嫌われ者の記 (190回)


11月×日…『MESSI』1号目、最後の青焼きが図書印刷から。『ジェイド』時代に比べ、修正他が次第に雑に。凸版印刷系の同社、仕事が慣れるに従い甘くなるとの噂を聞いたが、確かに。

12月×日…『出版業界最底辺日記』は、発売が7月10日で、刊行後半年近くたつが、昨今やたら方々に書評が。『週刊現代』(立川談四楼)、『サンデー毎日』(佐高信)、永山薫の『エロマンガ・スタディーズ』の紹介ついでに、『朝日新聞』と『週刊SPA!』、南陀楼綾繁の『路上派遊書日記』ついでに、坂崎重盛(事務所、波乗社は栄昇ビルで漫画屋の上階)が、何と『公明新聞』で!(ガンジー、キング、イケダ、ショーコー、ヨシアキ♪)ダメ押しに、『おすすめ文庫王国』(本の雑誌社)で06年のベスト10末席に(チョイ前には岩波書店のPR誌、『図書』にも)。売りまくるチャンスだが、3刷り目の完成がトロく、神保町でもまず見ないマヌケさ(飯田橋は、警察病院並びの「文教堂」が、手製ポップを作って積んでくれてるが)。夕方、やくる〜とも5時で帰し(仕事がない。既にアンナは週2〜3日出勤で、今日は休み)、『新宿十』(森山大道・月曜社・本体1905円)をパラパラ。下手な文章が一切ないのがいい。「丸の内ピカデリー1」へ有楽町線で(JRの定期を使えば30円安い130円で行けるが、秋葉での乗り換えが面倒で)。『硫黄島からの手紙』(監督・クリント・イーストウッド)。平日の最終回なのに、8部の入り。主人公達に、北朝鮮拉致被害者の日本での姿を重ね観る(そりゃ、『父親たちの星条旗』だヨ。)

12月×日…暇なので、本来はまだ着手する必要のない、2月頭売りのいずみコミックス、『聖校章』(ペイントロボ)や、MUJIN COMICS、『快感中毒』(あとりK)の本文整理を(ネームの抜けや誤植チェック、ノンブル貼り他)。2人共、台割を自分で(編集にお任せの漫画家も多い。尾山泰永、鬼姫、真弓大介等)。昨今は前者の割合が増えた。悠社の姉ちゃんが原稿を取りに。ティーアイ系は同じく飯田橋の天龍社(ここの社長は凄く因業そう)。写植屋時代から常に出入りしていたDTP屋、公栄社と、『レモンクラブ』廃刊で、今月から全くの縁切れに。遠山企画に入って以来だから、33年間の“深い仲”だった(勿論、女房より古い)。写植時代は文字盤の多さで、他を圧倒した同社だが、DTP化以降は編集からすると、規模は無関係。やまだのらが電話を。再録用原稿を何本か出してくれないかと。「処女原稿(1回雑誌に掲載されたのみのモノ)は駄目だけど、再録済み分なら2〜3本出したる。今日、宅急便で送るヨ!」「すいません。助かりますぅ」今、ほとんどのエロ劇画家は、こんな調子で極貧生活を。昼飯後、「エリカ」で『消えゆく幻燈』(竹中郁・編集工房ノア’85)の残り読了。450ページ近いが、3分の1はカットすべき。最近、帰りの楽しみが一つ。前から月に何度か駅弁を食べてたが、東京駅構内の物には飽きが。で、「大丸」地下の食費売り場で買うように(同デパートが全館9時まで営業とは、最近まで知らず)。俺は。21時4分発の「あさま551号」軽井沢行きで帰る日が多い(週末は長野行きになる)。9時チョイ前に地下の弁当売り場へ行くと、3割引中。キツツキみたいなカッコしたおばさん達の、売込み口上がまた面白い。今夜は(株)グルメ杵屋の、「彩りおつまみ弁当」(定価1200円)。和風から洋風、中華まで、碁盤の目のような区分けにごちそうタップリ!!(カツサンドまで・)ビールが飲みたくなるが、禁酒日だし…。『映画が目にしみる』(小林信彦・文藝春秋・本体1905円)をずっと。彼の昨今の映画評は全く信用しないが、奇妙な事に“ボケた”以降も、昔の映画を語ると鋭い(まだらボケ?)。自室で『あ々決戦航空隊』(山下耕作・’74東映)。脚本(笠原和夫・野上龍雄)に期待してDVDを借りたが、不完全燃焼(“日本のビン・ラディン”こと、特攻の生みの親、大西瀧治郎の生涯。鶴田浩二主演)。

