00年


「下ネタの女王・みやたえつこ」(’00/1)
一昔前は、どんなエロ漫画誌にも2〜3本の4コマ漫画が載っていた。姿を消したのは、ロリコン漫画誌が主流を占めてから(初期には、やまぐちみゆきなるロリ系4コマ漫画家も)。
 それでもエロ漫画誌には、細々とその姿が見られる(かつてはいがらしみきお、植田まさし、かまちよしろう、あべこうじ等も本業界で糊口をしのいでた)。中でも女流のみやたえつこは、二流誌から三流誌を股にかけての大活躍(一流誌から注文が来ないのは、彼女には誇りだろう)。
 ま、ハッキリ言って絵はさほど上手いわけでもなく、ネタも下ネタ一筋(よっぼど旦那が弱いのか?拙宅との混同。すまぬすまぬ!)。が、彼女は下ネタに対する姿勢が潔い。通常はネタに窮するとチンポ&マンコ方面にアンテナを振るが(だから下品に見える)、えつこ嬢は最初から正面切ってSEXと対時する。肝っ玉がすわってるのだ。
「他のアイデア考える才能ねんじゃ?」などと、身もフタもないことは言わない。あるいはそそうなのかも知れないが(オイオイ!?)、これだけ志の低い、とても両親や子供に見せられぬ4コマ、毎月60〜70枚描いてりゃ、エロ文化勲章もの。
コメディアン森繋が新劇にコンプレックス抱いて、日本の喜劇を堕落させたと同様な境地に、ギャグ漫画も必ず立っては、キャリアをすべて失いがちの中で、見上げた根性。
 彼女のマシンガン並のネタの威カは、同業者も脱帽の様子で、片っ端からそのアイデアをパクってる4コマを、竹書房の4コマ誌で見たことも(誌名と漫画家名を忘れたのが残念!)。真似され始めたら、エロ漫画誌も漫画家も一丁前。“絵はさほど上手いわけでもなく”と前述した。訂正する気はないが、近頃は“下手なり”の工夫も。エロシーンの社会主義レアリズム化だ。濡れ場がエロ劇画並……とまで言えぬが、下手なロリコン漫画並。抜いてる読者がいてもおかしくない。
 人づてに聞いたところでは、「エロ漫画誌の中で、4コマは刺身のツマだなんて言われないように、私なりに工夫してんです。笑って抜けりや最高でしょ?」と言ってるとか。さすがである。とはいえ、時々リアルなチンポやマンコが、四角いスミベタに。稿料のいい秋田書店や双葉社の規準に沿ってんだろうが、エロ本じゃもっとリアルにっ!!

「永山薫と『ホットミルク』」(’00/2)

