バッテリーSS(海音寺&瑞垣)

キャプテンとラーメン。

「おばちゃん、ギョーザ追加ね!」
「よく食うな瑞垣…」
「当たり前じゃ。何たって、食べ頃、食べ初め、食べ盛り、なお年じゃから。
海音寺キャプテンの分も追加しましょーか…って、まだ食ってんの?」

 同時に来たラーメンは、瑞垣の分はすでにカラッポだったが、海音寺の前のどんぶりにはまだ半部以上は残っていた。

「ラーメン、嫌いなんか?」
「いや、そうじゃないけど」

 かきこむように威勢良く食べた瑞垣と違って、何故かやけに上品に食べている。

「そんなにの〜んびり食ってると、ラーメンがの、び、る、ぞっ!」

 語尾にスタッカートをきかせながら、瑞垣は海音寺の頭をリズム良くはたいた。

「うわっ、ばか、よせっ!」

 あやうく取り落としそうになった箸を、どんぶりのふちを握って持ちこたえたのはよかったが…。

「あ〜、クソ。せっかく気をつけて食ってたのに」
「あらら。まっしろじゃな」
「ひとの労力をあっさり無にしやがって……」

 真っ白に曇ったレンズの向こうから、海音寺が睨む。
 ギョーザをつつきながら、すまんかったの〜、と全く悪びれた色もない瑞垣に、海音寺はあきらめて、ラーメンを食べようとした。が。

「っつーか、最初っから、とって食えばいいんじゃ」
「おいっ…!」

 さっと、手を伸ばして、眼鏡を奪われた。

「これで視界良好!さ、遠慮せずどんどん食え!おごらんけどな!」
「お前な……」

 クリーンな視界の向こうで、ひとの眼鏡を勝手に頭にかけた横手のクリーンナップ、五番打者は、更にチャーハンを追加していた……。


Fin.