らぶGT−R。


ss 見国かや


「うーーーん…うーーーん………」
ナイトキッズの中里毅は、今日も悩んでいました。

「毅さん、今日も悩んでいるみたいだなあ…」
「ここのところずっと悩んでるっぽいよな、スランプからは脱出したみたいなのに、また悩んでるって、一体どうしたんだろう………」

周りにいるナイトキッズのメンバー達は、大好きな毅さんが悩んでいる姿を見て、ついつい心配を重ねてしまいます。

ナイトキッズは妙義山をホームコースとする、走り屋集団です。
この妙義山。峻険で奇怪な岩山の観光地として有名ですが、歴史的には、修験道者の修行の場としても有名です。

ナイトキッズが下りスタート地点としている、公道の頂上付近にある神社から更に上が、その修行場となる岩山で本当の頂上でもあります。

頂上に行くには道も階段も無いので、鎖にしがみついて上らなくてはなりません。
忍者の修行にぴったりな感じです。

そこで、この山では昔から、修験道者たちが修行をしてきたのです。
修験道者たちは、修行によって、特殊な能力を身につけることに成功した者もいたりしました。

それが、………天狗です。

妙義神社のお土産モノコーナーへ行くと、さまざまなお守りに混じって、可愛い天狗の根付などを売っていたりします。


そう。妙義山と言えば『天狗』。


そんな感じで、妙義山は、神秘的な力を秘めた山だったりするのです。
ですから………

「悩んでおるようじゃなあ…若者よ。」
「!!!!!????」

中里毅の目の前に現れた、その不可思議な生き物を、それほど不思議と思わなくても良いのかも知れません。

毅の目の前にいる、人形くらいの大きさの生き物は、翼で羽ばたく鳥のようでもありながら、人の形をして、そして言葉を発したのです。
その姿は、妙義神社のお土産モノの、あの『天狗』そっくりでした。

「て………天狗!?」
「さよう、ワシは、この妙義山に住む天狗じゃ。」



ここが妙義山で、ナイトキッズは妙義山をホームコースにしているのですから、この存在に出会うことは、いずれ必ず起きたことと言えるでしょう。
それがたまたま今日だった…というだけの、そんな話です。

けれど、やはり天狗という存在を初めて見てしまったのですから、ナイトキッズたちは驚きを隠せません。
「天狗って、あの天狗か!?」
「本当にいたのかよ!」
「毅さんがヘンな生き物を引き寄せる体質なんじゃあ………」
彼らの大好きなリーダーの中里毅は、確かにちょっと、ヘンな生き物に気に入られやすい体質を持っていました。毅さんの発するオーラ的な何かが、魔物にはどこか心地良いものなのかも知れないです。

ところで、天狗に話しかけられた中里毅は、もちろんそれはそれは驚いていました。
「てっ………てん……ぐ?」
「そうじゃよ。ワシも元は普通の人間じゃったが、この山で修行を始めて、今日で500年。多少の神通力を持ったとはいえ天狗としてはまだまだじゃが、記念日なので、たまには地元の人間と交流を持とうと思ってな」

天狗の言うことは意外とまともなものだったので、毅も少し落ち着きを取り戻すことができました。

「そう…ですか。その、500年記念、おめでとう」
「ありがとう。ワシもこの山に居つづけて久しいが、お主のことは、特に目をかけておるんじゃぞ。あのじーてぃーあーるとか言う車を操る豪快さは、見ていて胸がすく。命をかけて走るお主をワシは非常に気に入っておるのだ」
「………それは……どうも」

天狗に気に入られて、毅は喜んでいいのか、またちょっと悩みました。
「ところで、お主はここのところ、随分と悩んでおったようじゃが、どうじゃ、ワシにその悩みを打ち明けてみんか? ワシの神通力で何とかなるかも知れんしのお」

毅さんの悩みについてはナイトキッズメンバー達も知りたかったことだったので、この不思議な光景よりも、毅さんの発言に皆の注目が集まることになりました。

「悩みっていうか…………」
中里毅が悩んでいたのは、高橋啓介とのバトルの後、啓介に言われた言葉が元でした。

この妙義山で命をかけたバトルをした後、高橋啓介は、
“オレにはFDの声が聞こえた”
とか言い放ったのです。

毅は走り屋のオーラは見えたりしますが、まだGT−Rの声は聞いたことがありません。

走りこみを重ねれば、GT−Rの声が聞こえるようになるかと、慎吾を相手にタイムバトルをしたり、箱根のGT−Rに勝ったり、それからも走りこみを続けているのに、

………まだGT−Rの声は聞こえないのです。
高橋啓介には聞こえるのに………。
一体どうしたらいいのか、毅は本当に悩んでいました。





「ふむ。ジーティーアールの声が聞きたいのじゃな?」
「どうしたら聞けるようになるんでしょうか」
ここは、修行のプロ!の天狗様に聞くのが良いかも知れないと、毅は気づくことができました。500年も修行してきたのです。本当の修行のプロです。プロフェッショナルにも程があるくらいです。
「なら直接本人に聞いてみると良いじゃろう。」
「え?」
毅が疑問の言葉を発するかしないかする間に、天狗は不思議な声ともつかない、呪文のようなものを唱えました。


すると!!!!

