*酒は飲んでも喰われるな*



(ん、あれは?)
一度見たら忘れられない容貌というのはあるものだ。光を纏う白金の髪に神秘的な緋色の瞳。女と見まごう線の細い美貌。もっともアックスにとって、彼が忘れられない理由はそれだけではない。薬で自由を奪われ、無理やり陵辱された。一度ならず二度までも。先日もせっかく手に入れたお宝を奪おうと、えげつない手を仕掛けてきた。そんなこんなで、その男〜白鳳は現在ボコボコにしたい相手ナンバーワンだった。
(間違いねえ)
その憎っくき相手を偶然、夜の繁華街で見つけてしまった。ここで会ったが100年目。今すぐぶちのめしたいところだが、どうやら連れが居るようだ。目を凝らして二人の様子を観察すると、相手は意識を失って、白鳳にもたれかかっているではないか。
(まさか、介抱しているのか?)
一瞬、そんな考えが浮かんだアックスだったが、即座に否定した。そんな人並みの優しさを持ち合わせたタマではない。それは白鳳の美しい外見とは裏腹なあくどさ、狡猾さを身を以て体験した自分が一番良く知っている。
(さて、どうするか)
ヤツのことはぶちのめしたいが、他人を巻き添えにするのは避けたい。やはりひとりになるのを待つしかないのか。しかし、物事にはタイミングというものがある。ぼやぼやしてると闇に紛れて見失ってしまうかもしれない。最善の方法を求め、アックスはあれこれ思いを巡らした。と、その時だ。
「あ、親分さんじゃないですか」
方針を定めるまでもなく、いきなり本人に声をかけられてしまった。白鳳ほどではないものの、アックスも結構目立つ容姿の持ち主だ。周囲の人間より頭ひとつ抜き出ているし、特徴あるドレッドヘアは遠目からでもすぐ見分けが付く。
「・・・・・・・・・・・・」
自分にあれだけのことをしておいて、全く悪びれずに声をかけられるこいつの神経を疑う。いや、その位の心臓だからこそ、他人の心身を踏みにじるような仕業をむしろ楽しげにしてのけるのだ。
「お一人だなんて珍しいですね」
「俺だっていつも子分どもを引き連れてるわけじゃねえ」
今夜みたいにオトナ向けの場所へ行くときには当然、単独行動だ。
「ふぅん。てっきりボクちゃんたちに愛想をつかされたとばかり思ってたけど、見込み違いだったか、残念」
「何だとぉ」
「親分とか威張っててもお婿に行けないカラダじゃねえ、やれやれ」
「てっ、てめぇ、何言いやがるっ!!」
禁句とも言える指摘を当の加害者からされ、頭から湯気が出そうな勢いでいきりたつアックス。だが、白鳳は眉一つ動かさず、彼を一瞥すると、唐突にこう切り出した。
「ねえ、せっかくこうして会ったんですから、ちょっと手伝ってくれませんか」
「ふざけんな。なぜ、俺がおめぇの手伝いをしなきゃなんねぇんだ」
「お嫌ですか」
「あたりめえだっ!!俺はもう行くぜ」
これまでの恨みを込めて、一発でもぶん殴りたいのは山々だが、下手に関わり合う方が危険な気がしてならない。アックスは泣く泣くこの場での復讐を断念しかけた。が。
「行くのなら、手伝ってからにして下さい」
なおも食い下がる白鳳。
「だから、手助けなんかしねえって言ってんだろがっ!!」
「どうしても?」
「ああ、どうしてもだ」
アックスが言い切った途端、眼前の紅の双眸が鈍く光を放った。
「・・・・・なら、仕方ありませんね。これから親分さんに付いて行って、ボクちゃんたちに我々の関係を洗いざらい話しますよ。もちろん実演付きでね、ふふ。」
「な、な、何ぃ〜〜〜〜〜!?」
アックスの首根っこを押さえつける非情な脅し。無論、これに逆らう術は何一つない。彼は泣く泣く白鳳の頼みを聞かざるを得なかった。



