005: 一輪の花



ひろい ひろい のはらの かたすみ に。
ちいさな はなが さいていました。
さくらんぼ みたいに あかい かわいい はなです。


かぜが たねを はこんで きたの でしょうか。
みどりの くさの うなばらに たった いちりん だけ。


だけど さみしくは ありませんでした。
その はなには おともだちが いましたから。


それは きいろいい はねの ことりでした。
のはらの むこうの もりに すむ ことりです。
きいろの はねが おひさま みたいに きらきら かがやく ことりでした。


あかい はなに きいろい ことり。


なにか おしゃべりを する わけでは ありませんでした。
ただ きいろい ことりが ちいさく さえずると
あかい はなも ちいさく ゆれました。
そよぐ かぜに まう ことりの うたが
かすかに あまい はなの かおりに のって
それは とおくまで とんで ゆきました。


しばらくすると ことりは はなの もとに こなくなりました。
りゆうは わかりません。
はなは のはらから うごけないの ですから。


だけど はなは さびしくは ありませんでした。
かぜに ちいさく ゆれたら ことりの うたが きこえて くるから。


きいろい ことりの かわいい うたと
あかい はなの あまい かおりは
のはらを わたる やさしい かぜが
どこまでも どこまでも はこんで いくのでした。



Fin. 


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