修業旅行SS(滝×南部)
君に話を
「聞いてくれよぉ〜、南部ぅ〜!」
今のこの俺の嘆き悲しみを伝えるべく、ちょっこっとだけ、オーバーアクションで近付いた、俺に。
南部は、思いっきり顰めた顔で、こっちを、見た。
「…皆まで言うな。お前の言いたい事は、大体わかった」
「なんだよ、なんで、んな、つれねーこと、言うんだよ〜!聞けよ聞けよ聞けよ〜っ!」
だがそんな冷たいリアクションなど、半ば予想済みで。
だから、俺は、構わず、南部にすりよった。
「しょうがねぇな……」
そんな俺の行動など、わかりきってたから、だろう。
たぶん。
南部は、イヤそうな顔をしつつも、先を、促す。
「おら、聞いてやっから。さっさと話せよ、失恋話」
「失恋話って言うなーっ!」
いちいちウルセぇやつだな、と。
言う顔は、言葉ほど、冷たくは、なくて。
むしろ、楽しそうな、笑顔だった。
親友…とか、そう言う言葉は。
正直、口にするだけで、背中がかゆくなるし。
俺たち、親友だよな、なんて、言おうものなら。
バカなこと、言ってんじゃねーよ、って。
突っ込みがはいる…んだと、思う。
だけど、俺は、おまえの事。
単なる、クラスメートの一人だって。
そんな風に、思ってないのも事実で。
一人で、そっと、部屋をぬけだして。
ホテルの廊下を歩いてく、お前を。
そのまま、見なかったことに、することなんて。
出来ないんだよ、バーカ。
何度、女の子に、振られたって。
その時は、どうしようもなく、悲しくて、凹んでしまうけど。
次こそはガンバロー、とか、思えるのは。
それはきっと、お前が、いるから。
お前が、俺の話、聞いて、くれるから。
イヤそ〜な顔、したって。
俺の話を、いつも聞いてくれる、お前がいるから。
だから。
「一人で、勝手に、悩んでんじゃねぇよ、バカ」
心の中だけで、呟いて。
自販機に、小銭を突っ込む。
今度は、俺の番だろ?
話を、聞かせろよ、南部―――。
Fin.