また『ホットミルク』が変わった。何度目の変身だ? “女心とH・M”とでも言おうか。B5判平綴じは従来どおりだが、増ページしたとはいえ定価880円! 単行本1冊の値段で、『MUJIN』『ANGEL倶楽部』『夢雅』よりはるかに薄い同誌を、どこの金持ちが買うの?
 目新しいのはただ一点。『コミックジャンキーズ』が墓場から這い出し、巻末に居候した点で、瀕死の『ホットミルク』とゾンビの『コミックジャンキーズ』の合併。絵に描いたような弱者連合だ。インポ野郎と下ワキガの女で、抜けるエロビデオ撮ろうってな野望に等しい。
 まず漫画。前半の、きお誠児、田沼雄一郎は悪くない。橘セブンあたりから急激にレベルダウン(後藤晶、智沢渚優は例外)。広瀬稔士、才谷ウメタロウとなると、温厚なエロ漫画ファン破り捨てたくなる。むろん両名の漫画自体は、わたなべよしまさや伊集院808ほど低レベルじゃない。載る雑誌によれば充分輝くだろうが、エロ漫画誌の中で粋がってるイモさが不快(それをありがたがってる編集者は余計に)。さて居候。文責の永山薫は“業界一の善良な馬鹿”“永遠の70点男”等、努力家のわりに報われぬ男として有名だが、やっぱ「馬鹿は死ななきや治らない」の言い伝えどおり、退屈な作文を並べている。たとえば荒木京也の『背徳のシナリオ』(エンジェル出版)評。“…何かに取り憑かれたように描き込まれる過剰に波打つ髪の描写が狂気に拍車をかけ終盤は幻覚的なドラマと化す”―70年代の地方進学高校の文芸部の文集じゃねえぞ、バカヤロッ!!
 まともな物書きなら、絶対に使用を避ける言葉ばかり選んで「シレーッ」としているところが不気味。当人は真面目なのだ。そして、このレベルの表現に痺れちゃう白痴漫画マニアがいるのも事実。それはそれで生計たてたり、自足してるのだから放っといてやれという考えもある。俺も暇じゃない。連中(永山の周辺の漫画開係者ってのが当人以上の激馬鹿揃い)が身のほどわきまえ、身残切った同人誌で寝言吐いてるだけなら何も言わない。しかし今、彼らは商業誌で絶叫してるのだ。
 熊ん蜂じゃなく、蠅や蚊、ノミを相手に、そんな下品なとの声も聞こえるけど、やっぱ弱い者いじめって楽しいから、なかなかやめられんよ。

「らいぶらりブレヒト論」(’00/3)

 サッパリ元気ない、修正だらけのB5版中綴じ雑誌のひとつ、『レモンクラブ』をめくってると、不感症っぽい姉ちゃんが、ポーカーフェイスで縛られたりしゃぶられたりハメられる、奇妙な味の漫画が目につく。作品名は、「カクテルのような二人」。執筆者はらいぶらり(2月号掲載)。
 スタートが渋い。「ただいまー」(女)「おかえり ってここはおまえんちじゃないだろ 何でただいまなんだよっ!」(男)結局はSMプレイが始まる。で、エンディング。今度は男が出かける。「じゃあ…いってきます」「うん いってらっしゃい」「っていうか おまえも家に帰れよ!」「はいはい」(女の最後のネーム)「ただいまー」で始まり、「はいはい」で終わる、夫婦物でもないエロ漫画。ここに家族の崩壊を見るアホは、『ホットミルク』に巣喰う『コミックジャンキーズ』周囲の“白痴漫画感想家”くらいだろうが、レンジでチンの“冷凍エロ漫画”にない舌ざわりがするのは事実(女性キャラの不感症っぼさが、冷凍食品っぼいのは皮肉)。
 けど使えねえ。人気もサッパリだろな(東京三世社から単行本まで出てるそうだが、太っ腹な出版社もあったもの)。確かに姉ちゃんの体つきは悪かねえ。ガキからオヤジまで大好きな、巨乳のムチムチボディ。けど、女の視線がなあ。しゃぶったりハメられてる最中も、ジッと男を観察してんだもん。
 現にいるよ、こーゆ女。顔や体はいいんだが、マグロで大味なのに多い。ただ、御法度なのよ、エロ漫画に登場させんのは。晩年の田中角栄と同じく、いるけどいないことになってんだから。編集部もその辺は承知してるようで、雑誌の巻末の前という、一番目立たない場所で、ヒッソリ14ページ。
 しかし編集の思惑以上に、この種のマイナス兵器は、誌面にインパクトを与える。ビデオも漫画も小説も、あらゆるポルノはオーバーなもの。臭い、新劇風演技が主流。その中で、らいぶらり一人が自然の演技、つまり、小津安二郎映画の登場人物のような、肩に力の入らない動きをしている。
 最初は不感症的と思えたらいぶらりの漫画が、ある段階からガラッとリアリティを増す可能性も。その時は他のエロ漫画が、『東京物語』に乱入した市川悦子のように見えてくるかも。

手のつけられない『MUJIN』」(’00/4)

