「贄の町」ゲーム感想


贄の町 初回豪華版
贄の町 初回豪華版
posted with amazlet at 18.10.14
√ZOMBILiCA (2018-06-29)


BLゲームの新ブランド、√ZOMBILiCA(ゾンビリカ)から発売された、第一弾作品です。
ちょっとオカルトチックな作品なのかな? と、公式サイトの紹介を見て気になったので、購入してみました!


十代で家族を亡くし、ガテン系のバイトを掛け持ちしながら暮らす、清澄日天(きよずみ ひそら)。
ある日のバイトの帰り道、暗い路地に入っていく喪服の青年にふと目を引かれ、彼が落とした白い花束を拾う。
届けようと彼の後を追いかけるが、気付いたら彼の姿はなく、見知らぬ「宿」の前に立っていた。
そこはこの世ではなく、死者と、意識不明の者の精神体だけが暮らす町なのだという。
それだけではなく、時に町の者も襲う『異形』と呼ばれる化け物が現れ、生者として迷い込んだ日天は特に餌食になりやすいらしい。
意識不明の精神体の者だけが暮らす『宿』で世話になることになった日天は、宿の住人たちの助けを借りて、元の世界に帰る方法を探すことになるのだが……。



攻略キャラ4人、主人公総受けのミドルプライスゲームです。
録りおろしドラマCDが同封された「豪華版」(税抜き5800円)の方を購入しました。
ショップ限定特典付だとさらにちょっと高くなりますが、Amazonにもショップ特典付(成臣のドラマCD付)の豪華版があったので、そちらを購入してみました。
ドラマCDなしだともうちょっとお安くなってます。
原画は漫画家の厘のミキさん。
シナリオはBL作家の鳥谷しずさんです。
ちなみに、現時点では読めなくなってますが、鳥谷しずさんのブログの記事によると、ゲームの企画者から、詳細なキャラ設定やプロットをもらって、それを元にノベライズしたそうです。
なので、普段の鳥谷さんの文体とは違うし、キャラやストーリー展開も鳥谷さんが普段かかれるBL小説とは全然違うそうです。
これは、ゲームの制作サイドに確認を取ってからブログに書いたとあったのですが、なんでか今は消されてあるんですよね。
でもしばらくは確認できたので、シナリオがBL小説家の鳥谷しず先生なんだ〜と、今知って興味を持たれた方はご注意下さい。
鳥谷しずさんの本を何冊か持ってて、読んだことのある身から言わせてもらうと、確かに最初にライター名を見ずにプレイして、これが鳥谷しずさんのシナリオだと言うのはまず気付かないと思います。
普段の作風と全然違うし、キャラのタイプも鳥谷さんが普段書くキャラとはだいぶタイプが違うので。
ただ!!
いざ、エロシーンが始まると、
「あ……! これ、鳥谷しずさんの書くエロだ!!」
って思ったので、エロシーンにはどんなに通常の文体(そもそも小説とゲームシナリオだと違うでしょうしね)を変えようとも、変えられない作家性が現れるんだな……と思いました。
具体的に言うと、エロシーンでの擬音の使い方とかが、鳥谷さんっぽいな〜と思いました。
同じく鳥谷さんのBL小説読んだことあるよ! って方は、エロシーンで鳥谷さんっぽさを実感して下さい(笑)


ボイスは、一応主人公と攻略キャラ、出番が多い割とストーリーに絡んで来る立ち絵のあるサブキャラはボイスありで、バイト先とか町の住人とか立ち絵のないちょい役っぽいキャラはボイスなしです。
が、メインキャラのボイスぬけがちょいちょいあって、気になりました……。
ここ、結構大事な場面じゃない? ってところでもボイスが抜けてるところがあって、おそらくボイス収録後にシナリオ調整してボイスが足りなくなったんだろうなあと推測。
誤字脱字もちょいちょいあるので、いずれ修正パッチでボイスがないところも入れて欲しいですね。
(ドラマCDの発売も決まってるし、FDも出る予定だから、抜けてる部分のボイスもとりなおせるはず…!)
主人公の日天、最初聞いた時、見た目のシュっとして涼しげなイケメンな感じに対して、「声、低ッ!」って思ったんですが、プレイしていく内にあっという間に慣れました。
そもそもガテン系のバイトしてるんだから、このくらい声低くてもいいのかも…。
でも、総受けBLゲームの主人公の中ではダントツ声低めだと思います。
エロのあえぎ声が甲高くないのは、イヤフォンでプレイしてる身としては、かえってありがたいですけど(笑)


