なのはなユニオンニュース

2023年3月30日 No.295







2023春来たり。アクション開始







なのはな春闘、頑張るぞー

コロナ禍で休止していた次世代交流会が久々に開催され、2023春闘要求を出している支部や個人、そして個別問題で会社と交渉中の仲間が集まった。







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 “一人春闘”を取組んでいるMさん(パート)。毎年、最低時給が上がる都度、少しづつ上がってきたので時給アップをこれまでの春闘では強く求めなかった。今年は正社員の賃金が上がったのに、パート時給は上がらないので、時給1500円を強く求める。昇給に連動する「評価」の項目がわかりにくく、上司によって基準が色々なので、評価基準の明確化を求める。



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 オリエンタルランドは従業員2万人。組合員の部署もバラバラで統一した要求をしぼりにくい。毎年、格差是正要求を出しているが、今年度は

(1) 労働災害からの復職の問題(100%治癒でないと復職不可。リハビリ勤務5日間のみ)、

(2) 「指導確認書」問題(「書かなくて良い」と2019年8月の交渉で公言したのに、同意を強制する面談や拒否すると早退命令)、

(3) ディズニールックの規制緩和、

(4) キャストの着替え手当の復活などを柱に交渉する。



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 会社は交渉を拒否しているが、富士そば労働組合が要求したことを会社は改善内容として改善を図っているので、拒否されても春闘要求を出していく。



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 高滝カントリーは今まで手当アップや会社が儲かったら従業員にも還元するという考えで一時金(昨年10万円)支給などあったが、今年は基本給アップを実現したい。また退職金規定がキャディは勤続14年が上限で、すでに16人中12人が頭打ち状態。事務職は勤続34年となっているので、この格差是正を図りたい。作業手当も客4人と客3人が同額なので、客4人の場合は1000円アップを求めたい。



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 60歳で定年解雇された。会社の制度は厚労省のQAの脱法行為である。この問題をしっかり取り組んでいきたい。





 労災認定されて休業。症状固定治癒が出たのでセカンドオピニオンを受けたり、産業医との面談など、職場復帰に向けた団体交渉を開催する準備を行っている。100%治癒でないと職場復帰できないというところに柔軟な対処を、復帰者へのサポートを、当事者を置き去りにしないでほしい、と思う。




 なのはなユニオンは賃金一律○○%要求などという要求の出し方にはなっていない。どちらかというと、各支部、各人にあった要求で春闘をたたかうというスタンスである。そういう取組みなので、華やかな春闘ではないが、毎年取組むことで、各支部、各人にとって一歩前進を勝ち取ってきている。ロイヤルは今年も15時半からの交渉は労働時間としてカウントされる。ロイヤルと高滝は春闘交渉の「議事録」確認も行われている。組合として大事な一歩が毎年の春闘で積みあがっている。2023春闘、要求の一歩前進をめざしてがんばろう! 久しぶりに活発に質疑応答が行われた。桜は散ったが、また交流を!




解決しました

 入社時「1日5時間×週4日間=週20時間、社会保険・雇用保険加入」で契約しました。入社直後に足を故障したりコロナ感染などで体調不良となり労働時間を減少。その後、2022年8月に会社から入社時の労働条件に戻すかどうかを確認された際、もどりたいと返答し、徐々にもどすとなりました。9月は1日2時間、10月は3時間、11月は4時間、12月は5時間になる予定でした。10月の面談でも12月から5時間働きたい旨を会社に伝え、11月には現場からも忙しいので入ってくれと頼まれて5時間働きました。ゆえに12月は5時間働けると思っていたら、「4.5時間」とのメールが送信され、12月の面談では4時間と言われました。社会保険・雇用保険に加入したいので入社時の労働条件で働きたいと交渉しました。1回の交渉で、本人が望む条件で働いて下さいとなりました。


解雇2

 保育補助として就労して来たK氏は、理事長から突然、「保育士の資格がないから3月末で退職」を通告されました。理由は保育園管轄の市の保育課に、保護者から「資格がない人が働いている。」とクレームが入り、市から理事長が呼び出されて注意を受けたとのことでした。本人が市に確認したところ、そういうクレームはなく、市が理事長を呼び出したこともないことがわかりました。

 三者(市と本人と理事長)の話合の場を市にお願いしたが、なかなか実現されず、そうこうしているうちに、同法人が経営している他の園への異動が提示されたので、即刻交渉を申し入れました。

