*へっぽこ魔法陣〜後編*



日常は居間代わりにしている、大広間のカーテンを閉め切って、ふたりと2匹は食事も後回しに、てきぱきと召喚の準備を進めた。室内にいた男の子モンスターは、一時的に別室へ移動させ、遅いランチまで我慢できるようクラッカーを与えてある。
「うん、魔法陣はカ・ン・ペ・キ・・・と」
白鳳のたおやかな手が、白いチョークを巧みに操り、床へ複雑な文様を描いた。四方には銀の燭台が置かれ、フローズンが全ての蝋燭に明かりを灯す。
「・・・・これでよろしいかと存じます・・・・」
「じゃあ、後は呪文を唱えるだけだね」
「とうとう、ですおのご主人様とご対面かー」
「きゅるり〜」
「・・・・あの・・・・もう一度考え直された方が・・・・」
召喚の時が近づき、気持ちが高揚する一同へ、フローズンが躊躇いがちに言いかけた。神風やオーディンみたいに、腕ずくで主人の暴挙を阻止するタイプではないので、白鳳の勢いに押し切られ、心ならずも最終段階まで協力した。しかし、臆病なくらい慎重なフローズンにとって、いかに仲間のためとは言え、成功の保証がない挑戦は、どうにも受け容れ難いようだ。無理もない。客観的に見れば、能力や経験がないにもかかわらず、いきなり上級悪魔を呼び出せると信じる白鳳は、ほとほと理解に苦しむ。だが、緋色の瞳には露ほども迷いはなく、雪ん子のなだらかな肩にそっと手をかけた。
「本の記載と寸分違わぬ段取りをしたんだもん。絶対、上手くいくって」
「・・・・上級悪魔をそんな簡単に呼び出せるものでしょうか・・・・」
「うっふっふ、私は超神プランナーにだって会ったんだよ」
一般の人間なら、神や悪魔はイメージ上の産物で、特に高位の相手とは特殊な事情がない限り、対面不可能と考えるだろう。けれども、なまじプランナーと謁見したばかりに、白鳳の中では未知なる存在に対する垣根が一切取り払われていた。ただでも、根本的な分類基準がいいオトコ/それ以外なのだ。
「オレたち、エンブリオかあちゃんとも話したよなー」
かつて”神秘の回廊”へ迷い込んだことを思い出し、ハチが嬉しげに笑った。真性××者と神の呪いをかけられた小動物と特殊な経歴を持つはぐれモンスター。異色のパーティー編成のせいではあるまいが、確かに白鳳一行は普通の冒険者が到底、遭遇し得ない、数々のアクシデントをくぐり抜けてきた。育ちの良さから来る暢気さもあるが、ますます神経が図太くなった白鳳は、もはや、多少の事故や揉めごとでは驚かない。上級悪魔との対面も、旅の勲章のひとつ程度にしか感じてないのかもしれない。
「召喚が首尾良く行けば、超神、聖女の子モンスター、上級悪魔と全階級制覇だねえ♪」
「おおおっ、すんげえ〜っ!!はくほー、カッコいい〜っ!!」
尖った顎をくいっと上げ、誇らしげに胸を張る白鳳。にんまり歯をむき出して、チャイナ服の周りを小躍りするハチ。ミーハーなお調子者が本来の目的とずれたところで達成感を覚え、意欲を漲らせているのは明白だ。
「・・・・ああ、やはり不安です・・・・」
「きゅるり〜。。」
根本にはDEATH夫の幸福を願う真心があるのは分かる。でも、白鳳たちのお気楽な様子を目の当たりにすると、フローズンとスイは懸念を抱かずにいられなかった。
「ここまで用意したのに、今更、後戻りは出来ないよ」
表情を曇らせるひとりと1匹へきっぱり告げると、白鳳は魔法陣大全を手に取り、召喚呪文の一節を捜した。逸る気を抑えられず、指先が小刻みに動いて、ページを飛ばす。暴れうしの突進は、勢いがついたら最後、もう止まらない。一心不乱に呪文を探る白鳳を、皆は無言で見つめていたが、不意に、ハチがぽつりと呟いた。