 スキのある女はどことなく色っぽいが、男はアホに見えるだけ。エロ漫画誌はどうか? 基本的にゃ女と同様だが、ある水準を超えると、いきなり性転換、アホな男に見え始め、はては憎々しく思えたりも。めったにないが、独走する『MUJIN』3月号は、その稀有な例。
 表紙を狩野ハスミが担当し、さらに当人が42ページの巻頭カラーを描いてちゃ、総部数の6割ははけたも同然。残部はもう17人の漫画家で、数パーセントずつ引き受けりゃいいんだから、営業部は楽々(編集はどっちにしても大変だが)。“もう17人”と軽く書いたが、その中には荒木京也、じゃみんぐ、風船クラブ、四島由紀夫、万利休といった、他誌なら充分巻頭カラーを担当するメンツも含まれており、東京オリンピックのマラソンでの、アベベと化した同誌の層の厚さに驚くばかり(他誌は円谷幸吉にも及ばず。「おいしゅうございました」と、ティーアイネットにだけ言わしといていいのか?)。
 で、全然可愛くない『MUJIN』だが、どんな人間にも欠点があるのと同様に、“完璧なエロ漫画誌”にも穴があるはずと、同誌を隅々まで点検(ホントは暇じゃねんだが…)。450ページ近い枕本ゆえチェックも大変。小姑根性をフル回転させた結果、一人見つけました。「深夜」を描いてる夜咲って奴。ホンマ、ホンマに下手でっせ、コイツは。一瞬、『コットンコミック』か『オレンジクラブ』見とんのかと思ったほど。
 描線が、中気の爺さんが引っ張ったみたいにガクガク。人体と髪の線の区別もついとらんし、背景なんてゼロ。中でも写真を参考にしてるらしい濡れ場以外のシーンは悲惨で、「俺にも描けらあ!!」と思う人も多いはず。ただし、竹久夢二的というか、大正エロチシズムを感じさせる雰囲気はタップリ。でも、1年は寝かして、様子を見た方が良かったんじゃというのが正直なところ(このクラスに20ページ描かせちゃう、同誌の根性にゃ恐れいるが)。
 もうひとつ文句を。全作品の最終ページにある、キザったらしい「THE END」マーク、どうにかならねえの? 角川映画全盛時の、遊星をあしらったオーバーでこっぱずかしいトレードマーク、思い出しちゃったたぜ。ま、あった方が、ほんの少し可愛くみえる程度の欠点だが(内心は怒りが爆発?)。

「さいはてのぽいんとたかし」(’00/5)

 アバウトな漫画誌だ。でもけっこう売れてるんじゃ? そう思わせる勢いがある。『まんが愛!姫』(東京三世社・定価380円)のことだ(“アイキ”と読む)。執筆メンバーは、さらだまさきを除けば、B級の寄せ集め。魔北葵、松原香織、ぼいんとたかし、となみむか、天野英美、MANA−KO……廃刊雑誌の常連も多い(面白いが売れぬので有名な魔北葵はともかく、松原香織やとなみむかは、「あの人は今!?」。両名ともに40歳近いんじゃ?)。
 雑誌のポリシーが明確。「成年向け雑誌」マークを付け、都条例の不健全図書指定をクリアしてるせいか、“オール鬼畜SM近親相姦漫画路線”をビュンビュン。手が付けられん。中でも異彩を放ってるのが、ぼいんとたかし。かつては『漫画エキサイト号』とかのエロ劇画誌に細々と描いてたベテランだが、昨今は単行本の売り上げ抜群とか。う−ん、ロクな世の中じゃねえ!!
 4月号は、題して「めぐみ濁り汁まみれ」。扉から発狂。頭の3倍以上ある巨乳の姉ちゃんが、目にガムテープ貼られ、フン縛られて角材の股くぐり。後ろから両乳を野郎につかまれ母乳がピュッ!! 腋毛もボーボー。いや〜、マニアはこれだけで抜けるんじゃ?
 特徴ある絵だ。トーンをほとんど使わず、描線とベタで処理。普通は『ガロ』っぽく、つまり芸術漫画風になるが、内容が内容。そんな気配はみじんもなく、怒涛の濡れ場へなだれ込む。巨乳のブルマー女に男が3人。輪姦だけじゃなく、シナイでぶったり突いたり。最後にゃ“人間肥溜め”に。
 フーッ……読後、神にすがりたくなる。町田ひらくやペンネームは無いといい、近頃はどうしてこうすさんだ漫画っきゃ売れない? (世の荒廃の反映と知りつつ、つい問い返したくなる)。町田には社会性という、一種の言い訳が用意されてるが、ペンネームは無いや、ぼいんとたかしに、一切それはない。ホント、文字通りの単なる興味本位のエロ漫画。で、現実にゃまず出来ない、反人道的行為のオンパレードだ。セルビア人も真っ青!!
 ペンネームは無いやぼいんとたかしの絵は、90年代中半までは毛嫌いされた。ぼいんとの嫌われ度たるや業界トップクラス。それがいつの間にかドル箱。不況は若者をより残酷にさせているのか?