12月×日…いトうが、たまりにたまった自分のサイン本を、10数冊持参(丸1日つぶしたと)。2年位前のもあるし、当選者が引っ越して戻ってくるかもと心配したが、1冊も(漫画屋のいかにもな封筒のせいで、メール便配達がガメちゃう?)。月下冴喜が顔を。初めて。電話の声とは打って変わった明るい青年(声も。電話だと声がくぐもる人っている。)2月に、日本出版社から出る単行本の打ち合わせ(同社のアップルコミックスは、4月にもう1冊出て終了)。単行本化しないのに、コミックハウスが原稿返却してくれないと。そんなトコがまだ? いかのリング定食(600円)を、定食屋「まさみ」で食べてると、スピーカー音。『週刊金曜日』への右翼の抗議活動だ(前の通りを直進した左側に、入居するビルが)。神保町へ出るついでに見物。正心同志社、日本民族青年会議の2台の街宣車が。機動隊も20〜30人。石原慎太郎“公金豪遊親馬鹿”知事へは文句一つ言えない(後に一応報じたが、『赤旗』の受け売り)、“腰抜け『週刊新潮』の八つ当たり的『週刊金曜日』攻撃”で、各方面もいい迷惑だ(松崎菊也のインチキ振りが暴かれたのが、唯一の収穫か)。

12月×日…朝食前の30分の読書タイムで、『近松秋江全集 第十三巻』(八木書店)、書簡、初期作品、補遺編を読了。読み始めたの、何年前だろう?(下手の横好きとの評判の、時代小説の巻は飛ばす)上信線で『戦後民主化運動の発展』(たかせとよじ・甘楽農民新聞社’91)。書名は例によってイモだが、鋭い人間描写に加え、敗戦直後の甘楽、富岡地方の政治状況がリアルで興味深い。今も工場のある沖電気は、空襲で疎開して来たのだとか、吉田村では旧家の村長が共産党に入党したため、続くものが相次いだとか。ガリ版刷りの『甘楽農民新聞』も、何としてでも入手したい。『Mate』2月号、ケツの2折りをやっとこさ下版(2日後に本が出来てビックリ!!)。

12月×日…今も名目上の契約者である、栄昇ビルの元オーナー宅を、店子10名を代表して訪れる(俺が1番古いので。本当は2番目だが、ちょっと事情が…。今の総店子数は20余軒と)。既に実印も取り上げられ、お飾り状態らしい。要は三菱東京UFJ銀行による貸しはがしと(元々、三和銀行と取り引きが。UFJになったまでは良かったが、三菱との合併で切られたと。勿論、ちゃんと返済中だったのに)。娘さん宅に同居中の奥さん、やつれて本当に可哀想(大銀行はやくざと同じ!)。ただ、店子とも面談の機会を1度作ってくれと頼む。というのも、競売後も、平成16年4月以前の契約者(俺も)は、敷金を新大家に請求出来るが、それ以降の者は、旧大家に請求をとの法律の改悪があった。10人の中には今年入居した者もいるし、感情的にもつれると、大家さんがまた嫌な思いをする可能性があると。快諾をいただく(月末に5人の店子が訪れ、色々と話を。債権を持ったジーマックなる社や、そこが雇った管理会社、アースウィンドって、いいかげんなだけじゃなく、かなりうさん臭い)。長期戦は必至。団結して戦い抜くぞ〜〜っ!!

1月×日…初老夫婦のみの寂しい正月。元日の夕方、コミケ疲れの下の愚娘が顔を。既に昨年春からだが、基本的に2人だけの生活が、今後もズーッと続くのだ。ハーッ…。

1月×日…臨時便が出てるせいか、仕事始めの4日も、新幹線は混まない。安易かつ退屈な『本屋の眼』(平野義昌・みずのわ出版・本体1200円)を斜め読み後、『寝言サイズの断末魔』(松尾スズキ・扶桑社・本体1238円)に。スズキ本にハズレなし。早めの営業始めたのはいいが、例によって暇(今月からは、やくる〜とと2人のみ)。大口製版が年賀のタオルを。これも同社のみ(カレンダーは年末に、三共グラフィックが3本恵んでくれた)。年賀状もロクに来ないし、落ち目の実感をヒシヒシ。夕方、以前本誌コラム、「女を忘れろ!!」を連載してた、GUTSが怪獣サンダ並の不気味な姿を。ゴムマット兼用のカレンダーを2本くれる(一応、零細運送会社の2代目)。「これも今年で最後かも。扱ってた『新日本文学』は廃刊になるし、『早稲田文学』はフリーペーパーになっちゃうし…。社員も転職出来っこない、ヘンテコでイカれた奴ばかり残るし…」。延々とグチを並べてるので、「用が済んだらとっとと帰れ!!」「はい!ま…またいつかコラムでも…」「やなこった。シッ!シッ!!シッ!!!」新年から縁起でもねえ奴が。チッ! 塩でもまくか。

1月×日…一水社から、コンビニ隔月誌、『Hオフィス・裏事情』を出す事に。ホッ・(つづく)