06年1月

10月×日…真弓大介に電話。やっぱり犬の散歩で留守。朝夕毎日らしい。映画談義したかったが…。青森の豪雪地帯で、老いたお母さんと2人暮らしの、犬との散歩だけが趣味の独身中年エロ漫画家−何か日本の縮図みたい(福島の山奥住まいのつるぎ基明は、お婆ちゃんと。二人とも元気なら良いが)。久々に内田こねりの旦那に電話(大阪)。年末から仕事を再開してもらう約束を。何もしてないと、両親が結婚しろだ就職しろだとうるさいと。常識あるご両親に感謝! 新人のふみまんが下描きを。全てにおいて未熟だが、女のコキャラにどっか魅力。彼は漫画屋HP経由の持ち込み。『東京震災記』(田山花袋・博文館・‘91復刻版)を読了後、「早稲田松竹」で『故郷の香り』(監督・フォ・シェンチイ・’03中国)。悪くないが、泣かせが木下恵介的でくどい。地下鉄の一駅区間を歩き、「ブックオフ」早稲田店へ。また『映画秘宝』が10冊ほど105円で。全部買う。重いが、東西線早稲田駅は眼の前。反対側の4階建てビルに、エスペラント会館とあるのに初めて気づく。大杉栄他、戦前の社会主義者に人気があった国際語だ。ナショナリズム高揚が著しい今、人気の程は?

10月×日…地元の「群馬県立自然史博物館」の(ニッポン・ヴンダーカマ― 荒俣宏の驚異宝物館)展へ(700円)。インチキ臭いグッズの山。楽しい(館長、長谷川義和の出しゃばり展示には超ムカついた。誰もおらねばタンを吐くトコ)。みやげ物コ―ナーで、蜂に刺されたとかでおばさんが悲鳴。あんだけ大声が出れば問題ないと思うが、駆け付けた職員が青ざめた顔で、「富岡総合病院に一応…」云々。自宅で『誘拐』(本田靖春・ちくま文庫・本体600円)を一気読み。名著。昔から日本の警察は無能だったのだ。猪瀬直樹の厚顔馬鹿が、本田の弟子を自認とは笑止。伊集院808が、手塚治虫の直系とほざくに等しい(808センセ、先月電話したらまだ生きてた)。

10月×日…「やっぱ、あんたんトコ漫画はド素人だヨ!」「………」相手は一水社のいずみコミックス、『暴淫』(いトう)を担当した高田印刷の営業マン。漫画家本人、ないし編集者にしかまずわからないが、一ヵ所とんでもないミスが(指摘してくれた読者には、いトうセンセのカラー原稿、それもサイン入りをプレゼント)。従来からミスが多く、いつかはやると思ったが…。タコ多田に、取り返しのつかない失敗やられる前に、ローテーションから外せと言おう(“誠実な始末書”など、この仕事にゃ糞の役にも立たない)。松竹本社試写室で、正月公開の『銀色の髪のアギト』(監督・杉山慶一)。佳作と思うが、各キャラの横顔での鼻が妙にリアル(劇画的)で高すぎ。帰りの銀座線で『世に出ないことば』(荒川洋治・みすず書房・本体2500円)。

10月×日…朝の上信線で『マクロ経営学から見た太平洋戦争』(森本忠夫・PHP新書・本体950円)。小林よしのりチルドレンは熟読、眼を清めよ。一番の傑作(?)は、大本営発表のウソッパチを信じ込んだ飛行機製造工場の幹部が、作りすぎて勝った際に余っても困ると、貴重なアルミニウムを、民需に流用してたとの下り(笑えない)。今日も馬庭駅から通称“汗臭き豚”が。年齢20歳前後。柔道やってた感じの肥満体型のモロ腐れおたく。1週間は洗ってないだろう、人工油でピカッてる頭髪、色あせたジーパンに同色のシャツ(未洗濯期間、最低でも1ヵ月)、10月末だというのに、素足にサンダル〈11月中旬までコレだった!)。もちろんん付近に腐臭を漂わせるので、周囲は空白。俺も乗車位置を変えたほど。今日は『少年ジャンプ』を読んでないが、意味もなく笑い、手をペロペロ舐めてる。親は俺と同世代か?(う、う〜む…)

11月×日…あっけなく中止になった漫画屋読者集会。が、ホテルも予約しちゃってたらしく、「たまには仕事先にアイサツも」と、小桃が色気違いファッションでピシリと決め、2〜3年振りで秋田から上京。窓際で仕事してる蟹空解太を見て、「『Mate』分ですか?」「いや、あんたと同じ『レモンクラブ』よ!」「エエ〜〜〜〜ッ!! まだ間に合うんですかっ!?」。苦笑するのみの蟹空。近所の曙出版にまず(俺が案内)。夜はぶんか社との予定らしいので、それまでの暇つぶしに、仕事を終えた蟹空との3人で、机の引き出しに山となってる、昔の各種宴会での写真をつまみにカンビール。樽本一、江本明宏、くらむぼん、かおる、まいなぁぼおい、中総もも、町野変丸、ふぁんとむ、中森ばぎな、阿宮美亜、三条友美、杏咲もらる、悠宇樹、真弓大介、ITOYOKO、新体操会社、葉月つや子、菜摘ひかる、M子、ペラ公、さらり、なずな、サニー、GISM…。小桃、「私用に…」と、サ二―やさらりの写真を欲しがるのでプレゼント。「コレ、旦那用にもらっても?」と、M子の気色悪いカット用ヌード写真を。「何枚でも持ってけっ!」 帰りの新幹線で、『はすかいの空』(富岡多恵子・中央公論社’93)。後ろの席のオッサンが、携帯のピポパ音を。振り向き、「すいませんが、その音だけ消してもらえません?」「なぜなんでしょう?」「うるさいんです!」(消してはくれたが…)。

11月×日…夜、「新文芸坐」で『セクシー地帯』(監督・石井輝男・‘61新東宝)。NECO録画版で観て知ってたが、新橋駅前ロケの際、25年前まで一水社が入っていた古ビルが映り、当時の看板雑誌『笑の泉』のイルミネ―ションが鮮明に(“いずみコミックス”のルーツ)。テンポがいいので、偶然頼りの脚本のズサンさが気にならない。杉浦茂漫画の脇役キャラみたいな南陀楼綾繁が、前方の席を陰険な眼つきでウロウロ。行って声をかけるが、とても一杯やる時間はないと。有楽町線で『近衛時代(下)』(松本重治・中公新書‘86)。ナベツネ的記者は、昔から多いんだ(松本は共同通信の元幹部)。本業の事はほとんど出ず、政治家との付き合いの深さをトクトクと。要するに、自分が駐米大使を引き受けてたら、開戦時の野村大使のような醜態は演じなかったと、婉曲に言いたいらしい。

11月×日…タコ多田から電話。『Mate』、隔月にしたら返品良くなったと。「だから『レモンクラブ』も隔月にしてもらって、間にウチでもう1誌隔月誌やろうよ」だと。簡単に言うが、漫画屋スタッフも俺の家族も、隔月で飯を食ってる訳じゃないぜ。う、う〜む…。(つづく)