05年9月

6月×日…『メガストア』『桃姫』が警視庁に呼ばれたのは本当だが、『快楽天』は都庁だったと。本来は不健全図書指定だが、ビニール綴じのためそれはしない。が、注意しろとの話らしい。ほとんどのエロ本が成年マークを付け、それ以外のコンビニ雑誌がビニール綴じに。当然、都庁の青少年対策室(旧青少年健全育成課)は大幅予算削減の元、大リストラを断行したと思いきや、全てが昔のまま(エロ本も依然公費で大量購入)。コンビニは既に都庁の縄張(シマ)らしい。害の明白な薬物&AIDS対策に予算を振り向けた方が、青少年の健全育成に役立つのは幼児にもわかる理屈だが、1度予算を手にした役人なる人種は、スッポンのように離そうとしない。帰りの新幹線で『中国魅録「鬼が来た!」撮影日記』(香川照之・キネマ旬報社・本体2000円)読了。役者としては大根だが文才は屈指。今、『キネマ旬報』に連載中の「日本魅録」も、早く単行本化を(役者は早く引退、監督に転身すべし)。自室で『火の鳥』(監督・井上梅次・’56日活)。手塚治虫じゃなく、伊藤整原作の方。監督は、“日本どじょうすくいミュージカルの元祖”だけに、仲代達矢と月丘夢路に奇怪なダンス場面を。悪夢にうなされて眠れず(ウソ!)。

6月×日…原稿持参したいトう、既に短パン姿。野郎の毛ずねは気色悪いが、かく言う俺も同族。短パンは麻薬に似ている。1度慣れると、他人にどう見られようが、絶対に脱げない。雨が降る涼しい日ならなお(冷え心地がたまらない)。三共グラフィックの営業マンに、『妹DVD』(あとりK・一水社・7月発売)の青焼きを返す。「来月からマイウェイ出版で、劇画の単行本もやっから。あんたんトコ担当らしいヨ」「ありがとうございます!」(通称MWコミックスの第1弾は、九紋竜の『熟女緊縛相姦』。定価900円)。松文館から、阿宮美亜の単行本も出そうと、高田センセに電話。「昔からやりたかったの、あのアマの極右エロ漫画集。今なら絶対売れんのに、一水社もマガジン・ファイブも乗って来なくて。『大日本エロ帝国』って題名で、半裸の女子高生が硫黄島で、旭日旗を何人かでおっ立てて、回りに米兵の死体や焼けただれた星条旗が…」「しゃ…社長や若い連中と相談して…」(結局、『エロエロ大帝國』に。9月発売予定)。単行本が増えるのは嬉しいが、雑誌あっての仕事。今の各誌の返品を見てると、現状は貯金を取り崩しているに等しい。夜、「早稲田松竹」の『ネバーランド』(監督・ロベルト・シェイファー・’04米英)に。早めに着いたので、ロビーで『群馬事件の構造』(岩根承成・上毛新聞社・本体2381円)。群馬事件はいかにも群馬的な事件。計画は、1884年、高崎線開通で来県する天皇や高官を襲撃、政府転覆を図らんという、自由党急進派の大革命計画絵図。が、実際には富岡市丹生地区の豪農、岡部家を焼き払っただけの、超ショボイ騒動(秩父事件や福島事件とはレベルが違う)。いかにも口先だけの上州人らしいが、地元の研究者には話は別。日本の公安警察並にどんどん事件をフレームアップ。一世紀以上たつと、“国賊”も郷土自慢の一つ(下仁田ねぎ、下仁田こんにゃく、群馬事件)。ジョニー・デップ人気は相変わらずで、最終回なのに若い姉ちゃんらで3部強の入り。

7月×日…大日本印刷出稿の、『漫画ピンクタイム』の表紙に、陰毛、乳首、尻丸出しフォトが3点も。写真担当の遊民社、塙に電話。「マジメにやってよ!」「ワリワリワリ!!」(コンビニ本の表紙は、乳首、陰毛、尻丸出しはいずれも不可。法的根拠はないが)。同じく写真担当の成年マーク付き雑誌、『熟女の恥ずかしいH告白』と区別がつかなくなってる。一方、この糞忙しいのに、馬鹿星が図画工作を。ダンボールを2枚上下に重ね、両端にクッション用の別の細長い厚紙を入れ、その空間に入れようとしている物は、何だ九紋竜の『熟女緊縛相姦』の刷り出しじゃん。確かにさっき、折れないように厚紙を入れ、デザイナーの萩原センセに送れとは言ったが、いくら一切の加減が効かない馬鹿とはいえ…。殴る気も失せる。「そりゃただの刷り出し。折れなきゃいいの。同じ大きさのダンボールと一緒に送れっつったろ?」「はあ…」「漫画原稿だってそこまでして送ってこんだろ、漫画家も!?」「はあ…」(星センセ自身は、毎日の仕事が楽しいと)鋤焼食之介、『レモンクラブ』の原稿落とす。ウツ病が再発したせいらしいが、ぺーぺーの身で余りに大胆。刹奈センセと、9月に一水社から出る単行本、『もう、できません』の打ち合わせ。「手を入れたいんで、原稿1回送り返して下さい」「普段、手抜きしてた事の証拠だな」「すいませぇん! エヘヘヘヘ…」顔、体型共に中原昌也そっくりの、鬼姫が原稿持参。「見るたんびにデブってんな!」「エヘヘヘヘ…。すいませぇん!」刹奈と発言はほぼ同じだが、無性に腹立たしいはなぜ?帰りの新幹線で、『日経新聞の黒い霧』(大塚将司・講談社・本体1800円)読了。上信線で『皇居前広場』(原武史・光文社新書・本体750円)に。2人の著者、いずれも度胸があり、徹底した反権威主義に加えわかりやすく面白い文章を。カッコいい。自室で『黄金の腕』(監督・オットー・プレミンジャー・’55・米)。エテ公面のフランク・シナトラ、何であんなに人気あったのか?

7月×日…「弥生美術館」の、“内藤ルネ初公開コレクション展” へ(800円)。『薔薇族』の表紙でも有名。前ここへ来たのは石原豪人展だ。これまた『さぶ』の林月光で鳴らした。イラストレーターはものみな男色絵で終わるの?あるいは本美術館の単なるやおい趣味?ついでに近所の「立原道造記念館」へ。窓口の女性が絵に描いたような知的美人で、思わず安部徹に強姦して欲しいと(いや、睦五郎の方がねちっこいか?)。千代田線で『私は猫ストーカー』(浅生ハルミン・洋泉社・本体950円)。つまらん。ヨリ様(笙野頼子)の、『愛別外猫雑記』でも再読、口直ししたくなる。が、しないな。

7月×日…太る一方の鬼姫に比べ、蟹空解太はやせてる風。「体重は変わってません。ヒゲ剃ったから…」要するに体重は年収に比例(尾山泰永も鬼姫ほどではないが、かなり肉が)。俺?身長174センチで、72.5キロ。中肉中背。減らすならまず無理。せめて増やさないようにと、日々努力。(つづく)