嫌われ者の記 (196回)


12月×日…いトうが原稿持参。“しまむらファッション”で決めたカワディMAXほどではないが、どことなく汗臭い。「実は風呂がなく、共同便所のボロアパートでして…。昔は学生用の下宿だったとか」70年代の俺の学生時代にタイムスリップした感があるが、文京区千石で家賃3万円じゃ当然。「鬼姫さんも昔はそういうトコに住んでて、取り壊しで越したんですよ、風呂付に」とやくる〜と。年収からすると住居スワッピングすべきだが、「風呂は昔から嫌いで…」のいトうセンセ、移転の意思は皆無と。ますます貯金が増えそうでムカムカ。電脳相談役の尾山泰永に、ネットのADSL化の件で電話(まだ電話の呼び出し式。月に1万位だったので…。その程度の金の節約にも迫られてる)。夕方、『BUSTER COMIC』Vol.4、矢上健太朗の「Tなブルマ尻」のネーム指定。当人はボーっとした奴だが、おたく業界のトレンド追求には並々ならぬ熱意が(鬼姫はここら全く駄目)。その矢上のMUJIN COMICS、『蝕姦』の色校が図書出版より出稿。肌が赤いので、データを少し矢上本人にいじってもらおうと、ティーアイの増当センセと電話で打ち合わせ。帰りの新幹線で『食育のススメ』(黒岩比佐子・文春新書・本体850円)読了。ソツのない本。著者はアチコチの読書ブログに自著の名前が出ると、すかさず書き込みを。すぐ編集相手にフトン敷きたがるとの噂のあった、某女流ノンフィクションライターよりマシだが…。自室で『ワイルドライフ』(監督・青山真治・’97タキコーポレーション)をビデオで。不鮮明。DVDで見直そう(まあまあ)。

12月×日…年末の糞忙しい合間を縫い、目黒の東京地裁民事執行センターへ。12月14日より栄昇ビルの新所有者になった、(有)ハイサイド・テン(代表・瀬山剛)が法律事務所あすか所属の、國吉歩・山本雄祐両弁護士を使い、漫画屋ともう1社に社屋の引渡命令を同地裁から取った(裁判官・加藤聡)。1週間以内に執行抗告状(異議申し立て)出さないと、強制退去させられる可能性があるというので慌てて。地裁段階で棄却されると提出後1週間、高裁に送られても半月位で判明すると。所内の司法協会のコピー、何と1枚40〜45円!! 暇な職員が4〜5人もゴロゴロ。司法も社会保険庁と同類。引渡命令仲間と東横線学芸大学駅で別れ、『平林たい子毒婦小説集』(講談社文芸文庫・本体1400円)の続き。面白いが通俗で、評論類ほどの凄みはない。

1月×日…栄昇ビル問題で悶々とした正月休みをすごし(執行抗告状は自分で。何枚でもいいというので、A4の紙3枚にビッシリ)、4日から出勤。印刷所も製版所もDTP屋も休みだが、仕込みは出来るので週明けの7日からが楽に(業界31年の知恵)。やまだのらの『本当にあった禁断愛』の原稿が入稿。年末に2回描き直しを。1回目は突然ど下手なCGで上げて来たので(当然ペンに。CGデビュー組は別だが、ペンからCGに転向した漫画家のほとんどが、人気、単行本の売り上げを落とす)。2回目は“近親相姦エロ漫画誌”なのに、全くの別ネタだったので義父と嫁物にネームを強制変更(当然、依頼時にそういう打ち合せを)。新人、さどっこの『Mate』の原稿も入る。まだ勢いだけだがどっか新鮮。同居してた友人が、中国で日本語教師になるので、引っ越ししなければならないと(家賃が払えなくなる)。“しまむらファッション”のカワディMAXも姿を。何でも昨秋、稿料アップを約束したのに増えてないと。すっかり忘れてた。「次の稿料記載ノートからは絶対大丈夫!!」「ひどいですよ…。上がるはずだった分、出版社に代わって漫画屋が払ってくれるとかは…」「絶対に出来んっ!!でも本当に俺が悪かった。すまん。」「しょうがないですよねぇ」(泣き寝入り)こういう時は謝るに限る(口はタダ)。ただ、再録原稿に色をつけるとかは、したげないと気の毒(たったページ500円の涙金でこの修羅場。極貧編プロ&エロ漫画家らしい景色だ)。「珈琲美学」で『イングランド紀行(下)』(プリーストリー・岩波文庫・本体700円)読了。オーウェルとも違った味。小説も読まなきゃ。