「いったい俺に何をさせようってんだ」
不満たらたらの視線で白鳳を見つめたものの、相手がこれっぽちも動じていないのがまた腹立たしい。
「ふふ、そんなに構えないで。ちょっとこのオトコを路地裏まで運んでくれればいいんです」
見れば、小金持ち風の決して品の悪くない中年男性。あたりには酒の臭いがぷんぷん漂っている。恐らく泥酔して意識を失っているに違いない。ここで事情を尋ねるわけにもいかず、やむなく白鳳の言うとおりにしたアックスだったが、薄暗い裏道で白鳳が躊躇いなく彼の懐をまさぐり始めたので驚いた。
「ふーん、結構お金持ってるね。あ、この懐中時計も高く売れそう♪」
「おい、何やってやがる」
「見て分かりませんか。金目のものを回収して居るんです」
「いったいこの野郎は何者なんだ?」
「ホテルの地下にあるバーで知り合った行きずりの男ですよ。幸い正体を無くして酔っぱらってくれたんでちょいちょいと、ねv」
こんな内容を優雅な笑みすら浮かべて答える白鳳に、アックスはすっかり呆れかえった。
「な、なんだそりゃ!?ぼったくりバーか!?」
「いやだな、人聞きの悪い」
あっけらかんとこんな風に返してくる。本当にこの男の思考回路は理解不能だ。
「相手酔い潰して金品巻き上げる行為のどこがぼったくりじゃねえっていうんだ、ええっ!?」
「そもそも、私のことを口説こうとして声をかけてきたのは向こうの方ですよ」
「はあ?」
ということは、こいつも××野郎なのか。アックスの犠牲者に対する同情は一瞬のうちに消し飛んだ。
「だけど、自分から尻尾振ってくるような軟弱な男なんて興味ありませんから」
言い終わらないうちに色っぽい視線が流されてぞっとした。こういう輩は同類だけで仲良くしていて欲しい。
「き、きっかけはどうあれ、てめぇ、こんな卑劣な真似をして恥ずかしくねえのか!?」
「盗賊のくせに人にお説教ですか」
端麗な顔が一気に険しくなった。口調もこれまでとは打って変わって、露骨に刺々しいものになっている。アックスも一歩も退かずに白鳳を睨み付けると先を続けた。
「綺麗事を言うつもりはねえが、それでもてめえのやり方は目に余る」
「そんな甘いことを言っているから、半端な悪事しか出来ないんですよ」
「怪しい薬や汚ねえ策略を使わねえと、何も出来ねえ野郎に言われたかねえぜっ!!」
「自分だって金魚のフンみたいにボクちゃんたちを引き連れてなきゃ何も出来ないくせに」
軽蔑の視線と共に鼻で笑われて、アックスは完全にキレた。
「て、てめえ、よくもっ!ぶっ殺してやるっ!!」
白鳳に詰め寄って右手を振り上げる。だが、相手は身動ぎもせず、表情も変えず、アックスを凝視したまま、淡々と言葉を紡いだ。
「そのセリフも聞き飽きました。出来もしないことを口にするのはみっともないですよ」
「るせ〜っ!!まともに勝負すれば、てめえなんかに負けやしねえんだ!!」
相手の冷静な態度にますますムキになって、大声で怒鳴り散らすアックス。傍から見ていても、白鳳の方が一枚も二枚も上手だった。
「・・・・・そこまで言うのでしたら、私と飲み比べをしてみませんか」
「何だと」
「これなら小細工なしだからいいでしょう。負けた方が勘定を全額持つと言うことでいかがです?」
白鳳の提案にアックスは思わずほくそ笑んだ。自他共に認めるうわばみで通っているのだ。体格から考えても、こんな華奢な身体をした相手に負ける道理はない。
「よし、その話乗った!!今夜こそこれまでの借りを返させてもらうぜ」
「ふふ、せいぜい返り討ちに合わないように」