 申し入れた途端に、理事長から組合からの要求「解雇の撤回、異動の撤回など」を全面的にのみ、本人にも謝罪するとの電話が入りました。組合は回答を確認するためにも団体交渉の場をもつことを提示し、第1回団体交渉が保育園内で行われました。理事長はその場で本人に謝罪すると同時に、解雇と異動を撤回し雇用継続することを明言。本人への謝罪文と「確認書」を交わして解決しました。

 風通しの良い職場作りをめざし、支部作りが進められています。


解雇3

 整形外科の個人病院で理学療法士の助手として週30時間働いてきたSさんに、院長が「1月いっぱいで退職届を出すように」と通告しました。解雇理由は同病院の医師であった方が別病院を開院した際、その病院の宣伝チラシに貴方の写真が掲載されていた。ということは別病院の開院に貴方も加担したということでした。

 Sさんは、自分の写真がチラシに掲載されたことも知らなかったし、この病院は賃金等はよいとは言えないが、職員同士の人間関係はよいので働き続けたいと組合に相談。組合が病院に交渉申入れをした途端、院長から怒鳴り声で「労基署もこの話し合いに応じる必要はないと言っている。」との電話が組合に連日入り、同趣旨で院長の妻からも電話が入りました。その度に「どこの労基署がそんなことを言ったのか」と問うても返答はなく、ただただ話し合いに応じないとの繰り返し。その間、Sさんは指定された解雇日をこえて普通に出勤し働き、院長から何も言われませんでした。

 やっと交渉に応じるとなった朝、やはり応じないとの返答。病院に抗議するために向かったが、入院している患者もいるため、抗議書はSさんが何かあったときに提出するということにしました。

 その後、何もなかったかのように、Sさんは同病院で働き続ける事ができています。




 3月6日 OLC第2回高裁Pic10

 3月6日オリエンタルランドに対しパワハラを問う2回目の高裁が行われました。多くの仲間の皆様に応援に駆けつけて頂き、本当にありがとうございます。

 組合に負けじと、オリエンタルランドも沢山の人を動員し、傍聴希望者も多かったため抽選となりました。
 裁判所前でアクションを行いました。自身の声でマイクで話す行動は数えきれない程行ってきました。しかし、何度マイクを持っても慣れる事はなく、散々会社から受けてきた被害を話す事は、パワハラ被害者にとって緊張と同時に当時のことがフラッシュバックし、想像以上に辛い行為です。手足が震え、声が震え、必死に踏ん張って立っています。

 そんな極度の緊張状態にも関わらず、オリエンタルランドとOFSの方々は容赦なく私達にカメラを向け写真を撮り、とても同じ従業員であるディズニーキャストに向けるとは思えない目でこちらを睨んでいる方が沢山いました。鴨委員長が「何故写真を撮るのですか? お止めください」と伝えたら、写真を撮る行為はおさまりましたが、今後パワハラを目撃した時は、是非その撮影力と眼力を活用し、再発防止に活用して頂きたいと思いつつ、本当に睨むべきものはパワハラという行為であると気付いてくれる日が来れば良いな、と思いました。

 裁判自体は判決期日の言い渡しのみで1分で終了したが、裁判所から和解を勧められ、別室にて協議しました。こちらからは円滑な復職、提訴を理由に不利益な扱いをしないなどを柱として和解の意思はあると伝え、被告からは持ち帰って検討するとの返答で和解期日が設けられ、この日は終了しました。

Pic11 後日、被告は和解ではなく判決での決着を望んだとのことで判決での決着が確定しました。判決日は6月28日15:30、101号法廷が決着のステージです。

 千葉地裁では安全配慮義務違反として勝利を勝ち取りましたが、残念ながら1個1個の行為はパワハラとしては認められませんでした。その曖昧な判決の中、高裁ではどのような判決が下されるか全く感触が掴めず、正直とても不安です。行為がパワハラとして新たに認められるのか? 一審判決が維持されるのか? 万が一覆されてしまったら? 毎日様々な不安が渦を巻いています。

 それでも、今私に出来ることは、88万円の支払い命令を勝ち取った結果に自信を持ち判決の日を迎えること、勝訴への報復とも思える最近の会社からの嫌がらせ行為にめげないことです。

