小説 『ヒステリックアワー』
一緒に朝を迎えると中里の機嫌が幾分悪い様に感じるのは何時もの事だったが、今日は又格別に不機嫌そうだ。 ナビに座りながらも窓を睨み付けたままこちらをちらりと見ようともしない中里を苦い表情で見遣り、啓介はへらりと笑った。 「あー…ゴメン‥、な…?」
「でも、だって、お前も乗り気みたいだった‥から、だから…」 そうだ。そうなのだ。二人きりのカラオケを楽しんで、帰るのが面倒だからこのまま秋名のハチロクの様子でも見に行こうという話になって、当然まだまだ人気も疎らな秋名湖の駐車場に車を止めて。 と云うか寧ろ舌を絡めてきたのは中里の方が先だったから、啓介は今現在の中里の態度が腐に落ちないのだ。 『なぁ。一回だけ。‥な、いいか?』 上擦った声で誘いをかける啓介に、中里は自ら舌を絡めてきた。あれが了解の合図でなくて何だと云うのだ。
『なぁ、気持ちイイ…?』 執拗に責め立ててくる啓介に少しでも早く達して貰いたくて、中里は自分の内にあるソレを締め付ける様に入り口を蠢かせる。 『ん、ァ…!』
‥が。 尚も中里の唐突な抵抗は治まらない。 …。
しかし急降下した中里の機嫌の要因は全く別の処にあった。 (結局お前は相手が俺じゃなくてもいいんだよな…)
今は、人の動向に妙に聡い隣の男を振り返りたくない。多分、間違いなくあのだらしない表情をしてこちらを見ているに違いないのだ。それを見て情けない気持ちにさせられるのも、更にはそれで この男を浮上させるのも分かり切った事であり、中里はそれらが許せない。
啓介はナビで赤面している男を眺めて頬を緩めた。 (間違いなく臍曲げるだろうけど) 憤慨しながらも染められた頬の理由は別に在るという不器用なその表情を思い浮かべ、啓介は口の端を再び緩やかに上げた。 end. |
ぎゃああ!嫉妬する中里さんがあまりにも可愛くて!!
啓介の失言は仕方ありませんが(笑)
中里さんの失言は可愛すぎでしにそうです〜vvv
車の中で盛り上がってる最中にハッと我に返る中里さんの
切ない感じがたまらないですvvv
素敵なお話ありがとうございました!!
また宜しく御願いいたしますvvv
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