「平とじ漫画誌事情」(’00/6)

 600ページで540円(『夢雅』)、430ページで540円(『MUJIN』)、370ページで490円(『ANGEL倶楽部』)、300ページで450円(『幻羅』)、280ページで550円(『東京H』)、350ページで880円(『ホットミルク』)。B5版平綴じエロ漫画誌の総ページと数と定価だが、一言でムチャクチャでござりまする。「読者を舐めとんのか!!」と絶叫したくなる。が、読者も馬鹿じゃない。端的に言うと最初の3誌が勝ち組。残り3誌は青息吐息。雑誌本体じゃ赤字で、単行本で補填してる状態だと思われる。
 ただ、黒字組にもバラツキがあり、『MUJIN』がダントツ、次いで『ANGEL倶楽部』、一番お徳用の『夢雅』は中身の薄さから、返品上はともかく、部数的に苦戦中(500ページで540円の『桜花』ってのもあるが、負け組の域とか。無修正度じゃナンバーワンだが、漫画家陣が弱すぎる。「ブス女のマンコなんざ見たかねえヨ!」ってとこ?)要は厚さじゃない。「厚いにこしたことはねえが、ブスキャラしか描けん三下エロ漫画家なんて要らねんだ!」飢えた読者の要求は単純かつストレート。その観点から各誌に一言づつコメント。
 『夢雅』→打倒!NTT電話帳路線にゃ敬意を表するが、中身が爺様の精液(超薄味)。白い絵の漫画家が多すぎるため、厚いわりに軽く感じる。小口側(雑誌の断裁部分)も真っ白。ベタと裁ち切りもっと増やせ。『MUJIN』→僕が同業者ならシットに狂う。ムカつくので次!『桜花』→グロイと言うか、バタ臭い表紙をなんとかしろ。70年代の300円台エロ劇画誌じゃねんだ。漫画家陣は『夢雅』より上質だが、一昔前のコミックハウス風。編集に一貫性も欠ける。『ANGEL倶楽部』→『MUJIN』にゃかなり離されてるが、要所は押えてる。大振りなタッチの絵が多いので迫力も。時に大味に感じられる面も。
 さて、赤字組。『幻羅』→『夢雅』より穴のないメンバーだが、いかんせん白過ぎ(表紙も)。高血圧覚悟で塩、ショーユをもっとぶち込まんと、コンビニ弁当慣れした若い連中にはね。『東京H』→ゼロの者を筆頭に、豪華ラインナップわりに売れない本として有名。版元の限界?  『ホットミルク』→誰が買ってんだか?編集も営業も投げてる感じが憎い(でも写植代は一番)。

「山村早紀」(’00/7)