 パワハラ問題は、昨今の大きな社会的問題であり、今回の裁判はオリエンタルランドの問題だけではなく、同じように苦しむ労働者にとって判決次第では大きな救いになります。

 引き続き、皆様のお力をお貸し頂けたら幸いです。

高裁裁決



2023春の厚生労働省交渉Pic12


 3月23日14時から全国ユニオン主催の春の厚生労働省交渉が行われた。

(1)フリーシフトだからということで休業手当の対象とならない問題、

(2)休業手当の計算方法が休業前3カ月の賃金を暦日数で割って算出した平均賃金の6割を就業日のみ支払うと定めている額だと、手取りでは4割ほどになってしまうので生活できない問題はコロナ禍以降、継続して交渉項目になっているが、進展なし。(2)については1949年に定められたことからして、当時は非正規という働き方もなかったし、年収200万円にもいかない非正規雇用で働く者が40%を超えるなど想定されなかったと思う。法律自体が現状に合っていないので法改正が求められる。

(3)労働法の保護の対象とならない働き方が増加し社会的問題となっていることについて労基署に迅速な対応を求めると同時に、判断基準を拡大し「労働者」とすることを求めた。


「高年齢者雇用安定法」の脱法的活用ではないのか
 当事者が参加し、以下の二つの案件を問題提起した。

[1案件] 60歳再雇用時の労働条件についてである。外資の会社で、雇用条件などは明確にされないで60歳からの雇用継続の意思確認が半年前に求められ、サインしないと辞めることを選択したとなる。

 継続にサインすると、60歳からの労働条件が提示されるが、各人によって週3日、週5日と違う条件が一方的に会社から提示される。週3日と言われたM氏が各人によって労働条件が違うことの理由説明を求めても、契約は新しいものなので説明する必要がないと言われ、会社が出した条件に同意しなければならないとなっている。この事例は再雇用にあたり、会社が再雇用者本人の意に反して任意で決定できることを就業規則に定めているが、再雇用者本人に再雇用を断念させるため労働時間数・時間、賃金を大幅に減少させるなどのやり方なのではないか、と問題提起。厚労省も「こういう事例は初めて」とのことで、内部で問題を共有するとなった。

[2案件] 「高年齢者雇用安定法Q&A Q1−5」に則って作られたという会社の制度は、57歳の時点で(A)60歳定年か、(B)58歳から65歳雇用のどちらかを選択するというもの。(A)を選択した者が60歳になって65歳まで働きたいと求めても働くことはできないとされたのは、なのはなユニオンの事例で、この会社のやり方は高齢法第9条「定年(65歳未満)の定めをしている事業主は措置(●定年の引上げ、●継続雇用制度、●当該定年の定めの廃止)を講じなければならない。」に反しないかを厚労省に問うた。厚労省は詳細が不明なので一概には言えないとした。この会社の制度だと、65歳までの雇用確保を求めた場合は58歳で退職金が精算され、賃金は65歳まで60%。60歳まで今まで通り働くを選択した場合は60歳で退職金が清算され、賃金は100%。60歳時点での差額は1000万円近くになる。ということは65歳までの雇用を確保するために1000万円ほどの不利益を受けることになる。このやり方がQ&Aに則って違法でないとしたら、会社は再雇用の開始年齢を55歳でも50歳でもよいということになる。Pic13

 このQ&Aは高齢者の雇用安定ではなく、会社に削減のやり方を教えているようなもので削除すべきではないか、等々。いずれも、高齢者雇用安定法の脱法行為が現場にあり、60歳以降の雇用安定の現実味がない。60歳以降の労働条件の調査をすることを厚労省に求めて交渉は終了。




3・27 舞浜アクションPic14

 3月27日、久々の舞浜アクションを行いました。今回はOLU支部長に対し付きまとい行為を行い、過呼吸を起こすほどの恐怖を与えた行為への謝罪、「指導確認書」への同意を拒否した組合員に面談を執拗に行い、それでも拒否すると「早退」さらには「懲戒処分」を命じた行為への抗議の行動でした。

 毎回、舞浜アクションは遠方からの仲間も多く、朝も早い中で15名が参加してくれました。各ユニオンから、今回の会社側の行為に対し、付きまとい行為は外で起こったら犯罪である。オリエンタルランド社内だからと許される行為ではない。この話を聞いた時はお腹の底から怒りが沸いた、と怒りの声が上がりました。

