実写版涼中

走り屋の涼介さんと中里さんが
実写映画に出ているという設定です♪
この作品の前シリーズはBWのサイトにてお楽しみくださいv






小説
杵島毅一様

 COME BACK! チョコレート 







ちょうど駐車場へ戻り、車の熱を冷まそうと降りたった時に響いた着メロだった。

涼介にとって夜の赤城でFCを走らせている時は何よりの息抜きで、例え用のある奴からの電話であろうとあまり邪魔されたくはない。

しかし涼介は画面に出た名前に一もニもなく応じる。日曜の夜更け、こんな時間に珍しい中里からの電話だった。

『涼介、そっちは何時に終わる?』
「今夜?明日は月曜だし、あんまり遅くまで走るつもりはなかったが」
『そうか。そりゃ都合がいい。明日も大学行くんだろ?こんな日曜の夜に悪いが、そっちが引けたら秋名によれねぇか』
「もちろん」

中里の側から合おうと誘われることは少ない。それにも増して、こんなに急に夜の呼び出しと言うのは今までになかったことだ。

別段中里の声が元気ないとか、何か切羽詰った感じがすると言う訳ではないのだが、嬉しい反面何かあったのだろうかと心配にさえなってくる。

「何かあったのか?」
『別に。時間はとらせねぇつもりだが、やっぱ迷惑なら・・』
「中里からの誘いならいつだって迷惑なんて感じるものか」

電話の向こうから困ったような、照れたような中里の気配。携帯電話越しのそれを感じられるのも恋人となった自分ならではだろう。

『じゃあ待ってる』
「ああ。なるべく早くに向かう」

そう言うと電話は切れた。中里との約束が出来た涼介がいつまでも赤城に残るはずが無い。

「今日はもう解散するぞ!」

一言だけ言い置いて涼介はさっさとFCへと乗り込み赤城を下っていくのだった。











主だったチームのない秋名山には、日曜の今夜すでに走り屋の車は残っていないようだった。

ダウンヒルバトルのスタート地点に車を止め、妙義からやってくる分当然時間のかかる中里を楽しみに待った。

映画の撮影時には毎晩のように通った峠。しかし今は中里と逢瀬を重ねる時くらいにしか走ることは無くなった。

ここに立つといつも思い出すのは中里のことばかり。
撮影の時も口にはしないが翌日の会社のことを何より心配していたはず。そんな中里が自ら日曜の深夜に合おうと呼び出す用事とはなんだろう。

放射冷却か。

見上げる空は満天の星。こんな雲ひとつ無い夜には地表の熱が宇宙へ放射されるのを遮るものがなく、結果として気温が下がるのだと言う。その漆黒の宙に輝く星達が中里の瞳みたいだと、涼介は彼らしいことを思い笑った。

静かな夜の峠は近づいてくる車のエキゾーストをかなり遠くからでも聞く事が出来る。涼介は天の星から地上の星を見つめるべくアスファルトの闇へ目を凝らした。






「待たせたか」
「いや、お前が妙義からかかる時間くらいわかってたからな」

だから勝手に待っていただけ。中里が車を降りてくる前に、涼介はその運転席側に回って微笑む。

「お前からの急な呼び出しなんて、驚いたぜ」
「悪かったな。こんな平日前に」
「気にするなって言ったろ?俺はお前に会えるなら毎晩でも嬉しいんだぜ」

にこにこした涼介は本当にそう思っているようで、中里はちょっと照れる。
それだけ思われる価値が果たして自分にあるのだろうかと。

「それよりお前の方こそ明日会社だってのに」

すると中里は車を降りながら、何かを手にしてきた。それを涼介の前に突き出す。

言葉はなかったがそれは確かに贈り物用のラッピングがされたもので、金のシールにはSt、Valentine’s Dayの文字。

「――まさか、これを渡すために?」

滅多なことでは驚きを表に出さない涼介の顔にこの時ばかりはありありと驚きが浮かぶ。

「日付け、変わったぜ。今日はバレンタインだろ。お前ってこういうの、絶対俺から欲しいとか思ってそうだし、どうせやるなら義理でも他のヤツラからの受け取る前にやっちまいたかったし・・」
「中里・・・」

こんなに嬉しいバレンタインを、今まで受け取った事が無い。

「嬉しいぜ」

涼介はラッピングされた小箱を手にしたまま、目の前の中里を抱き寄せた。
中里も照れながら拒否はしない。
抱き寄せた涼介はすぐ中里の唇を求め、いつもは外では照れてなかなかさせないはずの中里も受け入れた。あたりに車一台いない事はもちろんだが、日曜深夜という曜日から、通り過ぎる車も走り屋も来ないと思えたからだろう。