「でもよう、ですおがご主人様と帰っちったら、2度と会えなくなるんかなー」
「・・・・悪魔界へは行きようがございません・・・・」
「きゅるり〜」
悪魔界の正確な場所は、創造神ですら知らないと伝えられているのだ。DEATH夫が帰還した後は、恐らく白鳳パーティーからコンタクトを取る術はなかろう。DEATH夫の悲願を叶えてやりたいけれど、同時に掛け替えのない仲間を永遠に失うのでは、あまりにも寂しい。フローズンとスイも唇を震わせてうなだれたが、白鳳だけはいつも通り、ムダに前向きだった。
「平気、平気。私は伝説の存在&極上のオトコを惹き寄せる星の元に生まれたんだよ。必ず、DEATH夫とも再会してみせるから」
従者と弟を励ますというより、図々しい本音を包み隠さず口にしたに過ぎないのだが、白鳳の筋金入りの楽天主義もこの場では効果的だった。自力では努力しようのない問題は、成り行き任せにするしかない。希望を抱こうが、望みを捨てようが、待っている結果は同じなのだ。ならば、未来を信じて、元気一杯に暮らした方が、精神衛生上も好ましいに決まっている。
「・・・・白鳳さま・・・・」
「そだな、オレも頑張って、ですおと会うぞー」
「きゅるり〜」
白鳳の宣言に力を得て、フローズン、ハチ、スイは再び顔を上げると、口元をふんわり綻ばせた。



張り詰めた空気の中、白鳳はようやくお目当ての箇所を発見した。が、視線を落とした途端、白皙の美貌があからさまに強ばった。
「げげっ」
「・・・・いかがなさいました・・・・」
「きゅるり〜」
「びっくらするほど、へなちょこ呪文なんか?」
周囲の注目を集めた白鳳は、いかにもきまり悪そうに小声で漏らした。
「よ、読めない」
白鳳の嘆きを受けて、全員、”魔法陣大全”を覗き込んだが、なんと、肝心の呪文部分のみ、象形文字のごとき奇妙な書体で記されていた。誰かさんのような不心得者に、安直に魔法陣を使わせまいとする筆者の知恵に相違ない。
「なんだ、こりゃ」
「きゅるり〜??」
初めて目にする不思議な字面に、小動物コンビは短い首を捻った。ここは学者顔負けの教養を持つフローズンに頼るしかない。白鳳は最後の期待を込めて、博識な従者に問いかけた。
「ねえ、フローズンは見覚えない?」
「・・・・呪術用の特殊な文字が使用されておりますので、私にも解読出来ません・・・・」
「ホント?」
「・・・・ええ、残念ですが・・・・」
呪術用と判別したにもかかわらず、読めないなんて、白鳳は心なしか疑わしいものを感じた。呪術文字の使用をこれ幸いと、主人の無謀な計画を消極的に阻止しているのだろうか。とはいうものの、証拠が示せない以上、解読不能と返されれば、納得して肯かざるを得ない。苦心して、召喚寸前まで漕ぎつけたのに、予想外のファクターで頓挫して、白鳳は心底、落胆した。
(く〜っ、悪魔界の主従いっぺんに、愛人にする夢がっ)
真っ先にこんな表現で悔やむあたり、直前の興味がどこへ移っていたか丸分かりだ。しかし、下心満載の××野郎と異なり、純粋にDEATH夫を主人と会わせたかったハチは、諦めきれずに魔法陣の中心までやって来ると、腹の底から声を張り上げた。
「うお〜い、ですおのご主人さまよう、出て来てくりよう〜っ」
ぽっこりお腹を揺すぶって、絶叫するハチを見遣り、白鳳は思わず失笑した。ハチの呼びかけで現れるくらいなら、DEATH夫とて苦労しないし、わざわざ大掛かりな魔法陣をこしらえる必要もない。
「ハチ、気持ちは分かるけど、ちょ〜っと無理じゃないかなあ」