 成年マークが付けられぬゆえ、修正がキツイ“腰抜けコンビニ系エロ漫画誌”(マーク付けると、コンビニが扱わない)の一誌、『レモンクラブ』に、ちょっと目を引く新人が。6月号で「家出むすめ」を描いている山村早紀だ。多分女性だろう。わずか12ページ。家出少女がメール友達の男の所に押しかけ、住まわせてもらう代わりに、奴隷になる都合のいい話(特に男は。“男根主義的だ?”あったりめえ。野郎向けオカズ雑誌なんだ。日常生活では、道義的にも物理的にも実行不可能な夢を実現させる―これぞあらゆるメディアの基本。すべての芸術の本質的一面だ)。
 野郎、観念的犯罪者としても三流らしく、奴隷への要求がセコイ。見えるポーズでオナニーしろだって。エロ漫画誌の読者水準に合わせたのかも知れんが、ウンコしたばかりの肛門舐めろとか、自分で屁して俺にかがせろとか、もっと前向きで健全な発想が出来んのか?(脱線失礼)
 しかし次第に興奮した様子。大股開きさせ、ハサミで上着をチョキチョキして、オッパイポロロン。お〜、ええぞう!!(ストリップ見てんじゃねえって)で、バスト部分のみが切られた黒い下着、ストッキングだけの下半身姿で、姉ちゃん手でお口を押えつつ、オナニー再スタート。フヌケ野郎にもやっと真人間の誇りが甦ったか、極太バイブをブスッ。ここまではパターンだが、挿入状態のままガムテープで固定。髪を引きずりフェラに持ち込むくだりの、ふたりを後方(つまり女の尻越しに)からとらえた構図はシブイ。
 一度抜くのかと思いきや、女を仰向けに。バイブを外し、マンコを臭いがキツそうな脂足でグリグリ。「あっあぁだめー!!」「お嬢さん 足の指でイッてる場合じゃないでしょ」とんでもないですね。女性の尊厳を根源的に踏みにじってる。許せない!!(でもチンチンがええ気持ちや!)子供にゃ絶対見せちゃいかん。
 “バイブをテープで固定”“マンコを足で踏みにじる”―この2点は、従来の女流漫画家がなかなか踏み切れなかったライン。山村譲は(男だったらどないしよ?)そこを、右手でタバコ吹かし、左手でパンティに手を突っ込み、陰毛ボリボリかきながら、ヒョイ!そんなムードが。アホな編集野郎が甘やかさねば、大物かも。

「童貞相手のロリ系とは根本的に異なる熟女漫画誌の狂気度」(’00/8)

 どんな性根の人間が編集し、いかなるタイプの読者が買うのか、つい考え込んじゃうのが『人妻熟女コミック』(B5判中とじ・日本出版社・定価360円)。いくら成年向け雑誌マーク付きだからって、こんな表紙のエロ漫画誌が、白昼堂々と売られていいの?(オヤジ世代の筆者さえ恥ずかしく、本屋の前で15分ウロウロ)。
 決断。レジに持ってこうと手にすると、精液でベトつく感じ。錯覚とわかってても、洗浄液で手が洗いたくなる。が、因果なことにこれも仕事。手洗いを済ませ、ページをめくる。巻頭がいきなり知る人ぞ知る、おがともよしの「実母調教部屋」。
 題名通りの、母と息子の近親相姦モノ。まず注目したいのが扉の母親。唇や眼の回りに小ジワ(ごていねいに首筋にまで、黒柳徹子風の縦ジワ)。熟女モノがポルノの一分野として認知されてるのは承知。けど、おぞましい。ここで常人(つまり筆者)は引く。が、中はもっと徹底。馬鹿息子、バイブやチンポ突っ込む前に母親に脱糞させ、「うええっくっせ〜〜っ!!」さすが「便所の紙」森喜朗が、総理大臣になる時代だ。
 続いて九紋竜の「兄嫁の放尿」。熟女モノ業界じゃ、ほとんど姿を消した汲み取り式便所が現役か?今度は兄貴の嫁さんを、目隠ししたその幼い息子とSM責め。子供の人権を何だと思ってんでしょう?(空想の産物だからいいのでしょうが、児童ポルノ法は3年後に見直され予定。自公保政権が続くと、漫画も対象となり、こんなギャグさえ摘発されるかも)。
 ハッキリ言って、もうこの2本を読んだだけで胸やけ。レバ刺しニンニクで、3人前食べたって感じ。が、まだまだ似たような話が続く。いしわた周一、小海隆夫、瀬木勝、宮崎ばく、小鈴ひろみ、阿宮美亜……。喰いっぱぐれ寸前だった中高年エロ劇画家に、当分野は一種の失業対策事業で、大歓迎のはず。けど、こんなもんいったい誰が読んでんだ!?
 で、読者欄をチェック(やらせじゃねぇだろな?)。年齢的には35歳以上。職業は運転手、職人、建築、営業マン関係が多い。予想通りすぎて拍子抜け。もうひとつの特徴は、既婚者および独身でも遊び人が多いこと。(風俗&Q2体験者も)。つまり、ロリ系漫画誌のように、童貞野郎を相手にしてるわけじゃないのだ。必然的「濃度」か。

