オマケ
「……で、一体何をしているんだ、お前達わ」
自分のPETの中の光景に、バレルは軽い眩暈を感じた。
無表情に自分の腕の中の少年を触りまくっている黒いナビと
カチコチになりながら、大人しく触られている青いナビ。
しかも青いナビは、黒いナビにすっぽり収まるくらい小柄で。
黒いナビの膝の上に座らされ、体中を触られているさまは。
とっても、とっても、犯罪チックだった。
「ロックマンに触れています」
「…いや、そりゃわかるから」
自分のパートナーである黒いナビ、カーネルの言にバレルはツッこんだ。
「バ、バレルさん!?」
バレルの登場に、ロックマンはワタワタとカーネルの腕から逃れようとする。そのふつーの反応に、何だか
とっても安心して――なごんでしまった。
ああ…この子はまともだ〜。
しかしカーネルは、ロックマンのその反応が理解できなかったらしく、その太い両手で羽交い絞めにする。
「カ、カーネル!?ちょっと、離してよ!ねえ!」
「何故だ」
「何故、って、バレルさんの前だよ!?」
「それがどうした」
通じてない、通じてないよ…。
「どうした、ってイヤに決まってるじゃない!恥ずかしいよ、離してよ、カーネル」
更に激しく暴れ始める腕の中のロックマンに、もともとなかったカーネルの表情が更になくなる。
おもむろに、ジーッと、バレルに翠の目を据えて。
一言。
「バレル…どこかへ行け」
言い放った。
俺のせいかよ!しかもさり気に命令形かよ!
むかっ腹が立ち。
「大体な、どれだけロックマンにくっついていれば気が済むんだ、お前は」
ナビだから、て羨ましすぎるぞ。自分がそんなことすりゃ、ヘタすりゃ警察呼ばれるんだからな、と
やっかみと八つ当たりを混ぜ込んで勢い任せで言い放つと。
むう、と少し考え込むような顔をして。それから、ロックマンの顔を見下ろし。
「この弾力が興味深い」
「抱き心地がよい」
「触れても触れても、飽きることはない」
「――癒される?」
淡々と、次々に言葉が続く。
余計なことは喋らないカーネルにしては、思いっきり、多言だった。
…て、天然かよ、こいつ…。
思わずPETを机の上に落とし、バレルは――『不死身』と呼ばれた司令官は、全力で脱力した。
そしてこの状況から逃げることの出来なかった哀れな少年は、
「やーめーてーそれ以上、口開かないでー」
と男の腕の中で半泣きになっていた。