『ポスト青年期の出現にみる日本の若者の実態』

千葉大学教育学部教授 宮本みち子
平成15年度の「青少年問題研究会」の講演を内閣府がまとめた報告書から抜粋

○20代未婚者の実態調査では、7割が親と同居し、お金を家計に入れず、しかも家庭の中でほとんど役割を持っておらず、一方的にサービスを受ける人になっている。同居している限り生活状態は非常にいいので、晩婚化を支える生活形態が親との同居であり、それが晩婚化と出生率低下の重要なポイントと言われるようになった。

○青年期と成人期の間に、明らかに新しい一つの時期が登場。青年期の延長にように見えるのでポスト青年期と名付けた。大人になるための移行期間が長くなり、それが一つの新しいテーマとして登場。

○日本の移行期の一つの重要な特徴は、晩婚、非婚化と、それに伴う急激な出生率の低下という問題。

○90年代末に起こった移行期の異変は就職問題。一つは就職難、もう一つは、就職をしたがらないという意識と行動様式の問題。

○今の20代の人たちは、非正規雇用が3割。10年前はほとんどが正規雇用だった。10年前の20代の人たちは、親の経済力が非常に高かった。だからこそ、パラサイトシングルという名称が登場した。今の20代の未婚者は親の経済力がかなり弱くなっており、しかも本人が非正規雇用で、離転職が一般化した状態。親の家でぬくぬく同居というよりも、親の家を出ることができないという状況のほうが近い。

○EU諸国では、若者の成人期への移行パターンをヨーヨー型のトランジションと表現した。成人期への経路が、おもちゃのヨーヨーのように、学校、仕事、訓練、結婚などを行ったり来たり繰り返す様をあらわしている。様々な移行のためのイベントが、今までのような順序を踏んで前へ進むという移行のプロセスをたどらなくなっていく。

○先進国全体として、大人になる時期が長くなり、離婚も一般化していく社会では、実の親子関係というものが非常に重要なきずなとなってきている。だからこそ公的な支援体制が弱体化すればするだけ、親子間で行われる私的な援助関係によって階層間の格差が拡大。

○日本は、若者の危機が見えにくい社会。親頼みと会社頼みで一人前にしてきた社会なので、パラサイトシングルが増え、その人々が30歳とか40歳に達していても、そのことがどういう問題なのかがなかなか見えにくい。結局、日本では、親の責任と経済力で、長くなる移行期を乗り切っていく社会となっている。

○現代の若者世代に起こっていることを、教育問題とか労働問題とか、非行問題とかカルチャー問題として、別個に扱うのではなく、青年期から成人期への移行の途上で直面している問題と整理すると、実は非常にすっきり整理できる。ヨーヨー型の移行をする世代に対して、そのスムーズな移行のためにどのような社会的なシステムをつくっていけばいいのかという問題としてとらえるべき。

○青年期のゴールは、彼らがそれぞれが独り立ちして、自分の人生というものを自分で自己コントロールできること。青年期から成人期への目標は自立。

○青年をきちんと一人前の社会のメンバーとして位置づけるべきだという認識が必要。

○底辺に沈殿する若者たちを、社会から排除された状態に留めないためにどうしたらいいのかという発想が必要。

○スウェーデンには明確な総合的青年政策があり、青年政策のトータルな体系の中に雇用政策もある。雇用を含めて、結局重要な問題は若者の自立を社会は保障しなければならない。仕事に就けないということは自立をそぐ最大の問題だから、当然雇用というのは国を挙げて取り組まなければならないというので、青年の問題が単に雇用問題に限定されていなかった。@若者の自立、A若者の社会のおける影響力の行使、B社会にとっての資源として若者を位置づける。という三つの柱で成り立っている。