| 魅力ある地域づくり No.98 むらづくりはひとづくり 福栄村 特産品開発グループ グループ員 【福栄村を訪れてみると】 福栄村は、山口県の西北部、阿武郡のほぼ中央部に位置し、萩市が西側に隣接します。「有名な萩市の隣が福栄村です」という表現が分かりやすいかもしれませんが、あえて「福栄村の隣に萩市があります」と説明しています。 村の総面積は98.3平方キロ、人口2,600人ほどで、村民お互いみんな顔見知りのふれあい豊かな農林村です。 主な産業は稲作中心の農業で、林業も盛んです。基盤整備もすすみ、畜産や施設園芸も行われています。地勢条件がよく、甘くておいしい果実や低農薬の米や白菜、ナス等の野菜、メロン、ぶどう、柿など多種類の産品が収穫でき、典型的な過疎地で「何もない村」と思われがちですが、価値観を変えればこれほど恵まれていることはないと思います。
【人にとっておきの村】 村のキャッチコピーは「人にとっておきの村」です。どんな人にももてなしの気持ちを忘れない人情を持ってます。村の人達の「おせっかい」(本当は親切)が多く、都会人には嫌だと思いますが、これは「人を気遣う最高のコミュニケーション」です。このコミュニケーションが情報不足をカバーしていき、また治安のよさにつながっていってます。 そういった地域での商工会活動は「ふれあい」が大前提です。商業者だけでなく村内のあらゆる人たちに気軽に相談にもきてもらい、普段の生活でもお世話になってます。休みでも電話がかかってきて、相談やお手伝いに応じることも少なくありません。都会では割り切ることでしょうが、この村では割り切れません。商工会活動を行う上で、この田舎独特の「おつきあい」はとても大切であると思います。相手の信用を得て、できることをしてあげれば、何倍にもなってその人から必ず跳ね返ってきます。もちつもたれつのこの社会。今まで都会の競争生活や情報化社会にまどわされ本質を忘れていたかもしれません。 【商工会の役割】 とかく地域振興事業には、よそに知ってもらうことやよそから人をよぶことを強調し、ふと気がつくと足下がみえてないことがあります。よく「若者が動かないと地域振興できない」と言われますが、それは他力本願の言葉に聞こえます。我が村では老人パワーはすごいものがあります。老若男女問わず、地域でのひとづくりができ、その地域の住民が住みよいむらづくりをしていければと商工会でむらおこし事業に取り組みました ですので、この地域での商工会の活動は都市部におけるものをそのままもってくるのは不可能だと思います。それは「儲け」よりもふれあいとおつきあいが中心だからです。ですので、実情がこれほど違う地域が点在しているところに商工会のマニュアルや評価基準をつくるのは難しいのではないでしょうか。 この地での商工会としての活動は、「指導」ではなくて「お手伝い」だと思います。黒子役に徹することで、「ひとづくり」につながり、地域振興に寄与していけるものです。 【むらおこし事業の実施】 当村の実情にあった「お金を落としてくれるしくみ」を村の皆さんで検討していきました。 都市部では、「スタンプ会」の結成や「商品券」の発行、「経営講習会」の開催など多種多様に事業が実施されるでしょうが、当村の実情から経費をかける割りにはあまり効果が期待できないものでした。そこで「福栄」という縁起のよい地名を生かした地域振興策が検討されました。 福栄村の人たちみんなで「福栄村らしいお土産品がほしいね」とずっと思っていました。そんなときに平成9年度より商工会のむらおこし事業の話が浮上し、老若男女問わず村内のやる気のある方を集めて皆さんで委員会を編成いたしました。 平成10年度には「地域振興対策事業」で村の人達で会議等を何十回も重ねていき、特産品を9品目開発しました。その過程で、委員から「村内には豚は飼育されていない。鶏ならいるので、鶏肉を使っためずらしいハーブソーセージを作ってみましょう。」ということで、何回も試作品を作ってみました。 こうしてこの鶏ハーブソーセージ「香福鶏」(こうふくどり)は、「しあわせの香り」ただよう福栄村の特産品としてみなさんの手で完成致しました。 