スチル総数は、差分抜きで49枚。
各攻略キャラ差分抜き10枚ずつで、その他共通ルートのスチルやサブキャラ関連のスチルがあります。
アニメ塗りとは違って、ちょっと水彩風というか、淡い感じの塗りで、目に優しいというか、結構血みどろスプラッタな場面でもさほどドギヅく感じなかったのがよかったです。
厘のミキさんの漫画は「鬼舞」(平安時代が舞台の陰陽師ものコバルト文庫)のコミカライズしか読んだことないのですが、人物は可愛くてカッコイイのに、化け物も凄惨な場面も、結構しっかりおどろおどろしく描かれるんだな〜と思った時のままに、「贄の町」でも人物はイケメンでも、スプラッタ場面はちゃんとスプラッタでした。
でも塗りが淡いので、割とさらっと見られるので、ちょっとの血でもアウト! な方以外は大丈夫だと思います〜。
エロな絵は初めて拝見しましたが、安心して下さい、ちゃんとエロイです!(語彙力…)
どのスチルも安定して綺麗なので、そこも安心して楽しめました!


プレイ時間は、ボイスをほぼ飛ばさず聞いて、初回プレイが7時間弱くらいで、2周目以降が4時間〜4時間半くらいでしょうか。
フルコンプまでにかかった時間は、約21時間強くらい。
お値段を思えば、割と遊び甲斐があるんじゃないかと思います。
ちょっと残念なのは、バッドエンドだけじゃなく、グッドエンドにも、エンディングロールがないこと。
いきなり終わります。
制作時間やら何やらの都合でカットされたのでしょうが、グッドエンドにもエンディングロールがないのはめずらしい……っていうか、初めてな気がします。
追加ディスク(ファンディスク)の発売予定があるので、おそらくその時にエンディングロールが追加されるんじゃないかなあとは思いますが、「贄の町」だけプレイした状態ではEDロールないので、
「え、あれ? グッドエンドだと思ったけど、EDロールないから違う?」
と思った方は、心配しないで下さい、EDロールなくてもそれがグッドエンドですよ!


公式サイトのオフィシャル通販先から見るに、おそらく乙女ゲームサイトの「澪」と同じく、Cyc系列のゲームで、システムも一緒です。
紙のマニュアルが同封されておらず、Cyc系列のゲームを初めてプレイされる方はわからないかと思いますが、ショートカットキーでプレイできます。
「ZOMBILiCA」の「nienomachi」フォルダ内にある、Readmeテキストを確認してからプレイしましょう!
特に、
 [S]ゲームデータのセーブ
 [L]ゲームデータのロード
 [ctrl]押している間メッセージスキップ
 [shift]もう一度押すまでメッセージスキップ
この4つは知ってると便利なので!