 以前と同じく8時30分からの舞浜アクションでしたが、コロナ禍以降、ディズニーリゾートの営業時間に変更があり、残念ながらキャストの出勤時間が以前と変わったようで、通勤キャストが以前より少ない印象でしたが、140枚用意したチラシは100枚程配布出来ました。

 OLU組合員の皆様、現在、キャストが多く舞浜駅を通行する時間が分かるならば情報を寄せて下さい。


3・21 さよなら原発Pic15

 代々木公園にて「さよなら原発全国集会」が4700名の参加で行われた。なのはなユニオンから5名が全国ユニオンの仲間らと一緒に参加。主催者挨拶で澤地久枝さんは、震災から12年。当たり前の日本人の声を無視し、岸田政権が原発を推進していることに反対を言うことに勇気はいらない、と訴えた。落合恵子さんは、亡くなった大江健三郎さんの言葉「3.5が動けば社会は変わる。自分の歩幅で歩いていく」を引用した。

 集会参加者が減っているが、何も良くなっていないという福島住民からの訴えは原発問題を風化させてはいけないことを突きつけた。

 集会後、高齢化がすすむ全国ユニオン参加者は短い方の渋谷コース1.3qをデモ行進した。




「2022/秋 中学校1年生総合学習最終日、一所懸命動きました まとめ」
By 金沢紀子

 総合学習テーマ「共生〜誰もが自分らしく生きられる社会を作る為に大切な事って何?」

(1)社会には様々な特性を持つ人がいることを知る。
(2)ある特性の人にとって、今の社会にはどんな生きづらさがあるのか、その原因は何なのかを理解する。
(3)どうすれば様々な特性を持つ人が暮らしやすい社会に近づくのか提案できる。


【私から社会的バリアがある為に不便な事の実例と動画・音楽・写真・体験を取り入れた90分授業】

1「障碍者自身の障害はその人の特徴です。背が高い人の特徴は背が高い。それと同じです。」

1「人を大切に出来ない人は物も大切に出来ない。物を大切に出来ない人は人も大切に出来ない。」

1「挨拶が出来る人になりましょう。謝れる人になると自然と有難うと言う事が出来る人になります。」

1「優しい気持ちを持ち続けてください。人を労わる気持ちを持ち続けてください。」

1「黙っているだけでは念力だけでは変わらないし誰もプレゼントしてくれません。環境は自分自身で創るものです。」

1「色々な事、直ぐに出来ない事が殆どなので、不安にならなくて大丈夫。前に進みたかったら小さな事からコツコツとです。」

1「自分の視野の境界線が世界の果てです。自分には何が見えていて何が見えていないのだろう? それに対しては自覚的であってください。」


【生徒より感想文 金沢さんへ】(参加生徒の内、数名を抜粋。ひらがな等漢字変換して記載しています)

n お話を聞いて車いすのイメージがガラッと変わりました。今すぐ出来る気遣いや対応の仕方などを教えて貰ったので相手の事を察して行動できる人になりたいと思います。

n これまで障がいについて調べてきたのですが、ネットで調べても出てこない当事者にしか分からない事を色々と知る事が出来ました。これからは障がいを持っている人に攻撃的に接しず、優しく接しようと思いました。

n 普段車いすの方と交流する機会が無くて、あまり車いすに関心が無かったのですが、今日話を聞いて私たちは普通に当たり前のように生活していたけれど、それが車いすの方にとっては不便で使いづらいという事を初めて知りました。更に、実際に車いすや松葉づえ等の道具を使って、車いすを使っている人の視点で考えてみると沢山の課題を見つける事が出来ました。今日、経験した事を生かして「私の目線では無くてもっと色々な視点で考えて生活していこう」と思います。

n 私は車いすに乗っている人は悲しそうなだけだと思っていたけど、助けられるだけではない事がわかりました。更に自分の人生を楽しむ為にアヒルやライト・車いすの上げ下げやジュース置場等、車いすの工夫が凄いと思いました。今日は車いすに乗っている人のイメージを変えてくれてありがとうございました。

n 車いすの不便なところ・便利な事がわかりました。金沢さんは社会の出来ていないバリアフリーをしっかりと注意して自分が生きづらい場所を生きやすい場所に変えて、更に、社会を良くしようとしてくれました。とても勇気がいる事を出来ていて尊敬します。どんなに生きづらくてもそこを生きやすいようにするのが凄いと思いました。