「…毅」
「!!!????」

それまで中里毅の隣にどっしりと存在していた漆黒のスカイラインGT−Rは、一人の長身の青年の姿に変っていたのです。
黒髪に、黒っぽいドライビングスーツ。キリリとした顔立ちはちょっと毅にも似ているところがありましたが、もっとずっと精悍で、大人っぽい包容力を感じさせました。





これには、周りのナイトキッズたちも驚愕し、どよめきます。
「くっ車が人間になっちまったぞ!!!」
「毅さんのGT−Rだよな? マジで人間になっちまったのか?」
「すげー天狗様スゲー!!これならGT−Rと話ができるな!毅さんよかったなあ…」
「でもGT−Rが人間になっちまったら、毅さんはこれからどうやって走るんだ?もう一台買うしかねえぞ?」
そんな疑問も沸きますが

「ワシの神通力はまだまだなのでな、こやつが人間でいられるのは、妙義山の頂上に朝日が当るまでの時間なのじゃ。まあ積もる話もあるじゃろう。今夜はゆっくりと話すが良いぞ」

天狗のその言葉に、毅は目の前に立つ青年に、おそるおそる声をかけました。

「R………本当にRなのか?」
「ああ。天狗様のお陰でこうして毅と話ができるんだな。すごく嬉しいぜ」
「R………!」
ずっと声を聞きたいと思っていたGT−Rと、今晩はこうして話ができるのです。毅は幸せでいっぱいになり、天狗様にお礼を言いました。

けれどいざ話せるとなると、胸がいっぱいで何から話して良いのか分かりません。
毅は声を詰まらせながら、GT−Rを見詰めました。
GT−Rもそんな毅を、とても愛しそうに見つめています。
GT−Rが毅に微笑みかけると、毅は少し頬を赤らめながら笑い返します。
周りのナイトキッズたちは、何だかちょっと、居たたまれない気持ちになってきました。

「毅が悩んでたのは、ちゃんと伝わってきてたぜ」
「R…。オレにもっと力があれば、もっと早くこうして声が聞けたのに。……」
「こうして話ができるのはすごく嬉しいし、毎日でも二人きりで話しがしたいくらいだけどな。…… でも毅…
毅の声はオレに届いてる。オレは走りで毅に応えを返してる。オレ達の間に、言葉なんかいらないんだぜ?」
「!!!…R!」

Rの言葉に打たれた毅が、感動で目を潤ませながら、やはりGT−Rと見つめあい続けます。

ナイトキッズ達と、そしてたまたま妙義山に走りにやってきた走り屋達や、妙義山によく来るギャラリー達が、ウワサを聞きつけてどんどん頂上の駐車場に集まってきていました。そんな衆人環視の中、毅の瞳にはGT−Rしか入っていません。どんだけ好きなんだかって感じです。

この状況は、某レッドサンズの間者によって魔王高橋涼介へと動画が送信されたり、情報通から高橋啓介にこのラブラブな模様が伝わって、別の騒動が起きたりするのですが、それはまた別の後日談になります。

今日はとにかく、毅は愛するRと二人きり(周りに大勢人はいますし、後でそれに気づくのですが……)でいられて、とにかく幸せに浸っていました。

「そうだ! R、その、お前のこと壁とかガードレールとかに当てちまって済まなかった。痛かったろ? オレもお前の痛みを分かち合えたら良いのにな。修理とか辛くなかったか? オレはがもっとしっかりしてりゃ…」
そんな毅の言葉をさえぎるように、Rが毅の唇を指で押さえます。そのまま滑らせて顎先を支えると、自分の方に顔を上向かせ、まるで口付けでもできそうな距離まで顔を近づけると、何とも甘いテノールで囁きかけました。

「毅。傷があるのが、男ってモンだぜ?」
だからこれからも、恐れることなくオレと共に走って欲しいと、Rは告げました。
「R!!!」
毅は感動して、思わずGT−Rに抱きつきました。GT−Rも幸せそうに、毅をぎゅうっと抱きしめます。

周囲はどよどよとどよめきまくりましたが、二人の世界には届きませんでした。

それから二人はずっとお互いを見つめ続けながら、毅がRをどれだけ尊敬していて大切に思っているか、Rがどれだけ毅を愛しているか、妙義山の山頂に朝日が射すまで、飽きなく語り続けたのでした。


それからも、妙義の天狗は大のお気に入りの中里毅に天狗になるための修行をしないかと誘ったり、せっかくなのでナイトキッズ達と仲良くなって密かにヘンな騒動を起こしていたり、あの兄弟がウワサを聞きつけてやってきたりと様々なことが起きるのですが、


とにかく今日は、Rと共に、中里毅は幸せいっぱいだったのでした。









毅さんを幸せにする日〜ということで天狗様の登場です!
妙義神社の天狗ストラップ可愛いですよねー。
でもGT−Rとらぶらぶ過ぎてヤケます!
高橋兄弟とか慎吾とかに頑張ってもらいたいです(〃∇〃)
そして天狗の力を借りたナイトキッズたちは、とある行動に………。ふふ。
天狗様ばんざい!! もし良かったら天狗ネタ使ってやってくださいませーvvv




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