05年11月

8月×日…刹奈のいずみコミックス『もう、できません』(一水社・本体857円)の青焼き校正中、気づいた事があったので電話。「他社の原稿に比べて、ウチのはエロは激しいけど、話がおざなり。エロシーンは今のまんま、臭い位のハッピーエンドにしてよ」「いんですか?あたしもその方がやりやすくて…」各々の漫画家の持ち味ってある(忙しさを理由にボケ編集は忘れがち)。やまだのらのアシが原稿持参。珍しい事に中年独身女性で、前妻時代からだから、もう20年のキャリア(推定40代。ヨン様のファン層的キャラ。実家から米俵を1俵かついで家出したとの伝説あり。「趣味はヨン様、それともホストクラブ?」と、今度尋ねてみよう)。帰りの新幹線で『モモレンジャー@秋葉原』(鹿島茂・文藝春秋・本体1619円)読了(鹿島本にスカはないが、女房らしい岸リューリのド素人イラストは何とかしろっ!!)。今最も面白い映画雑誌、『映画論叢』(12)へ。三上真一郎の新連載、「チンピラ役者の万華鏡」、最高。“文太兄いの涙”との副題で不遇だった松竹時代の菅原文太を取り上げてるが、ここまで書く度胸に脱帽(三上を前に出身大学、早稲田の学帽を片手に号泣したと。更に東映で花開いた後に再会したら、「ここも色々大変だよ…」とまた嘆いてたと。全く興味なかった文太が、少し好きに)。

8月×日…ムッツリスケベ顔度No・1、獅月しんらが原稿持参。キャラ、ほんの少し可愛く(最近のルーティンワーク振りに、久々に文句を)。“エヘヘヘヘ…”の鬼姫も、俺の出勤前に原稿をと(顔を合わせるのが怖いらしい。ンな根性だから進歩しねぇ!!)。懐かしの土屋友郎から下描きFAX。これまた進歩ないポンチ絵だが、当人は“ヤル気マンマン”で、「彼氏も出来たし、稼がなくっちゃ!!」。ハスッパキャバクラ嬢崩れが、うめえ事トーシロ男だまくらかしたな。夕方、好善信士も。「やっぱまだオメにゃ自然(海辺)背景の漫画は難しかったな」「ですねえ…。いくら描き込んでも軽い感じになって…」夕食は潮出版の先の立ち喰い、「ゆで太郎」のあい盛り(380円)に、かきあげ(120円)。時々来るが、60前後のオッサン、20代の中国人女性コンビで、BGMは必ず60年代の青春歌謡(専門ラジオ局が?)。橋幸夫の「恋のメキシカン・ロック」を聴きながらそばすすってると、当時('67)の将来の夢など思い出し、現実との落差にため息。帰社。さとうしんまるから、次回『漫画ピンクタイム』のストーリーがFAXで。人妻が自分の息子のチンポ舐めた後、縛られてアヌスを云々。「恋のメキシカン・ロック」のヒットした頃の俺は…。返事は明日でいいや。帰りは『古書肆・弘文荘訪問記-反町茂雄の晩年』(青木正美・日本古書通信社・本体2500円)をずっと。

8月×日…群馬の地元デパート、「スズラン」前橋店での古本市へ。高崎にも店舗のある本デパート、店内の「東武ストア」的雰囲気は嫌いじゃないが、この程度の客数で良く持ってる。高い上にロクな本ないので数冊買ったのみで、店内のそば屋へ(プチ社員食堂といった感じ)。前に見覚えのある姉ちゃん。「えーと…」そうだ、上信線馬庭から乗る。超ミニスカ姿で乗客を楽しませてた娘だ。昨今、スカートが長くなりガックリしてたが(同乗した人妻グループが声を潜め「パンツ丸見えヨ!!」と話してた事も)、ここに勤めてたのか(スカート、また短くしてね・)。帰りは『テレビが生んだ悪役スタア 天津敏』(中田雅喜・円尾敏郎・ワイズ出版・本体2800円)を飛ばし読み。円尾が主導したから当然とはいえ、全くの超ヤッツケ本。風魔小太郎(天津の出世作、TBSの『隠密剣士』での役名)も草葉の陰で泣いているだろう。

9月×日…“通い漫画家”蟹空解太の仕事が一向にはかどらない。尾山泰永やいトうは既に入稿済みなのに。昼間は漫画屋で仕事してるが、夜は自宅でネット漬け&グーグーらしい。どーゆー神経してんだか。一応昨日から泊り込んでるが間に合うの? 夜、「早稲田松竹」で、『大統領の理髪師』(監督・イム・サンチャン・‘04韓)。可も不可もなし(韓国映画って、スカトロシーンがないと公開出来ない決まりでも?)。以前も1度寄った焼き鳥屋、「鳥よし」へ。相変わらずの大混雑(しかも客筋が若い)。カウンターで肩をすぼめ、『役者烈々 俳優座養成所の軌跡』(佐貫百合人・三一書房’95)。田中邦衛の赤貧振りに爆笑(やたら仕事する理由の一端がわかった)。事務所に戻ると、蟹空の馬鹿、シッカリ寝袋でグースカ。蹴飛ばして起こし、今夜は子供のアパートには泊まらず、監視かたがた事務所のソファで寝る事に。

8月×日…昨秋、ソフト・マジックが正式に倒産。共同経営者だった菅野邦明が独立、マガジン・ファイブ設立以降、なぜ潰れぬのかとの噂しきりだったが、何の事はない、業者や漫画家に金払ってなかったから。漫画屋も単行本1冊分、約20万のギャラがコゲ付いたまま。弁護士事務所から債権届けを出せとの通知があったが、面倒だし放っとこうと思った。が、偶然、3年程前に倒産したアミカルに、ほぼ同類のコゲ付きを出してたみやたえつこが、結局2割位の配当をもらえる事になったと聞き、あわてて書類に書き込み発送。どうなるかわからんが、業界がこの景気じゃ、この種の作業にも慣れとく必要が。熟女系漫画家で一番不人気の花村れいらが、下描きを。電話。「馬鹿の一つ覚えみてに、いちいち浣腸シーン出すんじゃねえよ。糞は嫌いな奴もいんだっ!!」「は…はあ」描くのが大好きらしく、読者のコト何も考えてない(全不人気漫画家の共通項)。逆の扇蘭丸にも。「単行本、あちこちに売り込んでるから。あんたの本は、1冊出れば次々に出るヨ!」「ならいいんですけど…」松文館から、阿宮美亜の単行本、『エロエロ大帝國』(本体1000円)が宅急便で。カバーはいいが、帯のタタキがぬるい。“百回ヌケて百回笑える!!超愛国エロ漫画集!”とあるが、俺が高田編集長へFAXした本来の原稿はこうだった。“くたばれ中国・韓国・ロシア!!そしてアメリカ!!!”(やっぱ駄目?)。やっと蟹空が去った、一人の事務所で『波うつ土地』(富岡多恵子・講談社’83).。元詩人の物書きが、低脳な筋肉野郎や、ニッカポッカ男に惚れる話。こーゆ女は、絶対かみさんにしたくないね。(つづく)