Close encounter―real blade―


chapter2-5a.Rooftop


 言われるままに、大人しく後ろに下がった。
 マコトは、僕をかばうような位置に立ちはだかって、鋭い爪を向けてくるドラゴンに剣を振りかざした。
 ドラゴンは素早く避けたため、さほどダメージは与えられなかった。
 だが、ひるむように、やや後ろに下がって羽ばたいている。
 マコトを、警戒しているようだ。
 そんな戦いの様子を、僕は離れた、安全な場所から、ただ見ていた。

(まただ。また、同じ……)

 虚しさが、胸をかすめた。
 みそっかすの、役立たず。
 ただ、守られているだけの………。
 それが、マコトのパーティーでの、僕のポジションだった。
 それは彼とパーティーを解散して、またこうやって組むことがあっても変わらない。
 繰り返しだ。

(いても、いなくても……変わらないじゃないか)

 だったらやっぱり、僕はマコトのパーティーから抜けてよかったんだ。
 ドラゴンと互角の戦いを繰り広げるマコトを見ながら、僕は改めてそう感じていた。
 こんなに簡単な事がどうしてマコトにはわからないのだろうと、僕は不思議にさえ思った。
 そうして戦闘は、『マコト』の勝利で終わった。
 
「おめでとう、マコト」

 ドラゴンを倒したマコトに近づいて、声をかけた。
 剣を鞘におさめたマコトが、振り向く。

「ありがとう。フユは、大丈夫だった?」
「うん」

(大丈夫も何も……。危険になりようがないじゃないか)

 そう、メッセージウィンドウに打ちこもうとして、止めた。
 マコトは、何も僕に嫌みを言っているんじゃないんだ……いっそ、嫌味だったらよかったのにと、思うけど。

『GAME CLEAR』 

 モニターに、効果音と共に文字が表示された。
 今回の特殊イベントは、これで終了らしい。
 僕は、ホッとしていた。

「今日は、ありがとう。それじゃ……」
「フユ、待って、」


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