き風に加工したと思しき背景が使用されていました。
和風で、ちょっと暗めな世界観にとてもあっていて、よかったです。
キャラスチルは、和紙っぽい質感に水彩風な塗りで、お話の雰囲気に良くあっていて綺麗でした!
立ち絵も表情が割と細かく動いてよかったです。

タイトル画面から見られるおまけは、「蒐集サレタ繪」(CGギャラリー)、「昨日ノ食事」(エンドリスト)の2つです。
エンドリストをコンプ、またはキャラエンドコンプ(私は最後に黒狐エンドを見たのでエンドコンプ後でしたが、キャラエンドコンプでも出現するのかも)で、「黒狐の部屋」がタイトル画面右下に現れます。
5分程度の、主役&メイン攻略キャラ総出のおまけシナリオが読めます。
他にも、エンドコンプすると左下から「目次」が参照できます。
ゲームプレイ時にゲーム上部にシーンタイトルが表示されるのですが、その全リストです。
シーンタイトルが確認できるだけで、エンドリストとは違って、シーンそのものを参照することはできません。
てるてる坊主のあやかし、「もみじ」というサブキャラがいるのですが、そのもみじのイベントを各攻略キャラルートですべて見ると、タイトル左上に「もみじの部屋」が出現し、ちょっとしたおまけシナリオを読めます。
目次のリストや、もみじイベントなどは、見なくてもメインの攻略には関係ないのですが、こういうお遊び要素があると、やっぱりついつい見たくなりますよね。
おまけとは関係ない部分でも、お祭りの屋台を選ぶ場面で、触ったら音が鳴ったりするところなど、ちょっとした仕掛けがほどこされているのも、楽しかったです。


舞台は、現代日本の架空の地方都市、空環(うつわ)市。
あやかしが神社に住まう土地ですが、一部の人間を除いて、その存在を知る者はいないようです。
ゲーム内での通過日数は5日。
神社マップで神社内にいるあやかしに会うことと、街マップでふたりの少年たちに会いに行くことを繰り返して行くことで、ゲームが進行します。
ルート制限があって、街で出会う、謎の青年・嵯峨野(さがの)は初回では落せません。
祭りで出会った2人の少年、椿灯吾(つばき とうご)と遠近秋良(とおちか あきよし)と、主人公の幼なじみのあやかし・黒狐(くろぎつね)は、初回から攻略できるようです。
マップで場所が色々選べるのが、面白かったです。
攻略は出来ませんが、主人公と仲が良かったり、ちょっとした知りあいだったりするあやかしが、街のいたるところに潜んでいます。
あちこちの場所を選ぶと、そんなサブキャラたちに出会えて、それが宝探しイベントのようで楽しかったですv
知り合いが出てこなくても、街のヒトビト(人々)との会話イベントも起こります。
ちなみに、「ヒトビト」は主人公の目(あやかしたちの目)からは、のっぺらぼうで真っ黒な細長い狐っぽい没個性な姿に見えています。
むしろ人間の方が、あやかしみたいな立ち絵で描かれているのががユニークでした。
もちろん、主人公にとって意味があるヒトビト、ふたりの少年などは、ちゃんとした個人が見分けられる人間の姿で見えています。
主人公は何故神社で生まれ育ったのかとか、「食事」とは一体何なのかとか、ふたりの少年は主人公にとってどんな意味があるのか等は、キャラエンドに至る過程で、徐々に分かっていきます。
キャラエンドを1つ見れば、ある程度の事までは分かりますが、おおよそのあらましが、ほぼ明らかになるのは2周目以降で落せるキャラのエンドででしょうか。
とはいえ、「真相エンド」的なものは、今作ではない…ような感じ?
前作同様、地の文は存在せず、キャラクターの会話文だけで物語は進行していきます。
なので、「キャラクターの口から語られている事」しか分からないので、語られない部分に色々ありそうで、その辺どうなってるのかな?と、気になりました。
やっぱり多少は、というか、シーンによっては(過去シーンとか)では地の文ありのシナリオも欲しかったなあ……。
とはいえ、キャラ同士の会話はテンポ良く進んで、楽しかったです〜。

ゲームシステムやおまけなど、こだわって作られているのがうかがえて、フルコンプまで楽しくプレイできました。
世界観も、背景や音楽を含めて、和テイストでややノスタルジックで妖しい雰囲気を漂わせて、作り込まれているなと思いました。
が、肝心のストーリーの方は、ややすっきりしないまま終わってしまったので、その点ちょっと残念でした。
フルコンプする頃には、色々な謎が、一応明かされはするのですが、前作のように「真相」エンドを見て、「なるほど、こう言う事だったのか!」と思ったような、カタルシスはありません。
フルコンプ後の印象では、まだ、語られない部分が残ってるなあ……という、微妙にスッキリしない感じでした。
過去エピソード、街の成り立ちや、街のあやかしと椿家や遠近家とのかかわりなどを詳しく描いた追加ディスクを出して、その辺りを補完していただきたいです。
特に過去の、嵯峨野に関するあやかしエピソードだけは…!
嵯峨野ルートで語られた部分だけではやっぱりちょっと説明不足なので……。
世界観の雰囲気がいいだけに、真相部分でもう少し、ぐっとくる展開と言うか、盛り上がりが欲しかったです。
主人公含め、人間や、あやかしたちのキャラはどれも個性的で生き生きしていて、キャラクター同士の会話劇は本当に楽しかったです。(それだけに、惜しい、というか)
独特の和テイストな世界観を、背景と音楽が盛り上げていて、不思議な街に自分も迷い込んだような、そんな気分を味あわせてくれるゲームでした。
由が初めてできた友人に、ひょうひょうと、でも以外と強気に(?)仲良くなっていく様子も楽しかったです。
そんな初めての友人と、由がどのような出来事を体験して、エンドを迎えるのかは……、ぜひ、ゲームをプレイして、確認してみてください。




2011/6/6