Strain


 カーテンのわずかな隙間から街灯の明かりがさしこんで、白い肌がぼんやりと浮かびあがる。
 頼りない細い腕で目元をかくし、もっと頼りない声が薄く開いた唇から漏れた。

「もう、やめよう。こんなこと………」

 俺は手を伸ばして、そっと腕をどける。
 きつく、つぶられた目。

「こんなことって? ねえ、どんなこと? 教えてよ」

 目のふちを指ですうっと撫でると、閉じられた目が開く。
 正面から俺と目があって、慌てたように伏せられる。

「どんなって……」

 電気の消された室内でも、その顔が赤くなっているのがわかる。
 くすっと笑って、華奢な身体に覆いかぶさるように、腕をまわす。
 閉じ込めるみたいに、体重をかけて。
 ベッドがぎしりと、悲鳴を立てた。

「言わないと、わかんないよ? 何を、やめて、ほしいの?」

 わざとゆっくりと、言葉を切るように尋ねると、俺の胸に腕が伸ばされた。
 押しのけようとしたのかもしれない。
 だがその腕は、俺に触れただけで、力なく離れていった。

「それで、終わり? だったら俺、続けちゃうよ」

 このひとは俺を拒まない。
 俺は彼を、脅しているわけでも、弱みを握っているわけでもない。
 それなのに彼は俺を決して、拒まない。
 俺はそれを知っている。

「そんなにおびえないで。あんたはただ、いつもみたいに気持ちよくなってればいいんだから」

 罪悪感を持つ必要なんて、どこにもないだろう?
 好きだから。
 欲しいから、セックスする。
 それの一体何が、いけないっていうんだ?
 
「ひざ、抱えて」

 ベッドに乗り上げて、彼の足の間に立て膝をつく。
 柔らかな太ももを撫でて、うながす。
 おずおずと、でも俺の言うとおりに、彼は膝を抱える。
 捨てきれないためらいを、ふるえる指先にのぞかせながら。
 いい眺めだ。
 ぞくぞくする。
 俺は手早く自分の着ているものを脱ぐと、膝を抱えた彼のパジャマのズボンを下着ごとずらした。
 膝を抱える彼の手に手を重ねて、ぐっと身体の方に押した。
 顔を近づけて、耳の下を舐める。
 くすぐったそうにぴくん、と身体が跳ねた。

「足、もっと広げて………」

 耳に息を吹きかけながら、俺は彼を呼んだ。
 最近はあまり口にしなくなった、幼いころの呼び方で。


「おにいちゃん」 


Fin.


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