ニホン伝統の大晦日(2006→2007)
年が変るまで、後2時間を切った。
新たな年の到来に、ある者は、書きかけの年賀状を必死にペンを走らせ、ある者は明日のお節
の仕上げに取り掛かり、ある者は、まだまだ終わらない部屋の汚部屋っぷりに頭を抱えていた。
そして順調に明日を迎える準備をした者は、
コタツにあたってのんびりとしていた。
それは、PETの中でも変らない。
青いPETの中で、オプション『冬の風物詩セット1・コタツ(オプションおミカンつき)』に
はいり、まったりしている、青いナビ。
「やっぱり冬はコタツだよね〜」
ふにゃら〜と幸せいっぱいの笑顔で、コタツ板になついているのは、このPETの住人、ロッ
クマン。
「うむ。私も初めて経験するが、なかなかよいものだな」
そんな幸せな子供に生真面目に同意するのは、黒いナビ。
ロックマンとは対照的なほどに、体格が違う彼が、コタツに足を突っ込んでいるさまは、少し
ばかり窮屈そうだ。
おまけに彼は、幅広の肩当と、マントを装備している。そのせいもあって、余計、狭ッ苦しい。
それでも彼は、淡々とオプション・おミカンに手を伸ばし、非対称な両手で器用に皮を剥いて
いく。
男の同意に、ロックマンの口元が、もっと嬉しそうに持ち上がる。
「そーでしょ、カーネル。やっぱり日本の冬、っていったら、おこたに、ミカンで、大晦日に
は紅白○合戦だよ」
二人の視線の先には、小さなTV。映っているのは、大晦日の風物詩・某国営放送の歌合戦番
組。この大晦日、ロックマンのPETにはカーネルが訪れていた。
ちなみに熱斗は、バレルと一緒にバレルの部屋でおこたに入り、同じ番組を見ながら年賀状を
書いている真っ最中だ。
ナビとしてはもうすることもない二人は、これ以上はないほど、のんびりしていた。
今年の紅白も、それぞれに見所(突っ込み)どころがあった。
某人気アイドルグループの一人が、別局で演じていたサルのコスチュームを着たり。
宇宙の平和を護る銀色の巨人達が、あまり関係のなさそうな演歌の大御所の一人のステージで
大漁旗を降ってみたり。
メンバーの入れ替わりが激しい女性アイドルグループの衣装が雪だるまみたいだったり。
幕間の応援合戦のようなステージに、メイドコスやら、ちょい悪親父やらが出てきたり。(し
かしちょい悪親父の一人は、どう見ても893だった)
この番組初視聴のカーネルが驚いたのは、毎年その衣装が話題となる男性歌手と女性歌手のス
テージだった。
出場順の関係で、男性歌手の方が先だったのだが。
「…なんだ、この衣装は」
ミカンを剥く手をそのままに、カーネルは呟いた。
「どこのRPGゲームのラスボスだ」
豪華絢爛な衣装のその歌手の前では、仮面のピエロが怪しい踊りを踊っていた。
そして彼に対する女性歌手のほうも、似たり寄ったりのド派手な衣装だった。
男性側が西洋ゴシックラスボスならば、女性側は中華風RPGのラスボス風。
「やっぱりカーネルもそう思う?いっつもこの二人の衣装、てこんな感じなんだよ?電飾いっ
ぱいでね〜」
二人が一番激しく突っ込み、熱斗が大笑いし、バレルが喜んだのは、白組のホスト風歌手のス
テージだった。
ノリのいいリズムに貸し、生き生きと踊るたくさんの男女のダンサー。
それが曲が進むうちに歌手が服を脱ぎ。
男性ダンサーが服を脱ぎ。
女性ダンサーも服を脱ぎ。
全員が下着一枚になって踊り狂うさまは、
まさにお祭り。
It's カーニバル。
だっておねーさんも下の下着しかつけてないようにしか見えなかったし。
バレルは、この部分だけでも録画しておけばよかった、と悔やんだ。
その後、しばらくしてアナウンサーが「女性ダンサーは胸出してませんでしたよ、ボディース
ーツ着てましたよ」フォローに、また、笑わせてもらった。
そうして二人でグダグダとミカンを食べているうちに、無事に歌合戦は終了した。
今年は、白組が勝った。
目が点になるステージがあったのに(合ったからか)圧勝だった。
「行く○来る○」の除夜の鐘が響く。
「あけましておめでとう ロックマン」
「明けましておめでとう カーネル」
デジタルが0:00になると同時に、二人はコタツから出て、ぺこりと丁寧にお辞儀をした。
今年も、良い年になりますように。