今後の予定〜記録機械・その後〜


「いたいた! 探したよ! もう帰っちゃったのかと思ったよ、鈴木」
「い、五十嵐君……!?」
「あ、また見てる。って、別にそんなソッコーで隠さなくても」
「う、うるさいな! これは僕の密かな楽しみなんだよ! 邪魔するなよ……!」
「なんで本人と付き合ってんのに、手帳のI君情報を優先させるかな、鈴木は」
「え……。付き合ってたのか、僕たち!?」
「何その反応!? 鈴木が俺のこと好きって言って、俺もって言ったんだから、そりゃ付き合ってるだろ!?」
「……そうなの?」
「そうなの! ったく、鈴木ってヘンなとこ、鈍いのな。まあそういうとこもカワイイけど」
「かわ……いくはないと思うけど。って、いやだって、付き合うとかそういうこと、考えたこともなかったから、実感わかなくて……」
「えー。俺のこと好きなのに、そういうの全然考えなかったの? 俺は考えてたよ!」
「え……そうなんだ」
「そうなの。ってか何その薄い反応」
「あ、あまりにも、こう、想定外過ぎて……」
「俺の言動を逐一メモってた割には、鈴木から行動を起こそうとかは微塵も考えてなかったと。そういうこと?」
「う、うん……」
「じゃあ、これから俺とどーこーしようとか、そういうことも、まったく?」
「う、うん……」
「出して」
「え?」
「鈴木のI君手帳」
「な、なんで……?」
「いいから! ほら、早く」
「わ、わかったから! 近い! 顔、近いってば! ……はい」
「ん……来週の日曜でいいかな………よし、書けた。はい、返す」
「一体、何書いて……って、なにこれ!?」
「だから、次のI君情報を更新しておいた」
「○月×日(日)にI君とはじめてのデート、って何だよこれは!?」
「何もも何も、そのままんまだよ。何? 来週の日曜、予定でもあった?」
「……ないけど」
「ならいいじゃん! なあ、どこ行く? 映画見る? それとも遊園地とか」
「映画……」
「わかった! じゃあ、何見るか明日までに考えて来いよ」
「あ、あのさあ、五十嵐君。困るんだけど、こう言うことされるのっ!」
「なんで?」
「なんでって……。これは、その、そういう使い方する手帳じゃなくて……」
「でも、手帳って、今後の予定を書き込むものだろ?」
「そうだけど……。いやだから、これはそういうんじゃなくて!」
「結果的には同じことだろ? 書き込まれたことが、I君の取る行動になるんだから」
「そ、それは……」
「なんなら、俺が先の予定まで書き込んどこうか? そしたら、鈴木の手間も減るだろ。そうだなあ……。夏休みの最初の週くらいに、I君とはじめてのエッ」
「いらないから! それ、すっごい余計なお世話だからーーーっ!!」
「ふごっ……。ちょ、いきなり口ふさぐなよ。びっくりするじゃん。どうせふさぐなら、手じゃなくて、口……ふががっ!」
「い、五十嵐君、調子乗り過ぎっ!!」


おわり。


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