ここでの商工会の一番の役割は、とにかく知識や技術があり、何よりやる気のある方の出番を作ることです。そして、開発にかかるあらゆる情報を提供していくことでした。また、皆さんの意見をできる限り聞いてあげることも大事です。「できません」「それは違います」「こうした方がいいですよ」は厳禁でした。 【福栄村特産品開発グループの設立】 このようにいくつかの特産品を村の人達の手で開発致しましたが、それを加工、販売する主体者がいないのが課題でした。それなら、「自分たちの手で」と、村の人たちみんなでつくるむらおこし会社「福栄村特産品開発グループ」が平成11年6月に設立されました。任意団体ではありますが、村内全体で地域振興を考える団体として、広く村民から出資を募り、老若男女問わず60名以上の出資者を集めることができました。 グループの活動拠点を商工会の一室で行いました。当然商工会職員も特産品注文等の問い合わせの対応もしなくてはなりませんし、販促活動もしなくてはなりません。ですが、商工会の得意とする、情報の提供やPR販促の手法、経理や経営分析を存分に発揮したおかげで、12年度、13年度とともに前年の倍の売上の勢いです。 この数字は「ひと」がいないとでてきません。グループによる年間十数回にわたるイベントや物産展の参加、年間20回以上の産品開発・販促会議等はすべて人達が実施したことです。今では商工会の会議室までもが特産品の作業場になったり展示室になってしまってます。また、「自分たちの手でつくりたい」という強い理念で、お金を出し合って商工会に隣接して保健所の許可を得た「特産品製造加工場」も設置しました。そして、産品の材料の提供や、加工場の工事関係なども村内の会員を中心とした「知恵」と「技術」を結集しております。皆さんのおかげで現在では産品が16品目にふくれあがっております。 これらの活動結果、平成12年度の「ニッポン全国むらおこし物産展」でグループが開発した「香福鶏」がみごと中小企業庁長官賞を受賞し、東京で表彰を受けました。そして「福栄村」の名が全国に特産品を通じて知ってもらったことは、村全体の喜びでもあり、村行政からも高く評価してもらいました。 商工会が、地域に点在している資源や知恵、技術をとりまとめることができました。小さい村の「小回り」がきく団体として、行政等村内の団体を始め連携を強化させることに貢献した事例です。
【商工会は縁の下の力持ち】 これら地域振興を中心とした活動は、すべては村の「ひと」たちのおかげです。商工会はあくまでも「きっかけ」を提供したにすぎないのです。そして商工会が笛を吹いたからひとたちが踊ってくれたわけでもありません。笛吹役のリーダーはあくまで村のひとたちです。商工会は「参謀役」としてそっと手を添えるだけでいいと思います。ひとはその「出番」を結構待っているものです。 【悲願の商工会館建設へ】 現在の商工会館は、簡易の仮設施設であるため老朽化がひどく、所在地等もわかりにくいところに立地しているなど、不便な状況です。しかしこの現状でも、「ひと」たちは地域振興のために「ソフト」の部分を完成させてきました。 実績も何もない状態で「会館建設の要望」をしても説得力がありませんし、とかく箱物にたよる地域振興は私たちには合いませんでした。そこで、前述のソフトの部分を確立し、そのあとに会館建設の要望を村行政等に行ったのですが、非常に高い理解を示して頂きました。ここ数年の商工会の活動実績が認められてきたことは私たちにとってはうれしいことであり、協力いただいた会員を始め村民の方々にもお礼ができた次第です。 会館は必要最小限で充分なのです。ソフトである「ひと」がその箱の機能を何倍にもしてくれます。どんな状況であれ、「むらづくりはひとづくり」からの理念で「小さいながらも楽しい商工会」活動を展開していきたいと思っております。
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経済産業省 中国経済産業局「METI CHUGOKU 2002年2月号より