涼介×毅 涼介の引退の話を聞いて会いに来た毅の話デス HK様v 毅が涼介の元を訪れたのは、拓海と涼介のバトルの数日後だった。 「聞いたぞ、引退の話」 突っ掛かるように言ってしまったのは、自分に一言もなかったせいだ。 チームも違うのだから言う必要は無いのかもしれないが、一言くらい相談を受けてもおかしくないくらいの関係ではあるつもりだ。 「何かと思えばそんな事か。お前からの呼び出しだったから期待したんだがな」 「…本気なのか?」 噂としてしか聞いていない毅は半信半疑なのだ。 いや、出来るなら信じなくない。 「もうあらかた話が広まってしまったのに、冗談でしたなんて言ったら格好つかないと思わないか?」 にこやかに言う涼介に意思を変える気持ちは見受けられなかった。 それには涼介なりの考えがあったのだろうが、毅には引退の話は受け入れがたく、そして悔しく思えて堪らない。 「格好なんてどうだっていいだろ?! レッドサンズのリーダーがいなくなったらあのチームはどうなるんだ?」 「俺がいなくともチームは問題無いだろう。崩れない程度の基礎は作り上げたつもりだからな。それでもダメならばそれまでのチームだったのさ」 他人事を言うような涼介に毅は声を上げた。 「俺は真面目に言ってるんだ」 嘘くさいセリフはやめろ、と言った毅は希望を込めて尋く。 「なぁ、藤原ともう一度やれば勝てるんだろう?」 毅の真剣さに困り顔を見せたものの、涼介ははっきりと確信を伝える。 「そうだな。今なら確実に勝てるだろうな」 それならばどうして引退するなどと言うのだ?と問いかけて、毅はハッと気付く。 「……もしかして、勝っても負けても初めから…」 そうだとも違うとも言わず、涼介は微笑んだ。 「いつかは次の世代に交替しなければならない。今がその時だと思ってる」 「お前はまだ走るべきだ。俺はお前の走りにまだ限界を見ていない」 「買いかぶりすぎだぜ、中里。過大評価は好ましくないな」 過大だとは思っていない。 涼介の走りを間近で見た時の戦慄。背筋が粟立ったこともはっきりと覚えている。 「こんなに早く引退なんてことになるなら、もっと走っときゃ良かった」 近くにいるからこそ、いつでもバトルが出来るという気になっていた。 「そうだな、俺もそう思う。もっと早く出会って一緒に走っていれば、中里もプロDに参加してたかもしれないしな」 「それこそ過大評価だ」 からかわれた気がして毅は不機嫌さを表す。 「俺は見込みのない判断はしない。お前は啓介と似ている」 「俺はお前の弟とは違う」 あんな奴と一緒にしてほしくないと言っているかに聞こえて、涼介は小さく苦笑した。 「ああ、確かに違うな。啓介は放っといても自分でなんとかしそうだが、中里は…放っとけない」 「なんだよ、それ。随分信用が無いんだな」 信用か…と口に出してみて、涼介は毅を見やった。 「そうかもしれない。お前は俺に頼ってきてはくれないからな。一人で無理して壊れてしまいそうで放っとけないんだ」 毅はあからさまにムッと顔を歪める。 「好き勝手言いやがって。お前こそ誰にも頼らないじゃねぇか」 「フッ、俺の為に心配してくれるのか?」 艶めかしい瞳を向けられて、紅くなった顔を背けて隠した。 「だ、誰がお前の心配なんて……。それに、お前は何でもすぐ自分で解決しちまうから、俺に心配なんてさせてくれないだろ」 少し驚いた涼介の柳眉が僅かに動いた。 「そんな風に思われてたのか。てっきり想われて無いんだと思っていた」 悟ってくれない涼介にいろいろな感情の入り交じった顔で言う。 「ばかやろう。なんとも思ってなかったらお前と逢ったりしない」 不器用な毅は本心をそのまま言葉にして伝えてはくれない。 「中里はいつも回りくどいな。俺の欲しい言葉は一つだけなのに」 「テメェこそいっつも理屈っぽいし嘘くさいし…、何が本当か分からねぇんだよ!」 なんでこんなこと言ってるんだろうと、毅は手持ちぶたさに髪を掻き回す。 「中里、愛してる」 沸騰したケトルの蒸気が上がるように顔が真っ赤になった。 「それが嘘くさいっていうんだっ」 怒鳴ることで誤魔化そうとする毅が愛らしくて、涼介は表情を綻ばせた。 「じゃあ俺はどうやって中里が好きだって表現すれば良いんだ?」 毅がどう受け答えてくれるか期待に満ちている涼介を控えめに窺って、ボソリと想いを口にする。 「……黙ってたって表現できるだろ」 こうすれば…、と毅はわずかに踵を上げて視線を同じ位置に合わせると、涼介に唇を重ねた。 ≪END≫
☆ぎゃーーー(≧∇≦)甘いお話ありがとうございます〜// 何かもう、当てられまくりのラブラブな二人です〜(照) お互い労ってあげてる、ちょっと大人な気回しする二人v ううv涼介の甘えっぷりとお互いの甘やかしっぷりが ひたすら甘い美味で〜v読ませていただいててまさに骨まで蕩けました(〃T∇T〃) 次のお話も素敵なのです〜v