『忍耐力を試される話』

啓介×中里

小説 櫻太郎 様






俺の毅が狼の森に迷い込んじまった!!






帰りが遅くなると言った毅の部屋に先に向かい、何気なく覗いた郵便受けの中に入っていた魔獣共の集会への招待状、もとい同窓会開催を知らせる葉書。自分にも経験がある、これは無視してしまえば勝手に欠席扱いにしてくれる空気を読むカードでもある。
そう思ってその忌ま忌ましい葉書を小さく折り畳んでデニムのポケットに捩込んで家に持ち帰り、細切れに破いてから捨ててやった。これが約2,3ヶ月位前の話。正直そんな事があった事すら忘れていた。忘れていたし、だから油断しきっていた。

そこへだ。


『ちょっと出掛けてくる。高校ん時の同窓会だ。酒入るし、遅くなるか泊まるか、どっちかになるから今日は来なくていい』


俺が(アニキに単位がどうの、と説教されたから仕方なく来た)講義を受け終え、明日は学校も遠征もないし、毅ととにかくイチャイチャしまくろう!と取り敢えず連絡するのにスマホを取出したら、毅からそんな内容のメールが来ていた。時間にして今から約3時間前に。

メールを打つのももどかしく、慌てて電話を掛けてみたが、予想通りの結果に終わる。




「………出ねぇ!クソ!運転中かよ!っつーか車で行くって、ほぼ外泊決定じゃねーか!」

代行にRを運転させるようなマネ、毅がする訳ねぇ。俺もFDを知り合いですらない他人に運転させるとかありえねぇし。


(ドコのどいつだか知らねぇが余計な事してくれやがって!)

律儀な毅の事だ。恐らくその性分は根っからのものだろうから、そんな毅から返信が届かない事を按じて連絡を入れた野郎がいるのだ。

内容をよく見もせず捨ててしまったから、開催の日付や時間どころか場所すら不明だ。今となっては毅本人から聞き出すしか方法はない。のに、その本人との連絡がつかない。


(ああクソ!あん時の俺のバカ!)

世間では成人した男が一人で何処かに出掛けただけで、ここまで大事にする事はないし、大事にされる方が迷惑だ。実際自分もこれまで付き合ってきた女からは『今何処にいるの?』『誰といるの?』『いつ帰ってくるの?』といった束縛メールを貰ってきたが『ウルセェ!』の一言を浴びせてサヨナラしてきた。

が、毅は別だ。俺とは別の、所謂走り屋のチームに所属(というかそこのリーダーだ)していて、そのチームの様子を見ていれば解る。
あの扱いはリーダーというよりアイドルに近い。NightKidsは毅の親衛隊のようなものなのだ。

毅とバトルを終えてから何故か奴の動向が気になり出し、妙義に出向いてはメアドを聞き出そうと近付く度に邪魔され続けてきた。結局最後はアニキの情報網に泣き付いたわけで、だから余計にアニキの言い付けは俺にとって絶対的存在なのだ。『同窓会に行ってくる』事後承諾メールに目を通すのが遅くなった不可抗力への文句も飲み込むしかない。

そんな必殺技を使ってメアドを手に入れ、たわいもない会話を繰り返した後に毅本人からケー番を聞き出した時にはやったぜ!と部屋で叫んでしまい、隣の部屋で久しぶりの休日を満喫(?)していたアニキに無言で戒められた(同時に何があったかというのも察しを付けられたような気がする)。


――脱線した話を元に戻すと、『毅は男にモテる男』だという事。ハタチを過ぎてこんな状態にあるのだから、それ以前――性に目覚め、頭の中はソレばかり、なバカの集まり(男子校だと聞いたから余計にだ!)の中にいた毅が奴らの頭の中(男と関係を持つのは俺が初めてだと言っていたから、実際には何もなかった…筈だ)でどうなっていたのだろうかと考えると、苛々と悶々が責めぎ合って、それこそ叫び出したくなる。


毅の年齢だとぼちぼちと結婚してる奴らもいるだろう。嫁やら子供やらの自慢話を聞く位ならいくらでも許してやる。だが、高校を卒業し大学・就職、またはその他を経て尚毅に在らぬ想いを向けている奴とか、再会して昔の想いを復活させる奴もいる筈。そう思っただけで居ても立ってもいられない、なのに連絡が付かない…


そんな感じで苛々悶々していた所へ、その毅から電話がかかってきた。スマホを握り締めたままだったのでワンコールで出てやった。

『今どこだよ!終わったのか?帰ってくるのか?何時?迎えに行くから!』

あれほどウザいとしか思えなかったセリフを、この俺が口にしている。自覚をしたのは暫く時間を置いての事だったけれど、その時初めて付き合ってきた女達に対して反省というものをした。やはりこういう事は同じ立場に立ってみないと解らないものだ。

毅が心配で堪らない。狼(しかも酔っ払っている)の中で今、どうなってるんだ?


息巻いての質問責めにも毅は優しい。

『急でスマン。今日、連絡を貰ってな。都合が付いたし皆に会いたかったから参加する事にしたんだ』


俺が葉書を破り捨てたという事は脳裏を掠めもしないのだろう、穏やかに、心底申し訳なさげに謝罪してくる毅にいたたまれなくなる。

が、ソレとコレとは別問題。今現在、毅が狼の群れの中にいるという現実には変わりがないのだ。


『きっ、今日中に…はもう無理だろうけど、日付超えた位で上がれねぇの?電車でそっち迎えに行くし…』

『ははっ。何だ高橋啓介。大嫌いなRに乗るつもりかよ。いいって無理すんな。明日の昼位には戻るから心配しなくていいよ、ありがとな』

映像はないけど見える。あのやや強面気味の表情をふにゃっと崩した、柔らかい笑みが!俺を一瞬で落としたそれを、狼野郎共の前で披露するとか、ありえねぇよ!結婚してる奴の中にも後悔してる奴とか出てくるんじゃねぇのか?!


(ああもう!)


『いいから今いる場所教えろ!』


そのまま放っておくなんて出来るもんか。本当は今すぐにでも飛んで行って、悪の巣窟から引っ張り出してやりたい。が、強行突破はさすがの毅にも嫌われそうな気がするのでそれは我慢しておく。

今、出来る限り近くに行くだけ。何かあったら(あってからじゃ遅いんだけど…我慢!)すぐに駆け付けられる距離に、それだけは許してくれよな、毅。

end.





可愛い啓中小説ありがとうございます!!(〃∇〃)
中里さんの知らないところで必死に頑張る啓介が微笑ましくてたまらんですvv
いろいろやる事が裏目裏目に出るのも啓介スキル!
それでジタバタするのがまた可愛くて!!中里さんへの深い愛を感じるのです〜vvv
きっと同窓会に乱入してしまった挙句、ムダにライバルを焚きつけて
中里さんを狙う潜在的な狼を起こしてしまうに100ペリカ!(笑)
啓介のこれからの頑張りも是非読ませていただけると嬉しいですvvv


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