嫌われ者の記 (192回)


4月×日…去年までマイウェイ出版の『漫画ピンクタイム』を孫請けしてた、遊民社の塙社長と市ヶ谷駅構内の喫茶店で。相変わらず調子のいい人で、いつの間にか桃園書房の隔月誌『特盛DVD人妻相姦Comic』を請ける事態に(再び孫請け)。「色々噂あるけど大丈夫! 俺が保証するヨ」暇だし、ゼイタク言ってられる身分じゃないが、コミックハウスの宮本社長なら、「前金なら!」と脚を組む場面。塙社長は日本映画学校出身。曙出版の岩尾社長も。同校、映画界だけではなく、エロ本業界へも多大な貢献を(『「エロ事師たち」より人類学入門』を撮った、今村昌平が創立者じゃ当然か)。事務所を18時40分頃に出る。東京駅19時20分発の「Maxたにがわ427号」に。これだと上信線の最寄り駅に21時過ぎに着く。かつては100%23時過ぎ着の最終だったが…(フーッ)。『ショート・サーキット』(佐伯一麦・講談社文芸文庫・本体1300円)の他、『FILM』『映画批評』を読了(佐伯はいい。今後の文学青年は、車谷長吉の焼き鳥屋、佐伯の電気工に倣い、マスコミ関係は極力避け、宅配便屋、焼肉屋、床屋、クリーニング屋等に照準を絞るべし)。


4月×日…新宿ゴールデン街のフリマに、カート一杯分の古本持参で、初参加(行きつけの「レカン」前で。参加料1000円)。平岡正明本、ブルース系CD、エログラフ誌、『奇譚クラブ』等がよくはけ、合計20300円の成績(エロ漫画はサッパリ…)。『ハムレット役者』(芥川比呂志・講談社文芸文庫・本体1400円)を斜め読みしながら、店番してたが、拙著やブログ読者もいた模様。南陀楼綾繁もチラリ顔を出し、平岡本を値切って1冊。仕方ないので、夜高円寺の古本居酒屋、「コクテイル」での奴のトークショーにも、風邪を押して参加。打ち上げの居酒屋で、喫煙者が多いせいもあり、せきが止まらなくなる。早々に事務所に戻る。小児ゼンソクだった幼少期、夜せきで眠れなくなり、蒲団をソファ状にして寝入った頃をふと(無理矢理飲まされた、生きてる鯉の肝の気持ち悪い感触も。水泳を始めて以来、こんなにせき込んだのは初めて。欲にかられて寒空で、物売りなんてするから!)。


4月×日…カワディMAXのいずみコミックス、『少女無惨』(5月末発売)、いトうのMUJIN COMICS『穴姦』(6月頃発売)、それに例の桃園の『特盛DVD人妻相姦Comic』も加わり、久々に多忙(印刷所は順に、城南グラビヤ、図書印刷、三共グラフィック。DTPは悠社、天龍社、三共グラフィック。三共は込みで請け、どっかのDTP業者に外注かと)。コミックスもまだ2冊目で、製版、印刷過程の知識ゼロのカワディのアホが、ネーム修正したいだ(何十ヵ所も!)、色校段階で原画に手を加えたいだ、種々の大ボケかまして物笑いの種に。三共は、桃園の全仕事の7割を引き受けてると。若い営業マンに、「一水社担当のKさん元気?」「もうバリバリで!」。ここ、仕事は雑だが、営業マンは明るくてシッカリ。印刷屋と言えば、お先真っ暗なエロ本業界にうまみはないと、大日本、凸版他の大手は逃げ出してると(図書は凸版系だが…)。桃園(司)も、かつては三晃印刷がメインだった(同社少数派労働組合の元委員長で、方向は違うが新幹線通勤仲間の、Kさん元気?)。


4月×日…朝の上信線で、『屋上がえり』(石田千・筑摩書房・本体1600円)。確かに才気溢れる人だが、本書で2冊目なのに、未だ真贋の判定不能(単細胞な俺らしくない)。熊谷の辺で読了、『混沌から創造へ』(武田泰淳・中公文庫‘81)に。佐々木基一、開高健他との対談集。こういう本、最近少ない(硬派本の間の繋ぎに最適)。『特盛DVD人妻相姦Comic』の、本文製版投げ。久々の成年マーク付き非コンビニ本。余り修正せず(塙社長は後で心配してたが…)。にしても、安倍ネオナチ内閣のマスコミ攻撃は目に余る。歴史カイザン主義者のボンクラ世襲総理と、革マル派と並ぶ日本屈指のカルト、池田教が組んだ結果だが、反撃できない朝日新聞社も情けねえ。痴漢も強姦魔もオレオレ詐欺も、1度弱みをみせるとしつこい。ましてや、相手は日本の最高権力者。検察も警察もパシリ(裁判所、NHKは藩屏)。ヤリマンと目されたマスコミに明日はない(お友達ネオナチ内閣にゃ、ゲッペルス気取りの菅総務相、ヒムラー真っ青の血塗られた死刑マニア、長勢法務大臣と、70年代東映京撮の大部屋以上の悪相がズラリ)。


