週刊仏教タイムス(’99.3.25)
「いのちの尊厳を見失わせる危険性孕む」 大谷派が初の脳死移植で見解 |
先月二十八日、高知赤十字病院の脳死患者から臓器摘出、数カ所の病院で移植手術が行われたことに対して、真宗大谷派はさる十六日、木越樹宗務総長名で見解を発表。脳死臓器移植が「いのちの尊厳を見失わせる危険性を孕んでいる」と警告している。
見解は冒頭で、二年前、臓器移植法案が衆議院で可決された際に宗派として声明を発表し、医療不信や脳死判定に対する危惧が払拭されないまま、臓器移植を目的に脳死を「ひとの死」と法律で定めることに人間の傲慢さを感じ「遺憾の意」を表明したことを述べ、今回の脳死臓器移植については、ドナーおよび家族の意志が尊重され実現したが、「そのことで脳死臓器移植という医療そのものが必要以上に美化されるべきではない」としている。
そして脳死判定の無呼吸テストなどの手続きミス、家族のプライバシー保護の問題が論議されていることに触れ、何よりも脳死臓器移植が「ひとの死」によって初めて成り立つ医療であることから、生きた臓器を「部品」と見たり、脳死した人を「臓器の提供者」と見なす発想を生み、「はては『いのちの選別』や『臓器売買』などの犯罪へと人間を誘い込み、いのちの尊厳を見失わせる危険性を孕んでいる」と述べている。
そして、今回の脳死臓器移植が、自分たちにあらためて生と死の意味を問いかけており、「この尊い縁を通して、広くこの問題が論議され、私たちの間に『いのちの尊厳』と『生死』の豊かな意味が回復されることを願ってやまない」と結んでいる。