神父と悪魔

夢魔慎吾×神父毅v



KH様








コンコンと窓ガラスに何かが軽くぶつかる音がして毅は顔を上げた。
教会のステンドグラスなどとは違い、寝室に申し訳なさ程度に付けられた窓は、空気が混じり白く濁った安いガラスが嵌められており、明かり取りが出来る程度の透明度しかなかった。
毅が窓の近くまで行くとまたコンコンとガラスを叩く音がする。ぶつかるというより誰かが意図を持って合図をしているようだった。
夕方の日は落ち切っていないが、悪魔を恐れて夜に外出を控えるような街の住人が訪ねて来るには些か時間が遅い。
もしかしたらアイツが来たのではないかと思い、毅は気を締めて外開きの窓を押し開けた。
すると、森の匂いがする風と一緒に花芯から漂う芳香にも似た芳しい匂いが鼻をかすめた。
どの花より甘く、思考を鈍らせるような誘惑的な香りだ。この独特の香には覚えがある。
姿は見えないが僅かに羽音が耳に感じた。
そして次に重力のままに垂れ下がる髪が毅の視界へ入ってきた。
斜め上を見上げると逆さに吊り下がるように悪魔がいる。
「よぅ」
夕日の光が透けて朱くも見える髪が逆さに垂れてゆらゆらと揺れている。
「お前か……、慎吾」
切れ長なきつね目の悪魔は軽薄そうな口元を釣り上げて毅を見遣った。
コイツはいつも人を小馬鹿にしたような顔をしている。
「俺様が来てやったんだからもうちょっと喜べよ」
偉そうに話す相手は慎吾といい、半年前くらいからこの街に現れるようになった悪魔だ。
ここへ訪れる他の悪魔と同じで人間を傷つけたりするような惨たらしいことはしないため、そういう点では安心なのだが、少し問題がある悪魔であった。
「お前が来て喜べるわけないただろ。寧ろ、いなくなった事を喜んでたくらいだ」
「とか言いつつ、実は俺様が来なるの待ってたんじゃないのか?今夜もイイ思いさせてやるぜ?」
「あのなぁ、お前の事待ってもいないし、何がイイ思いだ?! 精気を吸い取られるどこがイイ思いなんだよ?」
「代わりに気持ちイイ事してやってるだろ」
慎吾は俗に言う淫魔である。
淫魔の糧は血肉などではなくて人の精気である。
しかも淫魔というだけあり、ただ吸い取るなどということはなく、気を吸い取りやすくするために淫猥な幻覚を見せ、人が昂揚した時に吸い取ってゆくのだ。
迂闊にも毅は幾度かそれを経験させられている。
聖職者ともある者が幻覚に屈し、更に精気まで吸われるのは屈辱でしかなかった。
「それに俺様は優しいから毎回吸い取る量加減してやっただろうが」
「あれが加減か?!」
酷い倦怠感と脱力感。体力ばかりか気力まで奪う吸飲のおかげで、さんざんな目にあった記憶しかない。
「殺さないだけありがたいと思いやがれ」
確かに死に至るほどではなかったが、だからといってそれを許せるはずもない。
「で、なんでまた戻ってきたんだよ?」
「そろそろ食べ頃だと思って」
「た、食べ頃?」
「そう。俺の食糧だからな」
「人間は食い物じゃねぇ!」
「お前ら人間に食われる牛や豚なんかも同じ事思ってるぜ、きっと。まぁ人間にどう思われようと知ったこっちゃねーがな」
食わなければ死ぬだけだ。
人間を哀れんで餓死するなんてそんなマヌケな死に方をする気は更々ない。
「さ〜ぁて、今日はどういうプレイにするかな」
女も自慰も定番どころは試したし、触手なんかもそろそろ飽きた。
嘗め回すような目付きで品定めをする慎吾に毅は身の危険を察知する。
「もうテメェなんかに食われてたまるか! 俺だってお前を追い払うくらい出来るんだからな!」
牽制するつもりで息巻いてしまったが、追い払えていれば何度も精気を吸われたりしていない。
「へぇ、言うじゃねーか。そこまで言うなら今日は俺様直々に可愛がってやる」
血でも滴りそうな真っ赤な舌で舌なめずりをする。
迎え撃つために役に立ちそうなものを探そうと見渡すが、胸に下げた十字架くらいしか頼りになりそうなものが無かった。
ニィと弓なりに慎吾の口端が持ち上がり、毅の背筋は粟立った。
本能が警戒を強め、後退りするが見えない力が毅の身体を硬直させた。
ぐらりと視界が歪む。
「やめろ、慎吾」
「嫌だね。諦めろ」
毅は気付いていないかもしれないが、もうここは慎吾の術の中だった。
肉体は眠り、精神だけが慎吾と同調し同じものを見たり感じているにすぎない。
つまり慎吾が現れた時点で毅に逃げ場はなかったのだ。
抗うことが出来ない領域の中で、操り人形となった毅は必死でもがいた。

