3月×日…最近すっかり仕事に自信喪失。昔から小心者の悲観論者だが、ここ半年の落ち込みは手に余る。幸い熟女物で気をまぎらわしてるが、今年に入って以降の“三十路妻ブーム”は、コンビニの店頭も巻き込み狂気の沙汰。今年一杯、いや秋口には終息必至。その時は何を?てな事を考えると余計にめげるので、本誌同様成年マークつきでは数少ないB5判中綴じ誌、『ドルフィン』の山田編集長に景気の見合をと電話するが、留守。東京三世社と縁が切れたせいや、飯田センセの退職もありすっかり三崎町方面とも御無沙汰(山田編集長、あんまヤケ酒飲まんように)。九紋竜が『熟女H告白』の原稿持参。事務所玄関のスケールに入れて飾ってある『網走番外地・嵐呼ぶ知床岬』(’71東映)のポスターを手に取り、「相変わらず健さんはカッコいいいけど、監督が変わって中身は下らねんだよ、この映画」。最近、警官の職務質問を受け(当然!)バッグから護身用ナイフが見つかり、始末書取られたと。「もう何センチか長けりゃ、正式に起訴されたらしいぜ!」『劇画ブッチャー』(セルフ出版)発禁の際といい、始末書と縁深いオッサンだ(結局、略式起訴で罰金刑に)。好善信士から電話。締め切りがまた1日遅れると。駆け出しのくせに生意気だが、明るくて無邪気な話し方のせいで常に「いいよ」と言ってしまい、後で反省。帰りは『その場所に映画ありて プロデューサー金子正且の仕事』(金子正且・鈴村たけし・ワイズ出版・本体2800円)を一気に。桐生の出。ふ〜ん。繊維関係の資産家のボンボンなのだ。確かに東宝カラーにピッタリ。成瀬巳喜男、恩地日出夫、森谷司郎、石原慎太郎他の監督ぶりが興味深い(恩地監督の68年の名作『めぐりあい』、また銀幕で観たい。酒井和歌子と黒沢年男、それに荒木一郎の主題歌が泣かせる)。 3月×日…夏公開の『ヴェラ・ドレイク』(監督・マイク・リー・’04仏英ニュージーランド)の試写で、「メディアボックス」へ。早めに着いたので、相変わらず不快なBGMを流している場内で『リアリスト萩原恭次郎の実像』(斎田朋雄・西毛文学社・本体1905円)。昔からの地元の共産党系文化人。何と91歳。前著、『大手拓次曼陀羅』に比べると数段落ちる。映画、悪くはないが説明過剰でイライラ。後ろの席にシナリオライターの桂千穂。石井輝男監督の『無頼平野』で、一緒にエキストラしたのも既に10年前。知人との会話に、またもや天敵(?)内藤誠の名前(色物漫画家杉作J太郎も、当時は一脇役だったが、遂に映画監督に大出世)。その点俺は…と考えると落ち込むで、事務所に戻り一生懸命にオメコシーンの修正。蟹空解太のチンポ描写、硬度不足(俺への皮肉?)。尾山泰永や鋤焼食之介の一物を参考にさせねば(黒いツヤを出し、血管を交錯させんと。勿論オマンコも。女性差別は厳禁のエロ漫画業界)。タコ多田からの電話で、『Mate』の返品も増えてるので何とかしろと。このままじゃ月刊で出せなくなるとも。本誌もだし頭痛。そういや『ダンシャク』は廃刊と。コンビニ本じゃ、『ファンタジィカクテル』以来か?高定価の平綴じ本が増えると、B5判中綴じ本は浮上するかと淡い期待をしたが、甘かった。ムカついたので、馬鹿星でもテープ台(鉄製)で殴ってウサを晴らそうと思ったが、返り血でトレーナーを汚したくないので断念(数日後、ゲンコツで2〜3発ドタマにパンチを)、神保町へ。最近、すずらん通りの「中山書店」は店頭特価コーナーにロクな本出さない。「田村書店」店頭で仕入れた7〜8冊の単行本や雑誌をめくりながら、「天鴻餃子房」でチャーハンとビール(大)。スープがいいつまみに。「日刊漫画屋無駄話」で前から書こうとして、常に忘れるネタをふと。お題は、次の3つの中から一番安全そうな項目を選択せよとうモノ。(1)「田村書店」店頭の100円均一コーナーで買った文庫本を、店頭店員を無視、奥のレジまで持って行って1万円札を出す。 (2)警視庁保安課にエロ描写の件で呼び出され、始末書を書いた後、担当に「あなたも空領収書を書いてんですか?」と尋ねる。(3)靖国神社に街宣右翼が集結している日に、本殿近くで深沢七郎の「風流夢譚」をマイクで朗読する。平然と(1)を選ぶ人は、相当の命知らず((2)では職を失い、(3)では重症を負わされるだろうだが、少なくも殺されはしない。(1)ではわからない)。 4月×日…みやたえつこの旦那さん、肺ガンで入院と。まだ若いのに…(初老男の俺には他人事ではない)。みやえつオバン、漫画屋BBSに過程を書き込んだため、女性から支援の声。中に「ウチの旦那も28の時に肺ガンで亡くなって」との主旨のモノが。慰めになてないような…。グラフ系編プロ、遊民社の塙社長に電話。実は急に『漫画ピンクタイム』(マイウェイ出版)の編集を共同でする事に(グラフ&記事が同社、漫画が我が社)。『熟女H告白』『にっぽん話題スクープ』のパターン。ただ5月売りからというのはいかにも急。台割埋まるのか?(同誌の外注に関しては、何年か前にも声が。『漫画バンプ』がまだあった頃で、断らざるを得なかった)。過去の例でもだが、売れてる雑誌は絶対に社内編集、ないし編プロから異なる編プロに移動しない。ただ昔から3号雑誌とよく言うが、今は3号で外注先が変わる雑誌も珍しくない。70年代の新左翼の活動家のように、帽子やマスクで顔面を覆ったいトうが原稿を。「花粉には用心するに限りますから…」アシ募集中と(希望者は編集部に連絡を)。体調が比較的安定してるらしいペイントロボに電話、次号の『Mate』、「エロ漫画家の読者時代」を依頼。次回作の下描きにも既に着手してると。昼飯ついでに九段の「昭和館」で“懐かしのニュースシアター”。中国戦線での皇軍は、相変わらず“残敵の清掃作戦”を展開中(永遠にか?)。戦前のニュースでは、皇族登場の際、必ず“脱帽”の指示が画面に。場所柄、1人位はそういう老人がと常に見回すが、まだ目撃経験はなし。帰りの新幹線で『文学じゃないかもしれない症候群』(高橋源一郎・朝日新聞社’92)読了。要領のいい人。上信線で『東京近郊一日の行楽』(田山花袋・現代教養文庫’91)。面白い。ちくま文庫あたりで、田山の紀行文を、3巻位で出してくれないか?(つづく) |