「――ん・・ん・・」
しかし。

「ん、んん・・っ」

キスが終わらない。
いくら誰も来ないだろう時間と場所とは言え、さすがに屋外でのキスは中里を緊張させる。
それなのに涼介のキスは燃え上がる一方でまったく収める気がないようだった。

それはまるで情事の開始の時のような・・・

「・・・!!」

ような、ではない。涼介はその気なのだと思い当たった。

逃げられないように腰に回した手ががっちりと細い腰を押さえ込んでいる。よろりとよろめいた時、背中に固いRのルーフが当たった。
押し付けられてしまっては逃げようにも動きがだいぶ制限されてしまう。

「―――っ、りょう・・!」

服ごしに、涼介の手が股間へ伸びてきた。
びくりと体が緊張に固くなり、中里の背に汗が滲む。何も言わせぬとばかり、涼介はしつこく唇を追ってきて、気付くと腰に涼介の固い物が押し付けられていた。具体的な涼介の求めを知ってカッと体が熱くなる。






涼介はいつもと同じ手管で中里の体を解していったが、外と言う事もあっていつもなら反応を始める中里の物はなかなか反応を見せない。

やがてズボン越しの愛撫に焦れて、涼介は手を差し入れてきた。直にそこを扱われ、流石に中里のものが膨らみ始める。

「――やめろ、こんな屋外でなに考えてんだっ」

激しく抵抗する腕をなんなく抑えられてしまうのは体格差か。
同じくらいの身長、体格かとおもいきや、普段細身に見える涼介の体が実は以外に筋肉がついているのを中里は知っている。

対する自分の体は男としてコンプレックスを感じる程に細いのだ。
食ってないわけじゃない、鍛えないわけじゃないのだが、遺伝によるものだとしてどうしても・・・。
それがこんな時、やすやすと涼介の行為を許してしまう結果になる。

涼介がくるりと中里の体を反転させた。愛車に押し付けられるような姿勢でズボンを引き降ろされ、外気の冷たさに肌が粟立つ。
涼介も気温のことは頭にあるだろう。最低限の肌の露出で済むような衣服の乱し方は、中里にますます強姦されているかのような錯覚を産んだ。

「や・・めろっ・・涼介っ!!」

よほど我慢が出来ないのか、そこへ突きつけられた涼介の物からは既に先走りが漏れていたようだ。それを直接固く乾いた門へ擦りつけ、涼介は侵入の時を伺う。

「―――涼介・・ッ!!」
中里の必死の思いは伝わらなかった。








立ったまま勢いに任せた性交が済むと、ようやく涼介がその身を離した。
泣きたくなるほどの悔しさを飲み込んで、中里は下げられたズボンを引き上げる。まだよろめく体をRに預けたまま、中里は涼介の熱い体温よりも車の冷たさの方に安堵を感じていた。

「中里・・」

いつもの行為の後と変わらず、涼介は優しく肩を抱いてくる。しかし今の中里にはその気持ちを受け止める気はさらさら無かった。

「・・お前が喜ぶと思ってこうしてチョコなんか渡しに来たのに・・。こんな酷ぇことしやがって・・」
「すまない中里。でもあんまり嬉しくてお前が愛しすぎて抑えが効かなかった」
もちろんそんな言葉くらいで中里の気がすむはずがない。
「でも、たまにはヨかったろ?中里もけっこう感じてくれてたみたいだし・・」
「!!」
その一言が完璧な爆弾だった。

中里はRのルーフに置き去りにされたプレゼントをさっと手を伸ばして掴み取る。

「このチョコレートは無かったことにさせてもらうぜ。――お前なんか、絶交だ!」

奇しくもそこはGTRの運転席側。
中里はひらりとドアを開け乗り込むと問答無用とドアを閉めた。

「中里!」

ドアを開けようとする涼介の動きなんて読めたもの。
内からロックすると素早くエンジンを始動させたが、逃げる意図を察した涼介が素早く前へ立ちふさがった。

ギャアァッ!!しかし中里は急バック。そのまま距離を取ると勢いよくスピンターンして遠ざかってく。

慌てた涼介がFCに飛び乗り後を追ったが、中里の自宅へたどり着く前に追いつくことはどうしても出来なかったと言う。


後になってどうにか宥めて絶交宣言を取り消させる事が出来た涼介だったが、結局、チョコは取り上げられたまま。


おしまい。






わあああ!可愛いお話ありがとうございます!!
中里さんの可愛さに愛が暴走してしまった涼介には罪は無いです!(笑)
チョコの行方はいったい〜
チョコもらえなくて、毎晩ジタジタしているであろう涼介さんを思うと
ニヤニヤが止まらないです!!くは〜vvv
また可愛い中里さんをよろしく御願いいたしますvvv
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