05年12月

8月×日…だるい右手をさすりながら、『再会、女ともだち』(山田稔・編集工房ノア・本体1900円)のページを(昼間、俺が与太コラム連載中の『記録』編集部に原稿を届けさせるため、新人の南海アリスに道順を教えろと馬鹿星に指示したトコ、何と一緒に道案内でついてっちゃったので、帰るなり軽いドタマにヘビ―パンチを見舞った)。定評ある地方版元だが、知っての通りの誤植の多さで有名な俺にもわかるミスが。“普段着”を“不断着”になんてと勝ち誇り、念のため辞書を引くと、その方が正しく、普段着は借字と。やっぱエロ漫画屋ごときが、活字本屋にゴロ巻いちゃ赤っ恥を。松文館の高田“獄中派”編集長から電話。ロリ系単行本で、誰かいいのいないかと。皆無じゃないけど、メンバーによっては日本出版社と一水社に怒られかねないので、難しい(雑誌をもらってる版元が断然スポンサーとしてはA級。単行本だけのトコは、いわばいいトコ取りだし)。で、松文館に電話すると、誰が出ても「はい! 松文館の小泉です!!」というように、出た人間が問われもせぬのに自己紹介。ゲバルト派の貴志社長の方針と思われるが、女性ならともかく、野郎の名前なんて知りたくもねえし気色悪い。やりすぎじゃ?帰りは『Hot Wax』VOL・3。飽きて来た。

8月×日…矢島Indexから下描きが郵送で。彼は絶対に締め切りを守る。蟹空解太の野郎に、チンポのアカでも煎じて飲ませたい。ウゲッ!!(一瞬、矢島のナニを蟹空がナニしてる姿を想像したための吐き気)。北野健一の下描きもFAXで。今は熟女モノ漫画家だが、昔はロリ系の人(辰巳系で仕事を)。ロリ系漫画家の高齢化も進行中なので、もっと彼のような転向組が増えてもいい気が(確かにエロ劇画系読者には、絵柄への反発はある。少女漫画っぽく見えると)。今日も馬鹿星にケリを(理由は忘れたが、南海アリスが恐怖に顔を引きつらせてた)。帰りの新幹線で『池田大作「権力者」の構造』(溝口敦・講談社+α文庫・本体838円)読了。高校や大学で授業の副読本にし、健全な青少年がカルトに引っ掛からないようにする必要がある、名著。『詩的生活』(長谷川龍生・思潮社’78)に。意外。ここまでいい詩を書くとは。

9月×日…朝から今年2回目の、裏の堤防の草刈り。いつもは1回。10月にもう1回すると。年3回やると、市から20万だかの援助が、村の自治会に出るらしい。だからどうした?(個人に小遣いが出るならともかく)。今の区長は狂ってる(俺ならハッキリ文句を言うが、この種の会合はまだ両親が)。腰の痛みでうつ伏せになり、『テキサス・チェーンソー』(監督・マーカス・ニスペル・‘03米)。撮影とセットは凄い(脚本と演出は駄目)。

9月×日…新宿の映画館をハシゴするハメに。懲りずに小林信彦の評価を信用して観た、「新宿ミラノ座」での『奥様は魔女』(監督・ノーラン・エフロン)が余りにひどかったため、眼を清めるために「新宿ピカデリー」の『チャーリーとチョコレート工場』(監督・ティム・バートン)へ行ったら、通勤電車並のラッシュ。30分以上早く入ったため座れたが、ロビーはあっという間の長蛇の列(初老男は俺だけ)。久々に同監督の映画に満足(最近の2本はひどかった)。

10月×日…困った。今日は『Mate』の下版と、『にっぽん話題スク―プ』の入稿が重なり、先月一杯で辞めた馬鹿星の手さえ借りたい状態なのに、菜摘ひかるの件で取材に来た。講談社学芸部のA川君(ABC順ではなく、あ行の名字という意味)がもう1時間以上帰らない。中身の違いはあれ同業者だし、見れば状態はわかるはず。ただどっかプッツンしたガキだというのは、すぐわかった。誰の紹介があった訳でもなく、何の義理もない、単に好意で取材に応じる俺に会うのに、手ぶらで来たのは非常識なだけでどうでもいいが、最初にかつて菜摘が本誌に連載した手描きコラム「マンスリーなつみ」、活字コラム「ぶらりキンタマしゃぶり歩き」の数十回分をコピーさせて上げた。事前にコピー代は払えと電話で言ってあったが、本当に裸の千円札を2枚取り出したのだ(当人の弁によれば、“色を付けた”と)。コイツ、コピー代の意味がわかってない。今これだけの彼女の一級資料を集めるには、2万、いや20万かけても不可能。若手ライターに、菜摘の評伝を書かせるための資料にするらしいが、価値は電話で俺に聞いて百も承知のはず。俺ならこうする。事前に経理に行き、資料代として3万出してもらい、まず2万をピンハネ、俺に1万のみを渡して領収書を書かせ、1を3に偽造〈エロ本屋なんてその程度で充分!)。漫画屋は大宅図書館でも公共図書館でもない。おまけにしつこく居座わる(「マンスリー〜」は全部揃ってなかった。俺の田舎の土蔵には多分と言うと、「じゃあ車で僕が…」とか訳のわからん事を。その手間賃俺に出せよっ!!)。1時間過ぎたあたりで、ウチのエロ本を上げると本人大喜び(特に阿宮美亜の『エロエロ大帝国』に)。ンなてぶら野郎にまるで盗っ人追銭だが、そうすれば帰ってくれると、期待した。が、下々の者の良識は、大日本雄弁会講談社を代表する辣腕編集者、A川君にはちっとも通用しない。その後もまた1時間! 2000円の色を付けたコピー代で、得がたい資料やエロ本を入手しただけでなく、俺から2時間も奪って喜々と去った(俺の東京滞在時間は1日8時間)。朝日新聞やNHKにこのタイプが多いとよく聞くが、講談社も同様と見える。一方で、当方にもホンの少し責任がという気も。拙著『嫌われ者の記』も資料に上げたが、俺の心のどこかで、これが縁で同社との仕事関係を…てな妄想をホンの少し抱いたのも事実だから。そして、こういう人間の卑屈さは、社の看板のみで仕事してる、A川君みたいな俗物人間は敏感に察し(どうでもいいトコでナイーブ)、益々うぬぼれに磨きをかけるのだ。

10月×日…朝の上信線で『戦中派復興日記』(山田風太郎・小学館・本体2625円)。付き合ってた娼婦がフルネームで登場するが、最後の断わり書きに“一部を匿名に”とは記していない。が、腰抜け振りで有名な小学館が、まだ子供や孫が生きてる可能性のある人の名前を出すとも思えない。ハッキリしろっ!!(つづく)