05年4月

1月×日…江戸川プレコ来社。「カミコップ八木から電話あった。営業、大変らしくって、“また漫画描かしてもらえません?”ってゆんで、“お前の単行本パッとしなかったから、漫画はあきらめろ”つったら、寂しそうだった」「会社、もう2社目らしいし。人事じゃないっすよ。どうしようかなぁ俺も…」『熟女の恥ずかしいH告白』の表紙や漫画で活躍中の、小海隆夫の古い仕事仲間が持ち込みに。爺さんかと思ったら俺と同じ。稿料5000円でも使いたくないが、「他じゃどの位?」と社交辞令。少し考えた後、その数倍の稿料を。勿論即お引き取り願ったが、時々いるこのタイプの漫画家の発想が理解不能。仕事が少ないから自ら持ち込む訳だ。要は自分の叩き売り。その身分で“逆オークション”してどうする?モアの吉田婆ちゃんにも電話。暇そうなので、『Mate』でコラムを。題して「体験的在日韓国人損得論」。「いんですかそんなの?」「かまわねえよ!」って言うか、婆ちゃんのエロ話なんぞ、もう1円の商品価値もねえ。忙しい。来月売りから『にっぽん話題スクープ』(日本出版社)を請けるため。廃刊になった『漫画バンプ』の復活と考えれば何でもないはずだが、半年以上3誌体制に慣れてるとやっぱ(誌名は実話誌のまま、人妻熟女系コンビニ漫画誌に)。帰りの新幹線で、『夢酔独言他』(勝小吉・平凡社東洋文庫‘69)読了。評判ほどじゃない。上信線で『<男の恋>の文学史』(小谷野敦・朝日選書・本体1300円)に。無論痛快だが、少し固い。自室で『13ゴースト』(監督・ウィリアム・キャッスル・‘60米)。悪くはないが、付録の予告編に負けてる。

1月×日…茗荷谷の古ぼけた元料亭風の建物に、社会的地位や金のなさそうな編集や物書きが15人程集合(2〜3人姉チャンも)。南陀楼綾繁が主催する、「BOOKMANの会」なるイモな名称の団体で、俺にエロ漫画界の裏話等をしてくれと。恥ずかしいからと断わったが、どうやら穴埋めに困ってた様子なので、仕方なく。約90分の馬鹿話。話しててイマイチなのが自分でわかる。俺は宴会場での悪口談には独自のサエはあるが、教壇やテーブルには向かない芸風と再認識。「さくら水産」での打ち上げで、『徳川夢声と出会った』(晶文社)、『職業“雑”の男徳川夢声百話』(私家版)、『脇役本』(同)知られる濱田研吾に初めて。なのに既視感。そう。杉作J太郎描く所の、今は亡き名優、高橋悦史にそっくり!(息を吸い込むと、2つのタイムトンネルに引き込まれそうな巨大な鼻の穴も酷似。俺もその点かなり自信あったが、白旗)。故『幻羅』の“べっちょ唇の藤田”と一緒に、地下鉄後楽園駅から、東京ドーム付近をトボトボ。最終に間に合わないので、大洋図書ビルで寝ると(漫画屋から徒歩5分)「M社のKさん、色っぽかったっすねぇ…。僕がよろしく言ってたって伝えて下さいよ!」「男殺しタイプのああいう美女は、美男子には飽き飽きしてるから、オメーみてなゲテ物に、案外食指を…」「ほ…本当ですかっ?!」「ウソだよ!」「やっぱし…」薄団の中で『詩とことば』(荒川洋治・岩波書店・1700円)。荒川本はどれも文字が大きく行間にも余裕があるので、酔ってても“楽読”(けど“スカスカ本 ”ではない)

1月×日…“獄中派セクシーヴォイス編集者”として知られる、松文館の高田編集長と、熟女系アンソロ単行本の打ち合わせ。前回が『人妻妊婦調教』だったので、『腋毛巨乳熟女』を提案したが、「社長が腋毛にあんまいい顔しなくて…」。結局、『巨乳熟女姦淫』に落ち着く。中高年オヤジ読者にゃ、“巨乳”より“腋毛”のがポイント高いのに。神保町へ出る前、九段下の「小諸そば」でミニカレー丼セット(480円)。ここの和風カレーは抜群。自らの利益しか考えない、トヨタやライブドアのド下品な経営者には全く興味ないが(特にトヨタ。“我が藩が豊かなら他国民など糞くらえ!!”の態度は、戦国時代の悪代官レベル)、本チェーンや「シャノアール」の経営者のインタビューは、是非読みたい。

2月×日…朝一番に新文芸座へ。増村保造監督特集で、『暖流』(‘57大映)と『くちづけ』(同)。白髪やハゲ頭の客が目立つ。6分の入り。映画館慣れした世代なのと、作品のレベルもあってか、水を打ったような静けさ。『暖流』、左幸子のブランコシーンについ落涙。黒澤明監督の『生きる』での、志村喬より上手い。旧「文芸坐」の今村昌平監督特集の際(『にっぽん昆虫記』上映日だったと)ロビーで本人を見かけた。チェーンスモーカーのただのおばさんで、俺以外は誰も北村和夫にオッパイ吸われてた女優とは気づいてない風だった。帰りの新幹線で、『家庭教訓劇怨恨猥雑篇』(鈴木志郎康・思潮社’71)。

2月×日…笠倉出版の加藤建次が退社、岩尾事務所に移ると。笑っちゃいけないが笑っちゃうのが、今は同事務所傘下の曙出版から発行中の、『スーパーコミック』も加藤がやる事になり、従来下請けしてたモアの吉田婆ちゃんは完全失業と。う〜む…。皮肉な運命(2人は旧知の仲)。そういや、たのしい事務所のま〜旦那は一体?俺の『書評のメルマガ』連載、「版元様の御殿拝見」が打ち上がったと馬鹿星。送信前に校正。2カ所出て来る“繁盛”が、いずれも“繁栄”に。「オメー、繁盛と繁栄は字も読みも全く違うよ。辞書引いてみな」「…本当だ。全然知らなかった」他の人ならともかく、馬鹿星相手じゃ別に驚かない。

2月×日…新宿住友ビル51階の「シャドーウッド」で、浜野佐知監督の『女が映画を作るとき』(平凡社新書・本体740円)の出版記念パーティー(会費7000円)。老フェミニストや映画関係者中心(『さそり』シリーズで知られる伊藤俊也監督、ミッキー・カーチス、吉行和子他の顔)。一水社のタコ多田、遠藤哲夫(大衆食評論家)と、テーブルの一角を占拠、意地汚なく喰いまくる。多田がボーイの目を盗み、時々何かをふりかけてる。「トンガラシ?」「カレー粉。ここの料理味薄いんだもん」高血圧の濃い味好きの必需品とかで、常に携帯と。4〜5人で2次会にも行ったらしいが、よく覚えてない。

2月×日…2日酔い。早朝出勤。獅月しんらの下描きのFAX、なぜか全然ネームが読めない。(つづく)