「彼女出来たんだ」
嬉しそうに、屈託なく笑う親友に、俺は何でもない顔で笑い返す。
「へぇ、よかったな。…ま、今度はいつまでもつか、知らないけど?」
「何だよ、それ。ヒデーな。…確かに、その通りだけどさあ」
でも、付き合ってみなくちゃわからないだろーと、親友は、唇を尖らせて言う。
そこそこに顔が良くて、結構気が利いて、明るい彼は、彼女が絶えたためしがない。
だが、生来の飽きっぽい性格と、フレンドリー『過ぎる』性格のため、長続きしたためしがない。
―――彼氏って感じじゃないのよね。
そういう、言葉で、あっさり付き合い始めた彼女たちは、あっさりと別れを切り出してしまう。
で、またそれを引き止めるまでもなく、あっさりと受け止める。
……なんだよ、それ。ふざけんな。
って。
いつも、思う。
そんなんで付き合うヤツも、そんなんで別れる女も。
どっちもズルイよなって思う。
そんなんでいいんだったら、そんなんでいいんだったら、俺は…。
「そーゆーお前は?どうなんだよ、彼女」
「俺?いねーよ、んなの」
「ふーん、へんなのー」
「何が変なんだよ」
「だってお前、モテなくもないじゃん?こないだも後輩に告られたんだろ?」
「…何で知ってんだ?」
「あー、誰だっけ。クラスの誰かから聞いた。見たんだってよ、現場」
「げー。見るなよ…」
「なあ、なんで?何で付き合わねーの?」
「ああ?ウルセーな…」
なあなあ、と言ってくるヤツを、俺は邪険に交わす。
何故、なんて。
お前が、それを俺に聞くのか?
「俺は、お前と違って、誰とでもホイホイ付き合って、ホイホイ別れたり、しねーの」
「んだよー。それじゃ、俺がちょー軽いみたいじゃん」
「その通りだろ」
「ちぇー」
子供っぽく顔をしかめるヤツを、くすりと笑う。
そういうのが、不思議とこいつは、憎めない。
ああしょうがないなあ、って思う。
「大体、いいのか?俺に彼女出来て。彼女出来たら、お前の相手してる暇なんて、ないんだからな」
「えー!そんな寂しいこと言うなよ…悲しいじゃん」
しゅん、と落ち込んだ顔を、見せられたら。
もう、それだけで、いいか、という気になる。
「お前の彼女になるコは、幸せだろうな」
「…そうか?」
「うん、だって、すごく大事にされるだろうから」
そう言って、どこまでも無邪気に笑って、言われたら。
「でも、彼女出来ても、俺の相手もしてくれよー」
「さあ…どうしようかな?」
「えええ〜っ!?」
このままずっと、言えなくても。
言えない、ままでも――――。
Fin.
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