「・・・・部屋を片付けて、昼食の用意をいたしましょう・・・・」
フローズンの提案が終わらないうちに、突如、魔法陣の周囲からむくむくと白い煙が湧き起こった。
「おや」
「・・・・あれは・・・・」
白鳳主従が状況を把握する間もなく、煙は魔法陣を覆い隠すごとく充満し、白い帳の向こうに巨大なシルエットが浮かび上がった。
「はくほー、なんかいるぞっ」
「きゅるり〜っっ」
糸を引く煙を隔て、不気味に蠢く影。まるっきり想定していなかった事態に、一同は訝しげに顔を見合わせた。まさか、ハチの雄叫びで召喚される、お間抜けな輩がいるとは思わなかった。
「DEATH夫のマスターとは違うよねえ」
「んだ、DEATH夫のご主人様の匂いと違うかんな」
「・・・・ならば、いったい何が召喚されたのでしょう・・・・」
「ひ、ひょっとして・・・・兇悪な魔物が出てきちゃうとか」
事ここに至り、白鳳は初めて激しい危機感を覚えた。行き過ぎた好奇心は、しばしば周囲まで巻き込む災難を招く。今まで何度も痛い目に遇っているのに、またもややらかしてしまったらしい。薄い紅唇をきゅっと噛み締めながら、白鳳はベールの奥の相手を見据えた。



かつて白鳳の酔狂が仇となり、封じられた魔物を覚醒させたことがあった。DEATH夫が真の力を解き放ち、退治してくれたから事なきを得たが、神風やオーディンでさえほとんど損傷を与えられない強者だった。万が一、そんなレベルの怪物が登場したら、ふたりと2匹のメンバー構成ではなす術はない。煙でぼやけたラインが、徐々に収束するにつれ、白鳳は速やかに最善策を講じる必要に迫られた。
「うえ〜っ、どーすんだ、はくほー」
「どうするって、戦うしかないよ」
いつまでも正体不明の敵に怯んでいたって埒があかない。恐怖も不安も一定のラインを越えると、逆に度胸が据わってくるみたいで、白鳳はすっかり平常心を取り戻していた。
「・・・・ですが、現状では相手の属性も弱点も分かりません・・・・」
「きゅるり〜」
「ハチはスイと一緒に、部屋の隅へ退避してて。私がおとりになって突撃するから、フローズンは背後からスノーレーザーを使ってよ」
「おうっ、がってんだ」
「・・・・はい・・・・」
仮に逃走するとしても、追跡を妨げるべく、ある程度のダメージを加えるのは効果的だ。優れた従者たちの指導もあり、実戦の勘も判断も十分養われている。弱気にならず、落ち着いて応戦すれば、不利な状況に陥っても、必ず突破口が見えてこよう。
(ハチの呼びかけで、のこのこ出てくるへっぽこだもん。レベルもたかが知れてるね)
己に軽い暗示をかけつつ、白鳳は愛用の鞭をしなやかに振り流した。だが、早くも後方で構えを取るフローズンに対し、スイを抱きかかえたちっこい虫はまだ脇に留まっている。
「ハチ、すぐ避難しなきゃダメじゃない」
「なあなあ、覚えのある匂いがすんだけど」
注意を受けたハチがどんぐり眼を回して言いかけたので、白鳳は虚を突かれ、鞭を握り締めた手を下ろした。
「えっ、DEATH夫のマスターとは違うんでしょ」
「もっと慣れ親しんだ匂いだぞー」
「・・・・つまり、魔法陣の上へ映る影は敵ではないと・・・・」
「きゅるり〜?」
直接、戦闘の役には立たないが、ハチは数々の特殊能力の持ち主だ。中でも野性の嗅覚は人・物を問わず、対象の全てを察知し、見立てにまず間違いはない。ハチが”慣れ親しんだ”と感じた以上、無視することは出来ず、白鳳は漂う気を探ろうと、改めて五感を集中させた。禍々しいシルエットに惑わされ、白煙の彼方に魔物がいると思い込んでいた。しかし、先入観を捨てて気配を追えば、招かれざる客が潜む場所は、どうやら魔法陣の脇の燭台のあたりらしい。
