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乳腺症とは?-より専門的に

1828年にAstley Cooperによりはじめて、中年女性によく見られる嚢胞性疾患として記載され、1927年にMoszkowicsが「性ホルモンの失調による乳腺の変化であるとみなし、本症の複雑な病理形態をMastopathieの名で包括しました。1945年にはFoote&Stewartにより、乳腺症は、増殖、萎縮、化生の3病変をあらわす複雑な部分像の集まりと理解されるようになっています。まとめると、
1.中年女性によく見られる良性疾患である。
2.性ホルモンの不均衡により起こると考えられている。
3.病理組織学的には、乳腺の増殖、萎縮、化生の3病変の集合である。
4.臨床経過中、自然治癒、あるいは退縮することがある。

このように、乳腺症とは概念自体が大まかであり、専門家の間でも、正常乳腺の生理的変化なのか、乳腺症なのかの判断に迷うことがあります。

原因は性ホルモンの不均衡とされておりますが、詳しく言うと、乳腺は性ホルモンの標的臓器であり、エストロゲン、プロゲステロン、プロラクチンが関与しています。このうちエストロゲンは、乳管系の発育を、プロゲステロンはエストロゲンと共同して腺葉及び腺房系の発育にかかわり、プロラクチンも乳汁分泌刺激作用の他に乳腺の終末膨大部を腺房化する作用があるといいます。正常乳腺はこれらのホルモン作用により、月経周期に伴い、増殖、退縮という変化を繰り返しています。乳腺症はエストロゲンとプロゲステロンの不均衡すなわち相対的なエストロゲンの過剰状態により起こるとされています。

乳腺症は、乳腺外来を訪れる乳腺疾患のなかで最も多く、乳腺線維腺腫、乳癌とともに、乳腺の3大疾患といわれています。好発年齢は35〜45才で、閉経後には急減するといわれています。
症状は片側または両側の疼痛としこりで、そのほかに、緊満感、肩や背中に放散する痛み、違和感などがあります。その症状は月経前に増強し、月経後に軽減する周期性をとることが多いですが、持続的だったり、生理後に起こったりすることもあります。

診断は主には超音波診断によりなされますが、触診では、境界不明瞭で、周囲乳腺組織よりは硬い、不整型の硬結として触れることが多く、乳癌との鑑別が重要なことがあります。また、乳腺症に伴う乳頭異常分泌も5%前後の頻度であり、性状は漿液性、乳様のことが多く、血性の場合には、乳癌、乳管内乳頭腫の鑑別が重要になります。超音波診断の特徴としては豹紋状といわれる斑状の像を呈しますが、嚢胞の場合は内部無エコー、後方エコー増強の典型的パターンを示します。





治療は基本的には経過観察ですが、時に乳癌と鑑別困難な場合があり、注意が必要です。




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