「保守的なエロ本読者にアピールするには平均点ではダメ!!(’00/9)

 売れないのに新雑誌がポコポコ。失敗しても低コストゆえ、ダメージが少ない漫画誌の宿命とは言え、うんざりする数。廃刊誌もほぼ同数出てるので、“全体的に下降線を描きつつある中での誌数乱立”という、産業環境自体に変化はなさそう。
 『オルカ』(司書房)もそんな一誌。7月号で3号目。噂ではかなり苦戦とか。が、中身は悪くない。みやびつづるで当てた同社らしく、人妻7割、近親相姦2割、残り1割が一般エロという、素直な編集方針。巻頭カラー「待ち人来…」の香月りおは悪くない。
 今流行の、スミベタの多い劇画タッチの作風で(特に背景がいい。70年代の松森正さえ連想させる)、読み易い。若い後妻と発情息子がという、古典的パターン。後はどう見せるのかの問題だ。しかし作者は、「新たなるパターンを!!」と気張ることなく、裸エプロン、それプラス目隠し、最中の親父との電話と、先陣が開拓した黄金のパターンをボクトツになぞる。それがいい(『快楽天』や『MUJIN』じゃないんだ。こういう漫画家や雑誌の“分”は非常に大切)。ただ、濡れ場にももちっと景色入れろ。
 巻末でわずか8ページの「学校の備品」を描いてるBENNY’Sは、あるいは香月より伸びるかも。眼と眼の間にサッカー場が入りそうな、キャラ上の欠点はあるが(奥村チヨ好きにゃたまらんか?)、人物の描線がエロい。淫乱女教師と生徒との3P物だが、少したるんだ豊満な肉体に、むせかえるような色気が。ただよ、いくら何でも物差しなんぞ突っ込んじゃおまんこが…と思ったら、よく見りゃ試験管。トーンの貼り方が下手で、ちっとも丸みが出てない。ま、アシスタントも、ビールビンが自然に描けりゃ一人前と言うし、しがない8P漫画家は、この程度でも仕方ねえ?(香月りおのアシに手伝ってもらえば完璧!)。
 とまあ、なかなかのメンバーなのに(巻中の山井坂太郎もまあまあ)、何で売れんの?確かにこの他は、深田拓士を除くと「こ…これは…!?」なメンバーが何人もいるが、要所はキッチリ押さえてる。が、この“要所はキッチリ押えてる”程度じゃ、今は新規の物はつらいらしい。エロ本の読者は超保守的なのだ。それは、香月りおのストーリーづくりが、ワンパなのに受けることと通じている。

「スピーディなコマ割りと色っぽい描写が注目の九龍城砦!!」(’ 00/10)

