結婚してから初めてのお正月を迎えた司令とカヲルちゃん。司令としては新妻の手作りおせちに舌鼓を打ちつつ、食卓につくというのが新年の理想でしたが、数ヶ月前まで料理レベル限りなくゼロに近い1だったカヲルちゃんにそんなことを望むのはどう考えても無謀というもの。それどころか未だに簡単なお雑煮さえも作れないのです。やむなくシンジ君に頭を下げて(お年玉も奮発して)おせちのお裾分けをしてもらいました。けれども、そんなこととは露知らぬカヲルちゃんは遠慮会釈なくおせちを食べまくり、ほとんど一人でたいらげてしまいました。
楽しみにしていたご馳走にありつけず、年の初めからなんとなく意気消沈の司令。そんな司令の様子に気付いたカヲルちゃんはさすがにちょっと良心が咎めたみたいです。なにしろ結婚したくせにお年玉までしっかりふんだくっているのです。でも、今の自分に出来ることはあまりにも限られています。とその時、前回のお料理教室でお餅の焼き方を習ったことを思い出しました。確か、切り餅ならしこたま買ってあったはずです。
さっそく、網に餅をのっけてこまめにひっくり返し始めました。器用に箸を操るカヲルちゃんの手つきに司令も思わず見入っています。結局、餅は焦げることもなく、香ばしく焼き上がりました。仕上げに醤油をうすく塗って味付け。焼き立てのアツアツのお餅は柔らかくて、とても美味しいです。この分なら来年の正月には碇家の食卓にカヲルちゃんの心づくしの豪華なおせち料理が並ぶのは確実でしょう。未来の幸福を夢見て、司令の渋い顔は緩みっぱなし。しかし、カヲルちゃんがにっこり微笑んで、なのに目だけは笑わずに「僕、もんのすごいヤキモチ焼きなんだよ。」というのを聞いて、なぜかしら背筋に冷たいものを感じる司令です。
|