白鳳はアックスを引き連れて、先程までいたバーに戻ると、カウンターに並んで腰掛けた。程良く賑わった店内に流れるスタンダードなジャズナンバー。ゆっくり語り合うのに相応しい落ち着いた雰囲気だ。もっとも、彼らが交し合う言葉と言えば、罵声と憎まれ口くらいだが。
「いつも肩に乗せてるちびっこいのはどうしたんだ?」
その若草色の生き物にだけ向けられる柔和な笑みに魅せられた自分を思いだし、アックスはきつく唇を噛みしめた。
「スイは2階の部屋で休んでいます」
この言葉から察するに、白鳳の今宵の宿はここなのだろう。他国からの観光客も多い、国一番の高級ホテル。この前は自分たちの獲物を狙うくらい路銀に困っていたのに。
「ああ、来ましたね」
ふたりの前にセピア色の液体で充ちたグラスが置かれた。
「考えたら、おめえはすでに飲んでいるんだよな」
大の男をあそこまで酔わせるには、適当に一杯や二杯は付き合っているはずだ。
「そのくらいのハンデはあげますよ」
尖った顎をくいっと上げ、早くも勝ち誇った表情を隠さない白鳳。むろん、それに甘んじるアックスではない。
「冗談じゃねえ、てめえに情けをかけてもらうなんぞ真っ平ゴメンだ」
言うやいなや、アックスは追加でウオッカを注文して、それを一気に飲み干した。太やかな首の中心で上下する喉仏を眺めながら、白鳳は口元を軽く綻ばせた。彩度の低い照明で、整った顔の陰影がくっきり浮き出ている。
(バカだな。どうせ負けるのに)
この終わりの見えない旅が長引くに連れ、すっかり酔えない体質になってしまった。たまには打ち解けた誰かの傍らで心置きなく酔ってみたいと思うが、他人に気を許したりしないので、結局は無い物ねだりということだ。しばらく長い指でグラスを弄んでいたが、気怠げな仕草で手に取って、中の液体を流し込んだ。とん、とグラスを置いたのと同時に、正面のバーテンに声をかける。
「もう一杯同じのをいただけますか」
それもあっという間に空にすると、アックスの方に向き直り、挑発するようにくすりと笑った。
「お、俺にも同じのをくれっ」
「まだこちらのも飲みおわってないじゃないですか」
「うっせーっ、先に注文しといてまとめて飲むんだ」
「その強がりがいつまで続くことやら」
「て、てめえこそいきなりぶっ倒れても介抱なんぞしてやらねえからなっ!!」
「ふふふふ」
アックスは対抗意識剥き出しで、白鳳のペースに合わせて、次々と杯を重ねた。しかし、最初は豪快だった飲みっぷりが徐々に鈍って来ているのは明らかだ。赤みが差した顔に加え、動作もどことなく緩慢になっている。
「もう止めた方がいいんじゃありませんか」
「黙りやがれっ、てめぇにそんなこと言われる筋合いはねえ!!」
強気に返しながらも、さすがに己の不利を自覚せざるを得なかった。なにしろ相手は顔色一つ変えていないのだ。血管すら透けて見える雪色の肌からして、多少でも酔えば、すぐに兆しが表れそうなものなのに。
(クソッ、折れそうな身体してるくせに、なんて野郎だ)
このままではまたもや白鳳にしてやられかねない。拳を握り締めて気合いを入れるアックスだったが、気持ちとは裏腹に五感が加速度的に鈍って行く。時間と空間の観念が朧気になり、周囲の景色も色褪せてぼやけてきた。
「そろそろ限界のようですね、ふふ」
白鳳の憎たらしいせせら笑いが耳の奥へ遠ざかって行く。悔しさに歯噛みする気持ちも虚しく、アックスの意識はそこでばったり途絶えてしまった。