「そこだっ!!」
白鳳は狙いを定め、勢いよく触手を繰り出した。帳に吸い込まれた一撃は、はっきり手応えがあった。相手の正体を晒すため、力任せに鞭をたぐり込んだ白鳳だったが、触手はぴくりとも動かず、反対に凄まじい力で引き寄せられた。
「くううっ」
元々、細身の白鳳だけに、いくら頑張っても力比べには限界がある。健闘虚しく、白鳳はずるずると煙の渦へ引きずられていった。
「・・・・白鳳さま・・・・」
「オレも加勢すんぞっ」
「きゅるり〜」
フローズンと小動物コンビが慌てて、チャイナ服の腰回りへしがみついたけれど、彼らとて肉体派ではないし、所詮は焼け石に水だった。結局、全員、白いベールへダイブさせられ、こしらえた魔法陣の上で派手に転倒した。
「痛〜い」
「あててててっ」
「・・・・う・・・・」
「きゅるり〜っっ」
後頭部と臀部の痛みをこらえながら、白鳳は緩慢に体勢を立て直した。ふと、眺めれば、怪物の影があったはずのところには人っ子ひとりいない。
「・・・・白鳳さま・・・・」
横で上体を起こしたフローズンが、驚愕の面持ちと共に、一点を指した。それはまさに白鳳の鞭が狙いすました箇所。煙の壁を越えた白鳳たちの視界を遮るものはすでになく、皆はフローズンの指先が示す方向を凝視した。
「えええっ?!」
「かみかぜとおーでぃんじゃないかよう」
「きゅるり〜っっ」
銀の燭台の前に仁王立ちしていたのは、紛れもなく、街へ出掛けた神風とオーディンだった。



怪物の類と遭遇せずに済んで、ほっと安堵の息を吐いたものの、白鳳の感情は治まらなかった。不気味な影を捉えた時は、マジで気が動転して、パニック状態になりそうだった。マスターとしての使命感とハチの助言で立ち直ったが、繊細なハート(自己申告)がいたく傷付いたことには変わりない。白煙とシルエットは街で調達したアイテムを使ったのだろうが、悪戯にしてはあまりにも悪趣味だ。生真面目な彼ららしからぬ仕打ちに、白鳳は整った眉をたわめた。
「もうっ、ふたりとも脅かさないでよっ。心臓に悪いったらありゃしない」
きつい口調で吐き捨てた白鳳には、神風とオーディンの容赦ない叱責が待っていた。
「びっくりしたのは我々の方です」
「心得もない者が悪魔を召喚するとは無謀過ぎる」
「あの魔物はフェイクですけど、先の展開次第では取り返しのつかない事態になっていたかもしれませんよ」
「な、なぜ、ふたりがそこまで知ってるわけぇ!?」
主立った従者が外出した後、秘密裏に進めた計画が、もっとも知られたくなかった面子に筒抜けとなっている。ばれたら面倒だと承知しているからこそ、昼食も差しおいて儀式の準備に励んだのに、何もかも水の泡だ。衝撃のあまり、呆けた顔の主人へ、神風は冷ややかに答えた。
「ベランダで日向ぼっこしていたきゃんきゃんに聞きました」
「嘘ぉ!?あのコたちに話した覚えはないよ」
白鳳は誓って、誰にも言っていない。ならば、協力者が暴露したと推理するのが自然だが、スイは言葉が通じないし、口の堅いフローズンが余計なおしゃべりをするとは思えない。
「すると、やっぱ、犯人は・・・・」
言い差した白鳳は、胸元を不規則に飛び回るハチを睨み付けた。ハチは左手で頭を掻くと、ごん太眉を八の字にして、ぺろりと舌を出した。
「でへへー、オレ、ですおがご主人様に会えるのが嬉しくて、つい皆に予告しちった」
「このおバカっ」
「あてっ」
バックスイング付きの強烈なビンタで、逆さのまま吹っ飛んだハチを、オーディンの逞しい胸板がやんわり受け止めた。
「白鳳さまにハチを叩く資格はない」
