小説　櫻太郎　様

うっとおしいと思われる男の項目よりvvv

慎吾×毅
『うっとおしい男』

「なぁなぁオレの事好き？」

もう何度目かも分からない問いかけ。
正直言ってウザい。

現在の関係になる前も何かと面倒な男だったが、それとはまた別の意味で、しかも度を越す程に面倒くさい。

それも度々。チームを組んでいる都合上、それなりに人も集まる峠に来れば幾らかは控えてくれるだろうと期待したのが甘かったのか。

そんな感情が溜め息となって表現されてしまったらしく、更に『何だよどこ見てんだよ、アイツか？あの男か？この淫乱が！』と罵られた。本当に面倒くさい。

いい加減解放されたいと思っていた所に助け舟（この後の事を考えるとそうとも言いきれないが）、携帯の呼び出し音が鳴った。

「誰？オレが知ってるヤツ？」

ほらきた。これだ。
まだメンバーが数人残っているというのも気にならないのか、俺の腰を抱き寄せながら覗きこんでくる慎吾に対して今日二度目の溜め息は不可抗力だよな？

改めて面倒だと思いながらも『悪い、飲み会だとよ、会社の付き合いだ。場所は会社の近くだそうだ』と答えてやる。

相手・場所まで伝えるのが癖になってしまったのも、“いつ”“誰と”“どこで”等細部まで答えなければ納得しないコイツの所為だ。

だが、そうして納得して送り出されたにも関わらず、1時間後には30分おきにメールが届く様になるのも常々の事で、『まだ飲んでんのか？』『帰りは何時？』とか、もうウンザリだ。

結局、金曜日だという事も相俟って盛り上がった飲み会がお開きになったのは日付も変わって半日近く経ってからで、
さすがに疲れたからと慎吾と約束していた（させられていた？）映画を断る事にしたら『オレの事嫌いになった？飽きたのかよ？』ときた。
『違ェよ』と即答したものの、昨日に引き続き翌日1度目の溜め息が知らず内に漏れる。

『じゃあ、オレの事好き？愛してる？オレはもちろん愛してるぜ毅！ああ、お前と結婚したい。子供…はムリだけど、欲しいよなぁ…ガキは嫌いだけど、オレとお前の子供なら別だって！親バカになる自信あるぜオレ！』

煩ェ！結婚も無理だバカ！

ああ、いっその事嫌いになれればな！

end.