「ふん、やっぱ口ほどにもないね」
大いびきをかいて、正体なく眠りこけたアックスの姿を横目で見ながら、白鳳は席を立とうとした。が、ふと思い直し、再び黒いスツールに腰を下ろした。
「もう何杯か飲んでからにしようかな」
どうせここの勘定は全額アックス持ちなのだ。ならば、心行くまで味わい尽くしてから店を出た方が得というものだ。
(それにしても、どこまでバカな男なんだろう)
白鳳からすれば、アックスは旅の慰みにたまたまちょっかいを出した相手のひとりに過ぎない。粗野で無知で逞しい肉体だけが取り柄のような男。その程度の相手とわざわざ遊んでやって、悦い思いまでさせてやったのに、ぶっ殺してやるのなんのと逆恨みされ、付きまとわれてはたまらない。確かにある意味、これまでの行きずりの相手とは違うかもしれない。普通なら二度も調教してやれば、骨抜きにされ隷属するか、怯えて逃げまどうかだ。だが、傍らの男は敵わないまでも、なおも自分に抗い、牙を剥こうとしてくる。身体は間違いなく慣らされているはずなのに、心では決して屈服しないその強靱な意思の力。予定調和の範囲に収まらないアックスの言動が妙に白鳳を苛立たせた。
「・・・・・スイも心配だし、そろそろ部屋へ戻ろう」
グラスを片手にひとしきり思いを巡らせると、白鳳はアックスを置き去りにしたまま、出口に向かった。レジで待つ体格の良い若者に声をかける。
「私の分はカウンターで寝ているドレッドの大男が払うから」
そっけなく言い残して店を出ようとした白鳳だったが、相手の反応は予想だにしないものだった。
「お連れ様を連れて帰っていただかないと」
「あのオトコは連れでも何でもありません」
「結構、親しげに話していらしたではないですか」
「それは目の錯覚、気のせいですよ。では失礼」
「ちょっと待って下さい」
穏和そうなレジ係が一転して険しい顔付きで肩先を掴んで来たので、白鳳も負けじと眉をつり上げた。
「いったい何の真似ですか」
「それはこちらのセリフですよ。もう看板なんですから、泥酔した人間を置いて行かれては困ります」
あれこれ押し問答をしたけれども、結局、店の人間に押し切られてしまった。さすがに一般の店で騒ぎを起こすのは避けたい。通りすがりの街とはいえ、悪目立ちはしたくなかった。で、その結果、アックスを2階の客室まで運び込まれる羽目に陥ったのである。むろん、勘定は全額払わされた上で、だ。
「はああ・・・・・スイを放っておいたから、罰が当たったのかなあ」
ベッドに大の字に身を投げ出し、口を半開きにして、だらしなく眠るアックスの姿が目に入ると、白鳳は腹立ちを通り越した脱力感で大きくため息をついた。負かしたはずの相手の勘定まで持たされ、ベッドまで占領されたあげくにこの大いびき。
(む、ムカつく〜〜〜〜〜!!)
とはいうものの、この勝負を仕掛けたのは自分なのだから、誰を恨むわけにもいかない。しかも、泥酔しているから、股間のモノは役立たず。襲って鬱憤晴らしをすることさえ出来ない。
(あ〜あ、最悪)
兄を待ちくたびれて眠りに落ちたスイを、バスケットの中にこしらえた簡易ベッドに移してやった。ウンザリした表情で、備え付けの木の椅子にもたれかかる。が、ふとささやかな復讐を思い付いた。せめてこれくらいのことはさせてもらいたい。形の良い唇の端をくいっと上げて、悪戯っぽい笑みを浮かべると、白鳳は手早くアックスの服を脱がし始めた。


ベージュのカーテンの隙間から眩しい朝の光がまともに射し込んでくる。
「む・・・・う・・・・・・」
目を覚ました途端、小型のシャンデリア風の照明が目に入り、アックスは訝しげにあたりを見渡した。どうやらホテルの一室のようだ。
「そうだ、俺はあの野郎と・・・・・」
バーでグラスを傾けていたはずだ。その証拠に後頭部を鈍い痛みが苛む。しかし、今どうしてこんなところにいるのか。状況整理をすべく、視線を落としたアックスの眼に見覚えのある銀髪が飛び込んで来た。
(う?)
そういえば、先程から胸元に感じる仄かな感触。これはどう考えても人肌の温もりだ。徐々に意識がはっきりしてきたアックスは自分が何ひとつ身に纏っていないことに気が付いた。
(な、な、何だ!?昨夜、いったい何があったんだ!?)
不吉な予感に圧迫されつつ、寄り添っている人物を改めて確認した。白磁の肌、滑らかな白金の髪、少し冷たい指先。忘れようとしても忘れられないこの男は・・・・・。
(〜〜〜〜〜ッ!!・・・・・ま、まさか・・・・・。。)
相手もまた生まれたままの姿。一気に最悪の想像をしてしまい、パニック寸前のアックスだったが、そのとき腕の中の紅い瞳がぱっちり開いた。なんだかいつもと様子が違う。日頃の高飛車な雰囲気は欠片もなく、こちらをうっとりと見つめているではないか。アックスは背筋に冷たいものが立ち上る気配を覚えた。
「おや、お目覚めですか」
「て、てめぇ、どうしてこんなところに」
「ふふ、ここは私の部屋ですよ。覚えてないんですか、昨夜のこと」
「ゆ、昨夜の事だとぉ?」
世の中には知らない方がいいこともある、と悟りながらも、真実の追究を止めることは出来ない。相手から問いかけが出て、待ってましたとばかり、白鳳は妖しい視線を絡めて囁きかけてきた。
「あんなに激しく私のことを求めてきたのに・・・・・・」
「なっ」
アックスの中で恐怖と悪寒が風船のように膨らみ続けている。彼の心中の葛藤を見透かすように、白鳳はその背にしなやかな腕を回すとなおも先を続けた。
「親分さんがあんな強引な行動に出るなんてねえ。でも、私も貴方のことを押し倒したし、お互いさまと言うことで仕方ないかな。」
「ま、ま、待てっ!!っていうことは、な、何だ・・・お、俺がおめえのことを・・・・」
「ええ。この部屋に入った途端、いきなり組み敷かれたときは驚きました」
「ば、バカな!俺が野郎に手を出すなんてっ!!」
よっぽどショックだったのか、完全に声が裏返っている。
「ふふ、お酒の勢いって怖いですよね。でも・・・・・すごく悦かったですよv」
がが〜〜〜〜ん!!脳天から1メガトンのハンマーが落ちて来て、己のアイデンティティが粉々にされた気分だった。唇がワナワナと震えているのが分かる。
「ま、まさか・・・・・こ、この俺が真性××になっちまうなんて・・・・・あ、あ、悪夢だ・・・・・」
「親分さん、起きてしまったことをくよくよしたって仕方ありませんよ。もう諦めて、これからも私と一緒に楽しみましょうv」
「・・・・い、いや、そんなわけがねえ!!お、俺が野郎を押し倒すはずが・・・・」
「往生際が悪いなあ」
オロオロと青くなったり赤くなったりするアックスの情けない様子を至近距離で眺めながら、白鳳は笑いを噛み殺していた。
(ふふふ・・・・・全く見てて飽きないね、この男)
こちらの意のままにならないのは気にくわないが、仕掛けた策略には気持ちいいほどストレートに引っ掛かって、踊ってくれる。ようやく少しは溜飲が下がりそうだ。



