きみはおいしそう。


「ゆーとくんの、ちょうだい!」
「いいよ。でもね、たまご……、」
「わーい、ありがとう!」
「あーっ!! たまごやきは……! さいごにたべようって、おもって……!!」
「ふはああに? ふぁんは、いった? あー、おいしかったー!」
「う、うっ、うわーん!!」
「コラッ! ダメでしょ、みちあき君、おともだちを泣かしたら!!」
「なかしてないよう〜。ゆーとくんが、きゅうに、なきだしちゃったんだよ!」
「えっ、えっ、ぐす……っ」
「なくなよ。あ、ほら、おれのにんじん、あげるから!」
「こーらっ!! それは、みちあき君のキライなおかずでしょ!!」


〜10年後〜

「優斗の、ちょうだい!」
「あっ、おい……っ!?」
「いただきっ!!」
「だからっ! たまごやきはとっちゃダメだって、何度言えばわかるんだお前はっ!」
「だって、優斗の、美味しそうなんだもん」
「お前の弁当にも入ってるだろうが……」
「んー。でも、優斗のがより美味しいっていうか、優斗が美味しいって言うか」
「通陽のとこのだって、同じ砂糖味……って、その前に、『たまごやき』を抜かして言うなっ! 俺がおかずみたいに聞こえるじゃねえか!」
「えー。大して変わんないって」
「いや、全然違うっ! つかそれだと、意味わかんねえ……」
「いっしょだって。ほら、どっちも美味しそうだし」
「俺は食べ物じゃねえ!!」
「なめたら、あまそうだし」
「あまくねえ!!」
「ほんとに……? じゃあ、確認してみようか」
「はっ? ……って、おいこら、顔近付けんなっ!?」
「…………ん。ほら、やっぱり、あまい」
「だーっ! もう、なめるなっ!!」
「もう、そんなに怒ったら、消化に悪いよ? このたまごやき、半分あげるから、機嫌直して」
「それは、元々、俺のたまごやきだ……っ!」
「はい、あーん」
「………聞いてんのか、通陽!?」
「あーん」
「………」
「あーん」
「………、あー……」
「美味しい?」
「美味しい。………美味しいから、いつも最後に食べようって思ってんのに………」
「うん、やっぱり、優斗のはいつも美味しいな!」
「って、聞いてねえし……」


ごちそうさま。

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