 

苦しさに呻きたくなるのを堪えながら毅は口腔を支配する性器に舌を絡めた。
「どうだ? 今の気分は」
横柄に椅子に座り、ニヤニヤと薄ら笑いを浮かべ見下す慎吾の足元に毅は跪づかされて奉仕を強要させられていた。
喉を開き、昂ぶり滾ったそれを舌と唇で扱く毅には睨むくらいしか抵抗する術がなかった。
それすら愉しげに慎吾は鼻で笑った。
「神父とは言っても非力だな。俺の言うがままで睨むことしか出来ないなんてさ」
「……ん、ぅッ…」
毅に巻き付いていた慎吾の尻尾が毅の首を締め上げる。
むせ返る寸前の力加減でじわりと喉仏へ食い込み、毅は苦しさに目尻に涙を浮かばせた。
しかし慎吾はそれ以上力を強めることはなく、諦めたように口淫を続けるとすぐに尾は緩んだ。
毅を繋ぎ、逃れられなくしている尻尾は首輪のようだ。
「悔しいか? そうだよな、毅。そういう顔してるもんな、クククッ」
突如髪の毛を掴まれて頭を引かれた。
濡れそぼった楔が口からこぼれて目前に現れる。それは粘膜で感じるのと視界で感じるのではだいぶ印象が違い、その大きさに圧倒されそうだった。
だが喉を解放されて苦しさから解放し一時の安堵を得たのもつかの間、尾に首を持ち上げられて毅は喘ぐ。
「……んっ、…は……ぁ…」
口端から飲み込みきれなかった透明な唾液が顎を伝って筋を作るのを見た慎吾は汚れた毅の顔を引き寄せ、滴るそれを舌で掬った。
すると僅かに毅の顔が歪んだ。
通常より理性の抑制力を減らし、尚且つ快楽は何倍にも感じさせてしまう淫魔独特の能力を受けても媚びたりしない毅は、加虐心の強い慎吾にとってこれとない獲物である。
だが毅とて人間だ。慎吾の力に抵抗し続ける事など出来ず、必ず篭絡する。
それが慎吾には至高の時だった。
ベッドへ移動させると仰向けに寝そべる自分の上に四つん這いになるように命令した。
まだ抵抗する意識は保っていたが、毅の身体はそれに従ってしまう。
いつもそうだ。卑猥な幻覚に捕らえられ、命令されるとけして拒むことが出来ない。
「向き合ってどうすんだよ? ケツ、コッチに向けろ」
毅は恥ずかしさも相成って躊躇する様子を見せたが、慎吾の顔を跨ぐように覆い被さると、言わずとも目の前にそそり立つモノを口に含んだ。