4月×日…風邪も完治しないのに、また路上商売。春の千駄木「一箱古本市」だ(朝6時台の上信線で上京)。去年秋の売上は3万チョイ。今年の目標は4万!! 事務所で子供と待ち合わせ、2人でカートをゴロゴロ引き出撃(日当6000円で釣った)。ピーカンデー。凄い人出。が、秋に比べて冷かしが多い。結果は目標をチョイ欠く。38000円強。ゴールデン街と違い、CDやDVDはサッパリで、古本に関する本、写真集、硬い文学書が値段に関係なく人気(IQと年収が高目?)。色々な人が来てくれたが、『出版業界最底辺日記』のカバーデザイン担当の井上則人(若いのでビックリ!)、『記録』編集部の奥津裕美他、ゆっくり相手できずにスミマセン!(後者、旦那同道でムカつく)。驚いたのは昨年公開された邦画の佳作、『キャッチボール屋』の監督、大崎章の友人。俺は本作が「シネマテークたかさき」で公開直後に観て、漫画屋BBSの「下々の者へ」で、群馬出身の監督では、小栗康平、清水祟に比べ抜群の演出力とほめた。それを見た友人が本人に伝えたところチェック、「一番うれしい感想だった」と。実は今日も時間さえあれば訪れる予定だったと。う〜む。批評恐るべし。たった数行のほめ言葉を、ここまで曲解(?)してくれるとは。俺の場合、99%は悪口。つまり、数倍の傷付いてる俗物共がいるはず。ほめ言葉など一切忘れ、“非生産的な悪口のためのみの薄汚い日本語芸”に、更なる磨きをかけねば。


5月×日…矢島Indexに打ち合わせの電話。引越しのため、せっかく緊急時の連絡人になってもらったが、事情があって中止になった。すいませんと。漫画家は誰でも引越しで苦労。勤務先がないのでうさん臭さがられる。金銭が絡む保証人は無理だが、架空の勤務先、ないし緊急連絡人くらいならいつでも引き受ける。事務所で、『ほろよい旅の味』(田中小実昌・毎日新聞社‘88)読了。こーゆショーもない本、書く人と言うか、刊行してくれる版元も減った。帰りの新幹線で、『レッスン ジャズとロックの青春の日々』(中山康樹・講談社文庫・本体800円)に。うまいし楽しい本だが気に入らない。著者の権威好きと、図々しくて世渡りのうますぎる所が、安っぽいのだ。自室で『赤い矢』(監督・サミュエル・フラー・’57米)。WOWOWの録画。不器用な力作。


5月×日…栄昇ビル、敷金実質回収のため、漫画屋以外にも数件家賃をストップしてる店子が。先行する何軒かに、栄昇商事の弁護士から支払いをとの内容証明が届いたと。ヘンテコな話。昨年末に面会した栄昇商事の社長(女性)によれば、東日本銀行の口座も実印も、三菱東京UFJ銀行から債権を買った会社(関連企業だろう)に取り上げられ、何の権限もないと(けど表面上は人格者の彼女を立て、俺たちへの盾に)。弁護士費用など出せる状態じゃないので、銀行周辺のゴロツキ企業の手下だろう。俺んトコにも早く来ないかな。タコ多田からの電話にホッ・ 3号目は出ないと覚悟してた、『Hオフィス裏事情』がコンビニ側のお情けでゴーサイン。あわてて吉田昭夫(表紙)、内田こねり、ふじたじゅん、獅月しんら他に原稿依頼(コンビニは、発売1ヵ月前位でないと、扱いの可否を示さないので、対応が大変!)。おかげでここんトコ、9時までには帰宅できない(自宅での、本棚整理や古本いじりは楽しい)。栄昇ビルの店子間には、メーリングリストも。使えない避難口を修理させるなど、それぞれが色んな形で抵抗中で面白い(競売後に壊す予定の建物でも、家賃が支払われてる間は、修理せざるを得ない)。アースウィンドという所が今は管理してるが、同社の神田支店が太々しくも引っ越しは当社にとのビラを各ポストに入れ、全員の怒りに新たな火を注いだ。


5月×日…返品処理費用がかかりすぎるため、『本当にあった禁断愛』、次号からDVDはやめようとの話に。確かに。ウチでも処分する際はDVDだけわざわざ外し、燃えないゴミに。何百、何千ともなれば大変だ。(つづく)