n 実際の体験をもとに丁寧に話してくれてとても分かりやすかったです。金沢さんはただ自分の思う事を言うだけではなく、行動に移せる事が凄いと思いました。パワーポイントでまとめてみます。

n 今日のお話を聞いて、車いすや松葉づえの危険性などを学びました。そして少しの気遣いで変わってくると聞いたのでこれからも「共生」という事を考えていきたいと思います。
「木を植えた男(作ジャン・ジオノ)」を紹介して、最後に平井堅の「桔梗が丘」を聞いてもらいました。

 先生も生徒さんもみんな有難うございました。もっともっと私も勉強します。





☆☆おしらせ☆☆

2023年


 4月 8日(土)18:00
なのはなユニオン執行委員会

 4月29日(土)
連合メーデー

 5月 1日(月)
全国ユニオンメーデー
※集合時間・場所などは別途お知らせ

 5月 3日(水)13:00
2023憲法大集会 有明防災公演
※集合時間・場所は別途お知らせ

 5月 8日(月)18:00
ちばキャラバン実行委員会

 5月27日(土)18:00
なのはなユニオン執行委員会

 6月 3日(土)
ちばキャラバン
※日程は別途お知らせ





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なのはなトーク
 なのはなユニオンの事務所にいると、労働相談の電話がかかってきます。雇止めやパワハラ、有無を言わさない転勤辞令などなど。相談を受ける中で、この会社の倫理観はどうなっているんだと思う事があります。その会社に問題があることはもちろんなのですが、しかしこれは、突き詰めれば日本全体の仕組みの問題で、政府の過剰な新自由主義的な政策が、経営者に倫理観を失わせているのではないかと思います。

 現状を変えるには、どうするか。社会がそれを許さないという雰囲気をつくることと、具体的に仕組みを変えていくことが必要ではないかと思います。企業倫理を考えた時に思い出されるのが、来年から新1万円札の顔になる事業家の渋沢栄一氏。日本資本主義の父と呼ばれますが、経済道徳や経営倫理を重視した社会起業家でもありました。彼が生涯、労働相談の自身の経営哲学の土台としたのが孔子の「論語」でした。著書「論語と算盤(そろばん)」では、「論語と算盤(そろばん)とは一致すべきもの」、つまり企業は利潤を追求しつつ、その実践には道徳心を伴わなければならないと著しています。今後、教育の場でも渋沢氏について語られることが増え、その理念が日本の社会に根付いていくことを期待します。

 そして、その道徳を実現させるためにはどうするか。

 具体的な方法としては、中小企業においても自社の経営指標を従業員に開示することを義務化してはどうかと思います。現在、中小企業においては、会社が開示する情報は限られており、従業員が自社の決算書を閲覧する権限もありません。公告を見ても貸借対照表だけで、損益計算書の内容まではわからないようになっています。それをいいことに、経営者は家族などへ役員報酬をたっぷり払って、「節税対策」「資産価値がある」といって自分で乗り回す高級車を社用車扱いにして、最後に残った資金から給料を払う。そして従業員には、貸借対照表のみを見せ、「会社は今、これだけの儲けしかないから、給料は上げられない」と言う。政府がコロナ禍で行ったバラマキも、経営者の懐や運転資金に消えてしまった。そんなことが実際に起きている。海外では労働者に正当な賃金を払うのは経営者の当たり前の仕事ですが、日本ではその「正当な賃金」を決めているのは中小企業経営者になってしまっている。日本の労働生産性の低さ、賃金の低さ、格差の広がりはこれが原因ではないかと思う。

 そこで、経営指標を従業員に開示する方法を段階的にとらせる。それによって透明性を高め、さらには生産性を向上させ、従業員の賃金も正当化させる。経営者側は当然反対するでしょうが、そのルールが実現されれば、企業、そして日本経済の実態が可視化され、労働環境は大きく改善できるのではないかと考えます。

 世の中を良くしていくには、ひとりひとりが政治や社会への関心を持ち続けることが肝心であると思います。私自身、過去の政治への無関心や不勉強を反省しつつ、今後もユニオンでの活動を続けていきたいと思います。
(佐藤)

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