「う……ぅ、んむ……っ」
くぐもった呻く声を心地良く聞きながら、慎吾は毅の下肢に顔を近付けた。

慎吾の吐息を感じて、腰が落ち着かなさそうに動く。

それを知っていて慎吾はヒクヒクと収縮する蕾を眺める以上のことはしない。

耐えられず口を開いたのは毅だった。

「…そんなに…見るな」

「ククッ、何かやましいことでもあるのか?」

「違……」

「こんなに物欲しそうに誘っていながらやましくないって言うのかよ?」

フゥッと風を送り、竦む身体を細めた目で眺めた。
「普段はあんなにお堅い顔してながら、裸で男の顔跨いで……」
「やめてくれ……っ、聞きたくない」
「こんなに勃起させて、神父より男娼のほうが向いてるんじゃないのか?」
ぶら下がる竿を慎吾は指でなぞった。
そして先走りの滴る茎を口に含み精を吸い上げる。
裏筋や亀頭に舌を絡ませ追い詰めてゆくと、ふるりと腰が震え、慎吾の口腔にある肉棒が容量を増した。
毅は首を左右に激しく振る。
「…ァ…っ、……し、慎吾…やめ…、……ッ!!」
刺激に耐え兼ねた毅が慎吾に哀願する。
「誰がやめて良いって言ったよ? しゃぶれ」
口を離したままの毅に続けるようにと慎吾は命令する。
だが愛撫に気を取られ、まともに行為を続けることなど出来るわけがない。
「気持ち良すぎてしゃぶれないか? でも俺をイかせない限り終わんねぇぞ」
その声を聞いて毅は続けようと試みるが、口に肉塊を含む度に激しく襲う快感に妨害される。
だが、それではひたすらこの淫夢は続くだろう。
毅はゆるゆると頭を動かした。
そんな気力がまだあるのか、と感心して責めを緩めるどころか更に追い詰めようと慎吾は毅のすぼまりへと舌を這わせた。
この堕ちそうで堕ちないギリギリが良い。
いやらしく粘着質な水音が毅に聞かせながら、たっぷりと唾液を流し込むと、舌と指を狭い入口に捻じ込む。
「ああぁッ! だめ……ッ、そこ、やめっ」
無情にも慎吾は絶頂へ導こうと蕾に突き刺した指で前立腺を擦った。
「い……ぁっ慎吾、やめっ! やめてくれ、慎吾!」
ビクビクと毅の腰が震え、白濁した体液を放出した。
それを口で受け止めた慎吾は喉を鳴らして嚥下する。
荒い息をつきながらぐったり頭を下げる毅に慎吾は容赦しない。
「お楽しみはこれからだぜ」
ニヤリと笑んだ顔は毅からは見えなかった。


