簡単に始められて、簡単に終われると、思ってた。
スタートして、飽きたらセーブして、また始めたくなったらロードする。
で、すっかり止めたくなったら、データを完璧初期化すればいい。
そんな風に、思ってた。
それ、なのに……。
「失敗、した……」
どこから間違えたんだろう。
ソファに寝転がって、コントローラー片手に、ポテトチップつまみながら、だらだら進めてく。
ただの暇つぶし。
それ以上でも、以下でもなくて。
「人生が、そんな、ゲームみたいに行くかっつの」
にやり、と人を食ったような顔で笑う、目の前の男が、したり顔で言うのに、反論したいのに、出来ない。
突き放したいのに、抱きしめてくる腕を、反対にぎゅっとしがみついている。
気がそがれたら、いつでも手放せるって、思ってたのに。
どうしてだろう、いつまでたっても、手放せずにいる。
「簡単に、リセットされて、たまるか」
こんなんじゃ、つけあがらせてしまう。
耳元で囁かれた声に、僕は焦った。
だって、これじゃまるで、僕がこいつ無しではいられないみたいじゃないか。
そんなはず、ないのに。
だって、これはゲームだったんだ。
退屈な日常を紛らわすための。
気に入ったオモチャで、ひと時を楽しく過ごして、飽きたら見向きもしない、そんなコドモのゲーム。
ルールを決めるのも、ルールを変えるのも、僕。
単純で、簡単な、ただのゲーム。
「いい加減、認めたら?」
くすくす笑う、息が耳にかかって、くすぐったい。
思わず、首をすくめながら、囚われた腕の中から顔を上げて、何を、と尋ねた。
僕よりもずいぶんと背の高い男は、僕を見下ろして答えた。
その目は、びっくりするくらい、真摯で。
「決まってるだろ……。本気だって、ことをさ」
悔しいけど、どうやら認めないわけには、いかないらしい。
もうとっくに、この関係が、ゲームじゃなくなっている、ってことに。
Fin.
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