 トップコンビニ、セブンイレブンには妙な雑誌が入ってる。『漫画シャワー』(一水社)『漫画ばんがいち』(コアマガジン)は筆頭。単なるエロ劇画誌&ロリ漫画誌は、セブンイレブンどころかファミリーマート、ローソンにさえ今はなかなか入れない。両誌がもぐり込んだのには前史が。『漫画シャワー』は4コマ誌、『漫画ばんがいち』はヤクザ漫画誌として出発した。その後に路線変更。もぐりとはいえ、立派な“セブン御用達エロ漫画誌”だ。
 さて『漫画ばんがいち』。正直なところ、見るたびにつまんなくなってる(『ホットミルク』も)。コンビニ誌ゆえ成年マークが付けられない。一方で都条例の指定は避けねば(指定されるとセブンを外されかねない)。当然、鬼畜系作品は載せられず、修正もきつくなる。種々の苦労があるのはわかるが、同誌のつまんなさの原因は他にないか?
 各漫画家の画風の変化のなさ。これが第一原因では?柔らかい描線の、ベタの少ない少女漫画タッチの作品ばかり。パラパラめくっての最初の印象だ。年々その傾向が強まってる。90年代半ばまでならまだしも、今はもっとシャープな線じゃないとチンポは立たんよ(退屈記事が多いのも誌面の無駄。昨今、『レモンクラブ』』『Mate』『夢雅』他、文字物が多い漫画誌にゃロクなもんがない)。
 9月号で「CAUTION→MOTION」を描いてる九龍城砦は、そんな中では救い。線が力強く、それでいて濡れててナイーブ(亡くなったアップルトンを連想)。無理矢理に預けられた、人型犬(!?)と少女のお粗末の一席。ワンちゃんの血筋ですから、当然匂いフェチ。靴や洗濯物、ソファなどをクンクンする描写は、コマ割りもスピーディーで、アングルも凝ってる(姉ちゃんのジーンズ短パン色っぽし。スソのめくれ描写も憎い)。
 で、当然彼(?)の鼻は、女のコの腋からオマンコ周辺へ(この下りでの、“ピクン”“ブルル”“ビクッ”と震える脚もそそる)。結局、人型犬と少女は一発かますが、犬野郎のチンポはどんな形かと期待したが、そこはやはりコンビニ雑誌。修正がきつくて皆目不明(続編を『ホットミルク』で描いてね)。
 不満も一つ。女の子の鼻の、鼻孔部分を略すな。かたせ湘も時々するが、キャラにアクが出て鼻白む、いや、マラしぼむ。もう一つ同誌に注文を。BBSの書き込み同様、長すぎる編集後記に面白いもんがあった試しなし。

「うさぎのたまごには奇妙奇天烈な色気と読者への配慮が」(’ 00/11)