慎吾にとって人間の放つ精は食料であり、吸えば生気が漲ってゆく。
怒号したモノをいくら扱いても毅に慎吾を篭絡する手立ては無かった。
「もうイけなっ…イきたくないっ」
引き攣った空気が喉を抜け、ひゅぅっと音を立てる。
柔らかい慎吾の口に包まれた自身は自制が利かない。
「また出……ッ、うぅ……っ」
毅は何度目か判らない体液を放った。
頭は真っ白に霞んだ頭で、自分の顔から滴る汗を人ごとのように眺めていると慎吾が寝そべっていた身体をずらした。
自分の下から抜け出そうとしているのが分かった毅は跨いでいた足を戻してベッドへ身を投げ出す。
酷い脱力感と小刻みに震える脚がこの悪魔から逃げ出す余裕も与えなかった。
「もう…十分…だよな?」
声を出すと掠れていてしゃべるのも億劫になってしまう。
「腹は満たされたけど、欲求ってのは食欲だけじゃない」
精気を吸われ、ぐったりとしている身体を仰向きに転がすと、女のように細くはないが妙に色気のある腰を掴み、己の一物を宛がうと、憔悴しているとは思えないほどの激しい拒絶を見せた。
「いやだッ! それはダメだっ」
啓介との情交がフラッシュバックする。にじられた記憶はまだ癒えていない。
そうとも知らない慎吾は毅の様子が腑に落ちない。
「今更何だよ? 指なんかよりもっと気持ちイイぜ」
あれだけ前立腺で射精させたのだから、その良さが解らないわけではないだろう。
そう思い、先端を押し付ける。ヒクヒクと緩んだ尻穴の様子が伺える。
「そんなっ、入らな……許してくれ、慎吾」
泣きそうな顔で訴える毅を見ても慎吾は止めなかった。
毅を押さえ付け、切っ先を突き進める。
「ああぁ……ッ!」
悲鳴にも近い声が毅の口から発せられた。最後のほうは声にもならない。
背が弓なりにしなり、大きく胸が上下する。
慎吾は砲身を埋め切ると息をつき、ゆっくりと抽挿を始めた。
腰を引き抜かれると毅は胎内に快楽が渦巻くのを感じる。
淫魔の領域は、言わば夢と同じ空間だ。苦痛に快感を得るタイプの人間ならまだしも、望まない苦痛は慎吾が与えない限り感じることはないのだ。
「なに……? …や、違っ……こんなの違う」
「何と比べてるんだよ? まさかお前、他の悪魔に食わせてるんじゃないだろうな?!」
慎吾はそう言ってから自分の言葉を打ち消した。
こんなに精気が満ちているのに、他の悪魔に捕食されたとは考えられない。
慎吾は毅の答えも聞かず腰を打ち付けた。
「ぁ……、ん……っく、ぅん、んんっ」
内臓まで掻き混ぜられているような錯覚をするくらいに胎内で渦巻く官能的な欲望に、毅は考えることを放棄し全てを委ねた。


食欲と性欲を充たして満足を得た慎吾は毅を解放した。
ベッドで眠っている毅は死んだように青白い顔をしている。
全て慎吾の領域で起こったことなので、放った体液もグチャグチャに乱れたシーツも何処にも無い。
「まーた吸い過ぎちまったぜ」
調子に乗ってしまい、たくさん吸い過ぎたと反省する。
正直言えば毎日だって来たいが人間脆い。本気を出してしまえばすぐにくたばってしまう。
腹を満たすだけ食料ならば非情にも使い捨てるが、こんな自分好みの獲物を一回切りでみすみす失ってしまうのも惜しい。
だから回復するのを見計らって訪れようと決めたのだ。
もう少し我慢しておけば回復も早かっただろうが、さすがに今回はだいぶ時間を要するだろう。
「あーあ、また暫くひもじい思いすんのかよ…。ったく、人間は面倒クセェな」
慎吾は軋む窓を開け放ち、黒い翼を広げて、月光が淡く照らす夜空へ飛び去った。

⇒終わり
 













KH様ありがとうございます〜vvv(〃∇〃)
幻の中って何でも出来て最高です!!毅さんは美味しいご飯ですvvv
KHさん曰く
『念のためフォローしときますが、啓介は下手なんじゃないですよっ!生身だったんだし、初めてが痛いのは当然というか…(苦笑)。
それに慎吾の場合、所詮術ですからね〜。脳内セクロスしかしてない慎吾は、寧ろ負け組なんじゃないかと思います(笑)
啓介の今後としては、拗ねて毅の前からいなくなった弟を放って置けなくて涼介が毅の元に降りてきて、
涼「あの悪魔を助けてやってくれないか?」
毅「大天使様がそういうなら助けます!」
と、啓介の所まで自ら毅が行くとかそんな展開を考えてました。
アニキもライバルとして登場させるのも面白いですが、そうするには啓介編がちょっとシリアスすぎました(涙)。』
とのことですが(笑)啓介のテク編とか是非(照)
あと、この慎吾と啓介が、中里さんをめぐって対決とかもしちゃって欲しいです〜vvv
お互いが悪魔から神父を守ろうとしたりしてw
毅さんがんばれ!!!




←topへ