最初はマップ画面(宿の中のマップ)で攻略キャラを選び、そこからストーリーモードになって本格的に話が進んでいくところも澪の乙女ゲームと同じだったので、もしかしてCyc系列のゲームシステムではよくあるタイプなのかな…?
(Cyc系のゲームは澪とゾンビリカしかやったことないです)
マップ画面では、複数キャラ同時に進めても問題ないので、攻略キャラ2キャラくらい一緒に進めておくと便利です。
ストーリーは、主人公の日天が元の世界に帰るために、この世界にきたきっかけの喪服の青年を宿の住人の攻略キャラと一緒に探しつつ、攻略キャラと少しずつ親しくなって、それぞれの事情を(自分も含めて)知って行く……って感じですかね。
最終的な、主人公サイドの事情(喪服の青年絡み)は共通ですが、そこにいたる攻略キャラとの関わり方や攻略キャラの事情は違うので、どのルートも新鮮に楽しめました。
ただ、ミドルプライスだからか(EDロールも省略されてるしね…)、攻略キャラの結構重要な情報を、サブキャラがかなり懇切丁寧に説明しちゃってる部分があって、そこはちょっともったいなかったです。
攻略キャラの事情が、割とみんな重めなので、さらっと説明される程度なのは、逆によかったのかもしれないとチラっと思ったりもしましたが……。
主人公の日天が、自分のことには無頓着でやや(?)鈍感なのに対し、他の人に対しては、自分が邪険にされても気を掛けてしまわずにはいられないタイプなので、塩対応男子も、チャラい系男子も、博愛主義者も、だんだん日天が好きになっちゃうのは、プレイしていて、「わかる〜」って感じだったのがよかったです。
日天が、無意識でやってるであろうちょっとした言動(相手の手のひらに落ちたケーキを食べちゃったりとか)が可愛く、他意がないのがわかるだけに、思わずくらっと来ちゃうというか……。
日天視点でプレイしているのにも関わらず、攻略キャラ視線で可愛いな〜と思える(見た目はちゃんと青年で、しかも低音ボイスですが)主人公でした。
総受けなのか〜と、プレイ前はちょっと残念にも思ったりしましたが、プレイし終わって見ると、日天は確かに総受け主人公だね!! って納得しました(笑)


エンド数は、各攻略キャラ、グッドエンド2つ(現世に帰還するエンドと、贄の町に滞在するエンド)とバッドエンド3つ、その他のエンド(即死バッドだったり、サブキャラとのエンドだったり)が6つです。
おそらく、ベストエンドは現世に帰還する方だと思います。
現世に帰還する方のエンドは、主人公はそのままの状態で帰れますが、攻略キャラの方は、とある縛りがあって、単純にめでたしめでたし……という感じではありません。
なので、続き…! このあとの続きが読みたい……!!
ってすっごく思ったので、ドラマCDの発売と、追加ディスク(ファンディスク)の発売予定はすごく嬉しいです〜!
私は参加してませんが(本編買うので精一杯です!)、追加ディスク(ファンディスク)制作の資金をクラウドファンディングで募集していて、目標金額をはるかに上回っていて、皆様お金持ち……もとい、やっぱその後はみんな知りたいんだね! って思いました。
追加ディスク(ファンディスク)が無事発売されたら、購入してプレイしたいと思ってます!
その時は、やっぱりないとだいぶ寂しかった、エンディングロールもばっちり実装されているはず……!!


ところで、おそらくルート制限はないものと思われますが(違ったらすみません)、成臣を最後にプレイするのをお薦めします。
日天に関わるとある事情も明らかになるルートなので。
そういう意味で、成臣ルートが一番興味深く、面白くプレイしたのですが、キャラの好みで言えば、チャラい笑男(みお)や、激塩対応のあすくが好きです。
笑男は、ふっと真剣になったり、あすくは激塩が徐々に旨塩くらいの対応になっていく過程というか、いわゆるギャップ萌えな部分が美味しいので!
でも単純に攻略キャラだけのことを考えると、日天はココとくっついて欲しいです。
ココを幸せにしてあげてくれー、日天ー!!
成臣だけ、帰還エンドのラストに成臣視点がちょっとだけあって、「日天、このまま成臣と付き合って、大丈夫……?」感がハンパなかったのですが、その点も含めて、後日談が追加ディスク(ファンディスク)でプレイできるのが楽しみです。
結果的に、どの攻略キャラも、甲乙付けがたく楽しめました。
オカルトチックな雰囲気が好きで、多少の流血スプラッタが大丈夫な方にお薦めしたいBLゲームです。
恋愛部分は割と甘酸っぱいよ!
低音ボイスの日天も可愛いです。というかだんだん可愛く思えるようになっていきます。
攻略キャラだけじゃなく、日天も幸せにしてあげたい……! って気持ちになれるゲームでした!


……ちなみに、一番好きなエンドは、絵馬に書いた願いがどっちも叶ってるミラクルエンド、『終焉陸』だったりします。
あのエンドの後日談見るだけでも追加ディスク(ファンディスク)を買わざるを得まい……!





2018/10/11