「そうですよ、自分ひとりで地獄へ落ちるならまだしも、他者を巻き添えにするなんて」
神風とオーディンの矛先はハチではなく、ダイレクトに白鳳へ向けられた。
「なにさ、フローズンやハチだって同罪でしょ。私だけ責められるのはおかしいじゃない」
露骨な差別に納得できない白鳳は、膨れっ面で反論したが、主人への風当たりは更に厳しかった。
「フローズンとハチの優しさにつけ込んで、強引に協力させたに決まってます。心にもない美辞麗句で、ふたりを騙くらかす様子が目に見えるようです」
「うむ、慎重で賢いフローズンがリスクだらけの企てに、みすみす手を貸すわけがない」
神風はもちろん、オーディンまで白鳳が主犯だと信じて疑っていない。まあ、常に悪巧みの尻拭いをさせられていれば、トラブル発生のたび、反射的に白鳳の仕業と判断しても当然だろう。
「騙してなんかないもん。フローズンもハチも自らの意思で賛同してくれたんだよ」
「きゅるり〜」
今回に限っては、白鳳の申し開きもあながち嘘八百ではない。そして、全部の罪を背負って、過酷なつるし上げに遭う白鳳を、見殺しにするフローズンとハチではなかった。
「・・・・待って下さい、ふたりとも・・・・」
「はくほーをいじめないでくりっ。オレが本を持ち出したから、いけなかったんだよう」
目を潤ませて、ハチは”かあちゃん”の冤罪を訴えた。けれども、当の白鳳は健気な姿に感動するどころか、速攻で己の保身に走った。
「そうそう、ハチが柄にもなく、書斎から”魔法陣大全”なんて探してくるから、私もつい出来心で・・・」
「・・・・いえ、DEATH夫を思い遣り、本を手にしたハチに責はございません・・・・。・・・・私が白鳳さまをお止めすべきでしたのに、魔法陣の作成に助力したのが間違いだったのです・・・・」
ハチの立場を不利にしてはならないと、フローズンが珍しく手振りまで付けて言い放った。白鳳は内心ほくそえみながら、自分だけを悪者扱いする神風たちに切り返した。
「聞いた?フローズンだって、一緒に用意をしたんだからね」
「きゅるり〜。。」
ふてぶてしい兄に呆れ返ったスイが、露骨に顔を背けている。白鳳や仲間を庇って、大げさなくらい非を主張するハチとフローズン。従者の証言をこれ幸いと、どうにか罪を免れようとする白鳳。対照的な主従の姿を目の当たりにして、神風とオーディンがいかなる心証を抱いたかは言うまでもなかった。
「白鳳さま、責任逃れを目論んでもムダですよ」
「フローズンとハチに罪をなすりつけて恥ずかしくないのか」
白鳳の期待とは裏腹に、ふたりの評価はこれっぽちも覆らなかった。ただでもマイナスの信用度が、見苦しい抵抗でいっそう下落しただけだった。
「ま、待ってよ、フローズンたちの発言はことごとく真実なんだよ」
「潔く非を認めたらどうなんだ」
「改悛の情が欠片も見られませんね。今日から、無期限外出禁止にします」
死刑宣告にも等しい断罪を受け、白鳳はへなへなとその場にくずおれた。
「わ〜ん、どうしてこうなるのさ〜っ」
「きゅるり〜♪」
白鳳の名誉のために断っておくが、最初の動機は純粋だったのだ。DEATH夫の悲願を叶えるべく、フローズンを真摯に説得した。しかし、腐れ××者の業が白鳳を情け深いマスターのままでいさせてくれなかった。もっとも、神風たちに発覚してからのやり取りを思えば、厳罰もまさに自業自得。白鳳は遅いランチが終わった後も、延々と神風のお説教地獄に晒されるのだった。


FIN


 

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