1月×日…民事執行センターに一緒に行った、Gさんより電話。棄却されと。4階に行って判決文を見せてもらう(郵送)。さすがに引渡命令書は、“相手方は申立人に対し別紙物件目録記載の不動産を引き渡せ”のみ。「塩山さんトコはまだ?」「俺は年末の27日、Gさんは正月4日に提出したんだから、先に俺に来ても…」「高裁に送られたかも」「だといいんだけど…」(後に地裁に電話したトコ、1月7日に高裁に送付されたと判明。そこで棄却じゃ泣くヨ!)。窓辺の机でてっちゃんがトーン貼り。『BUSTER COMIC』のある日は恒例。最近俺も初めて行った、靖國神社の「遊蹴館」をネタに無駄話。てっちゃんは何度も行ってると。当然、阿宮美亜と並ぶ極右派。俺みたいなナイーブな“良心的左翼”の周りに、どうしてこう右翼ばかりが?(草1号こと小倉智充も)

1月×日…「京橋テアトル」(旧「メディアボックス」)で、2月公開予定の『裏切りの闇で眠れ』(監督・フレデリック・シェンデルフェール・’06仏)の試写。女性の人権無視と残酷描写が最高!!(フランス人は狂ってる?)すぐ裏の「酒蔵駒忠」でソーセージの盛り合わせにビール(清潔で感じ良くて安い店だが、喰い物は大味)。左手に『ギリギリデイズ』(松尾スズキ・文春文庫・本体524円)。充実。『ぴあ』大阪版で、「君が代」についての原稿の書き直しを命じられたと。立腹した松尾、最初の原稿をちゃんと本誌に掲載。偉い。文字に喰わしてもらってる人間はこうでなきゃ(修正後の方も乗せれば100点)。

1月×日…隔月誌『Hオフィス裏事情』、VOL.7もやっとこさ出る事に(毎号冷や汗)。いつ廃刊になっても青ざめないよう、『本当にあった禁断愛』の月間化を目指すか?(読者欄等、記事関連も充実させ)また東京三世社の編集が5〜6人辞めたとの噂。同社や日本出版社は本当に元気がない(両社共かつての大スポンサー)。内澤旬子姐御のブログで、『朝日新聞』で1月20日から始まる、島田雅彦の連載小説のさし絵を担当すると知る。凄い。姐御は本誌の超不人気連載で知られる、南陀楼綾繁の女房。『世界屠畜紀行』(解放出版社)のプチベストセラー化や、TBSの『情熱大陸』出演で、昨年後半から一挙にメジャー化した上にコレ。南陀楼は“窓際亭主”と呼ばれて久しいが、今後は“格差夫婦”と名付けよう。以下が格差の実態。南陀楼/連載誌→『Mate』『彷書月刊』他。持病→脂肪肝。年収→400万弱(推定)。内澤姐御/連載誌→『朝日新聞』『週刊現代』他。持病→乳ガン。年収→2500万強。(朝日のさし絵は1点5万以下はないとして推定)。去年までは山崎邦紀のピンク映画にまで出演してたのに、人は一気に化ける。栄昇ビル問題での店子のリーダー役、4階のシーエスリサーチの吉村氏より電話。競売決定後1年3ヶ月、各戸に呼びかけ、何回か集まりを持って来たが、全然反応のなかった、某店子の奥さんが突然訪れ(最初に全戸に集まりのメモを入れた)、「敷金はどうなるのか?」と問われ苦笑したと。昨年12月14日からの新所有者は敷金を返す義務はないし、以前のオーナーの栄昇商事には、そんな資金があろうはずはない。当然泣き寝入り。だから昨年から各店子は、敷金分を家賃の未払いで対抗、相殺してきた。自分の銭なのに気楽な人も。帰りはずっと『新編 みなかみ紀行』(若山牧水・岩波文庫・本体600円)。“読書の醍醐味ここにあり!!”の1冊。禁酒日なのに酒が飲みたくて、著者同様にアル中状態に。

1月×日…「ブックオフ」高崎貝沢店に久々に(上信バスで。かつては40分ほど高崎駅から歩いた。老化?)。「一誠堂」店頭並の厳しい値付けに、ほとんど買えず。DVD&CD館の、映画パンフのみは充実、単館系を中心に40冊程買う。バスで再び駅付近に戻り(190円)、「シネマテークたかさき」で『呉清源 極みの棋譜』(監督・田壮壮・’06中国)。田監督が愚作を撮るはずないが、主役の両手及び和服の着付けのだらしなさは、どうにかすべきだった。帰りの上信線で『どこか或る家』(高橋たか子・講談社文芸文庫・本体1500円)。図々しいだけの馬鹿女、としか思えない随筆集だが、小説は?(読んだコトなし)。馬鹿でも小説巧者はいるが、面白いとの噂は具眼の士方面から、1度も聞いた事がない。(つづく)