「ど、どうしても納得いかねえ!!」
白鳳がいろいろ説明したにもかかわらず、アックスはまだ抵抗を続けていた。
「本当に覚えてないんですか」
「おう。何一つ記憶がねえ」
「仕方有りませんね。それでは貴方が私にしたことを、ひとつひとつ思い出させてあげますよ」
くく、と喉の奥で笑いを漏らし、いったん上体を起こすと、白鳳はいきなりアックスの股間のモノに唇を寄せてきた。普段ならこんな暴挙を見過ごすアックスではないが、動揺していたせいもあり、あっさり攻撃を許してしまった。
「・・・・・う・・・・・ま、待てっ・・・・・・」
腰を退き加減で、早くもうめき声を漏らすアックスにはお構いなしに、白鳳は濃厚な愛撫を始めた。ピチャピチャと殊更に卑猥な音を響かせながら、根元から先端までたっぷり唾液をまぶして舌腹で擦ってくる。たった2度の交わりで、弱点を完璧に熟知されていた。
「・・・くはっ・・・・・ま、まさか・・・・俺がおめえにこんな・・・・・」
「ええ、してません」
白鳳はモノから紅唇を離すと、冷たい指先で双球を揉みしだきながら、事も無げに言った。アックスの固くなったサオの先端からは早くも苦い蜜が染み出している。
「て、てめっ・・・・・・!?」
「せっかく勝負に勝ったのに、貴方の分の飲み代は払わされるわ、ベッドは占領されるわ、昨夜はさんざんな目に遇いました。このツケは身体で払って下さい、ねv」
いかがわしい行為の最中とは思えない、爽やかな笑みを浮かべて。
「だ、騙しやがったなっ!!」
「騙される方が悪いんですよ」
事ここに至って、ようやく白鳳に嵌められたことに気付いたアックスだがもう遅い。すでに下半身は甘い痺れに支配されかけている。それでも、どうにか身を捩って抵抗を試みたが、興の乗った白鳳が解放するわけもない。
「ま、待てっ・・・・・ぐっ・・・・・は、放しやがれっ・・・・・ふあっ。。」
アックスが徐々に昂まってきたのを察し、その口淫にもいっそう熱が籠もる。舌を長々と差し出して粘っこく茎胴に絡めて来た。それ自体意志を持った生き物のように絡みつき、性感を煽る滑った感触。
「せっかくだから十分楽しませてもらいますね、ふふふv」
淫らな光が緋の虹彩に揺れる。アックスのすっかり勃ち上がったモノを指先で愛しげにつつくと、根元近くまで深々と咥え込み、白鳳は器用に抽送を開始した。
「や、や、やめろ〜〜〜〜〜っ!!」


指と舌でさんざん嬲られ、翻弄された後、アックスが白鳳に無理やり乗っかられて、日暮れまで解放して貰えなかったことは言うまでもない。



COMING SOOM NEXT BATTLE?


 

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