 双葉社の『MEN’Sアクション』をパクった『MEN’Sドルフィン』(司書房)は、つまらんファンタジーエロで特徴を出してるつもりらしい。無駄な努力は中止、早く単なるエロ漫画誌に変身すべし(抽象的誌名なので、コンビニ展開も可能かと思いきや、成年マーク付き。うーん、残念!)。
 絵柄的に小振りなキャラが多く、ちまちま感は否めないが、中にはピリッとした味を出してる漫画家も。VOL・14で「公園授業」を描いてるうさぎのたまごは、奇妙奇天烈な色気が。コート姿の女教師が公園にポツリ一人(実は下はボンデージ姿)。そこに三人の教え子の男子が現れる。
 笑っちゃうのが、女教師はリアリズムタッチなのに、男子トリオが少女漫画風のギャグキャラである点。しかも、瞳に星が輝いてる。一番軽薄な奴が超巨根というのが憎い(チンポ描写は当然リアリズム)。
 男が複数だと、読む方はどのチンポに感情移入するか迷いがち。わずかでも、こういう工夫がなされてるとありがたい(結局、巨根野郎が一番いい乗りするのは、粗チン側の一人として悔しいが)。ただ、二番目の軽薄野郎がアヌス、体格の割に粗チンのメガネがフェラと、公平に女教師陵辱との配慮には、作者のリベラルな思考がうかがえ好感が持てる(適当なこと言ってんじゃねえ!)。
 しかも、当初の待ち合わせ場所には、ハゲ校長が深夜までポツンとの落ちまで。非常に親切なエロ漫画だ。後味もいい。わずか16Pじゃ可哀想。林マリオなんてトーシロに巻頭カラー任せる、編集部の姿勢が理解出来ない。他のメンバーでは、「Top of the TOWER」を連載してる、てぃるよしが圧倒的。同誌としては長めの20Pを描いてるが、もう4P増えても大丈夫。
 ただ、司書房系漫画誌の特徴と言っちゃえばそれまでだが、前出の林マリオといい、下手糞なのになると底なし。ましみゆき(アップで逃げんなカス!)、グッチ―ぐちょお(十六女十八女みてえなゴミパクるとは、志が低すぎる!)、ちかみずは(テメー、濡れ場の構図、他からトレースしてんのが見え見え!)と、軽いめまい。
 定価380円と、B5判中とじ漫画誌としては最高価格だが、この種の“漫画家もどき”を一掃しないと、明日は暗いかも。

「『桃姫』の前途は多難。でも木静謙二にはちょっと注目」(’00/12)

 出ましたね、辰巳出版グループ初のA5判平とじ漫画誌『桃姫』(富士美出版・定価530円)。刷り部数6万以上、返本2割台じゃないとペイしないといわれるこの形態。黒字誌は大『MUJIN』一誌のみなのに、類似誌が出ること(雑誌は赤でも単行本でとの思惑だろうが、幕下漫画家ばかりじゃ、狩野ハスミや山田タヒチは追撃出来ない)。
 『MUJIN』や『夢雅』に比べ、ページ数が少ないのにゃ目をつむるとして、たった4Pカラー描いてるだけの唯登詩樹を、表紙でいちばんでかくうたってるのは情けねえ。オナニーは虚名でいたすに非らず。腰が引けてる。創刊誌だからこそ、新人中心に勝負という覇気が欲しい。
 唯の次は琴義弓介。月に百枚は描けそう(関係はないが、エロ劇画全盛時代に、石井まさみなる時代物作家は、左手で釣り≪センズリに非らず≫しつつ、右手で仕事をこなし、月2百枚描いたという伝説が)。もっと背景描け。亜神和美、Sengoku-kun、ねりまよしと…ゲップ!“ヘビーなセミエロ劇画漫画”(今の主流)と“単に脂足臭い漫画”、混同しとらん?
 その思いの極まったのが、ぐんぱん(白井薫範)の名前を発見した際。確かにA5判中とじの、『ホットミルク』全盛時代の穴埋め漫画家として、懐かしくはあるが、何を今さら……。しのざき嶺とこの人、それに大噴火五郎の描いてるエロ漫画誌は、高頻度で廃刊になるのが常だったが、『桃姫』はいかに?
 が、とにかく、無人島にこれ一冊のみ持ち漂着したと仮定。どれが一番抜けるか検討を。ありました、1本だけ使えそうなのが。「Show Down」を描いてる木静謙二が一番フィット。やや劇画色が強すぎて、苦手な人も多いかも知れないが、登場人物の足がちゃんと地面に着いてる(重力を無視したエロ漫画は、今時受けまへん)。
 つまり、エロ描写が現実的で、観念的構図に逃げてない(描く側は逃げた方が楽。琴義弓介の構図の8割はそれで、童貞にゃ何が何だかわからない)。女性キャラにややクセが強いものの(たれ目、目と目の間があきすぎ等)、デッサン力のある人なので、かなりのレベルに行くのでは?名前と稿料のみハイレベルな連中は、早く粗大ゴミに出しちまえ。


          イラスト/小海隆夫