実写版・涼中&拓中

小説 秋羅 様




         拓海の疑問


 秋名でのハチロクとFCとエボ3のバトルがあってから数日後のことだった。偶然渋川駅で中里は藤原拓海と出会った。立ち話もなんだし、ということで近くの喫茶店に入った。
しばらく車の話を拓海に質問されてそれに答えていた中里だったが、話が一段落ついたところで、拓海が神妙な顔で切り出した。

「中里さん、俺、ちょっと聞きたいんすけど?」
 あらたまった拓海に中里は怪訝な顔をした。
「? なんだ?」
「俺、走り屋の事今まで知らなかったから、ナイトキッズとレッドサンズがよく一緒にいるのを不思議に思わなかったけど、普通は違う山の走り屋同士がつるむってことないんですよね?」
「あ、ああ、まあそうだな」
「じゃなんで、ナイトキッズとレッドサンズって交流戦とか互いにサポートしあったりして、仲いいんですか?」
 困ったように中里は頬を掻いた。

「ん〜、あんま理由ってねえ気がするなあ。っていうか、俺は人手足りてるし別にいいって言ってんのに、涼介の奴が何かとそういうの、買って出てくれるんだよな。それで、やってもらってばかりっていうのも礼儀に反するだろ? だから、俺たちもレッドサンズの交流戦のサポートしたりするんだ」
 拓海は核心を突いた。
「中里さんと涼介さんて仲いいですよね。幼馴染とかそういうのですか?」
「俺とあいつが?」

 中里考えてもみなかったことを言われたように、大きく目を見開いた。

「いや、ちげーよ。ほんの一年ぐらい前だぜ、あいつに会ったのって。俺がたまたま一人で妙義じゃない山を走ってたときに、あいつのFCが前を走っててよ、抜こうと思ってパッシングしたら、あいつがスピード上げて、ま、当然だけどな、そのまま追いかけて行ったら頂上でウィンカー出してあいつが止まったんだ」


 中里は自分もスピードを落としFCの横に自分のGTRを並べた。そのとき初めてサイドに張られたRedSunsのステッカーが目に入る。
 その車の乗り手のことを人づてに中里も聞いた事があった。

 白いFCから相手が出てきたのに合わせて、中里も車から降りた。
「よお」
「やあ、今日はよい日よりだね」
 いきなり天気の話を振られて中里は毒気を抜かれた。走り屋が初対面で、しかもついさっきまで追走されていた相手にのんきに天気の話をするなど、中里の想像の範疇を超えていた。

「あ、ああ……。そうかもな……」
「なかなかいい走りだったぜ、中里」
「えっ!?」
 いきなり名前を呼ばれて中里は仰天する。

「なんで俺の名前を?」
「それに書いてあるだろ?」
 相手は中里のGTRを目で指し示す。
 いや、自分は車体に名前など張ってない筈だ。誰かに悪戯されてなければ……。
 焦り始めた中里に相手はクスリと笑う。
「いや、ボディにNightKidsってかいてある」
「あ、ああ」

 中里はほっと胸をなでおろした。
 そんな中里の様子に相手は笑みを深くすると続けた。

「妙義ナイトキッズのステッカーをつけた黒いGTRといったら中里毅だろ」
 当たり前のように言ってみせる相手に、中里はちょっと照れた。
「お、俺も、あんたの事知ってるぜ。白いFCでレッドサンズといったら、高橋涼介しかいねえもんな」

「そうか、光栄だ」
 高橋涼介はさらりと笑った。
 白い彗星とか言われて、すかしたヤローだと思ってたけど、会ってみるといい奴っぽいな、と中里は思った。

「あ、そうだ。今日ここで会えたのも何かの縁だしよ、俺とあんたのFCでバトルしねーか?」
「……。いや、縁は大切にしたい主義なんだ」
「?」
「バトルは別に今日じゃなくたっていいだろう? この先いつだって会えるんだしな。
せっかく会えたんだから、交友を深める方が先じゃないか?」

 そんなもんなのか? 

 中里には高橋涼介の理論はよく分からなかったが、ちょっと話してみて、この男が少し変わった考え方をするということは理解できたので、素直に頷いた。
「ん、いいぜ。バトルはまた今度だな?」




「――これがあいつとの出会いだったなぁ。それからときどき俺とあいつは一緒に走ったりファミレスとか行ったりするようになったんだ。
そういや俺、会うたびにあいつにバトル申し込んでたけどよ、そのたびにかわされてたな。そうそう、お前とバトルするきっかけになったのも、あいつの提案が始まりなんだぜ」
「それってどういうことですか?」
「あいつがさ、群馬の峠で頭とってみろって言ったんだ。面白そうだと思ったしよ、頭とったらバトルするって言うから引き受けた。お前の友達、秋名山の神とかいってたやつとまあ、バトルっていうか、そういうことになったのも、秋名で一番早い奴を探してたからだ。ま、結局、その情報はガセで一番はお前だったんだけどよ」
「そっか、じゃあその点は涼介さんに感謝なんだ」
「?」
「いや、涼介さんとそういう話がなかったら、中里さん秋名走り込んだりしなかったですよね? 俺が中里さんと会えたのも、バトルできたのも涼介さんのお陰ってことかな、と」
「俺とバトルって言ったって、悔しいがお前に取っちゃ物の数じゃねえだろ?」
「そんなことないですよ。俺、中里さんと知り合えて、マジ嬉いっすよ」
「そうか?」
 中里は照れたようにこめかみを掻いた。

「や、俺もお前とバトルできて走りの意識変わったし、お前みたいなすごい走り屋がいるって知れてほんと嬉しいぜ。涼介とはバトルできなかったけど、その涼介に勝ったお前とバトルできたんだもんな」

「そうですね、中里さんと俺はバトルした仲ですから。
 一年遅れたけど、とりあえず俺も中里さんとお友達になります」
 表情の乏しい拓海にしては珍しく顔をほころばせてそう言い切った。


 くしゅんっ……!!

「風邪でもひいたかな?」
 背筋に走った寒気に涼介はパソコンから顔を上げてそう呟いた。


涼介と中里の馴れ初めのお話〜vvvありがとうございます〜//
確実に何か狙ってる涼介の行動が(笑)
天然な中里の反応にクラクラしました(〃∇〃)
カワユイ…ヤバいくらいカワユイです
そして拓海と涼介とで中里を取り合ってほしいです〜(笑)