涼介×毅
暫く逢えなくて拗ねてる毅デス（笑）

ＨＫ様ｖ



「久しぶりだな」
と、知人に会った時のような口調の涼介に、二週間ぶりだとなるべく感情を出さないように努めて毅は返した。
「二週間…そんなに逢ってなかったんだな」
涼介は最後に会った日まで思い返して、日にちが過ぎ去っていることに気付く。
研究室に篭っていると知らずと曜日感覚が麻痺してしまうのだ。
「それだけかよ」

久しく恋人に会ったというのに感情の起伏を見せない涼介に、毅は内心で面白くなくて厭味の一つも言いたくなる。
「あんまり連絡が無いから忘れられたかと思ったぜ？」
「忘れるわけないだろう？　声聞いたら逢いたくなるのが解っていたから我慢してたんだ」
「ふん、よく言うぜ。どうせ研究に没頭してただけだろう？」
いつもそうだ。何かに没頭してしまうと自分のことは後回しにされてしまう。
性質的なものなので、どうにもならないと諦めてはいるが、全く音信不通になってしまうと、いつの間にか気になって仕方なくなっていて、涼介のことばかり考えてしまう自分が女々しく思えて嫌なのだ。
「中里こそこの二週間どうしてたんだ？」
「別に。普通に仕事して、夜は妙義に行ってメンバーと騒いで……それだけだ」
それだけ？　と問われて毅は怪訝そうに涼介を見返す。
一人暮しをしていると、毎日同じことの繰り返しがほとんどを占め、二週間の間は特に変わったこともなかったが…。
「俺に逢いたくなったりはしなかった？」
「なっ?!　誰がお前なんか…っ！」
「恋人よりも仕事と車か。寂しいもんだな」
自分は二週間も連絡をしてこなかったくせに勝手な言い分だ。
「ったく、そう思うなら放っとくな！　声聞かなくってもメールくらい出来ただろう？」
「そして俺は返事の帰って来ないメールを待たなきゃならないんだな？」
毅は一瞬言葉を詰まらせる。
「それは…返しようのないメールばかりだからだろ?!」
『愛してる』などと送られても、毅にはどう返せば良いのか分からない。
涼介は呆れたように溜息をつく。
「たまには逢いたいって、お前の方から言ってこいよ」
「俺は、お前の邪魔になんのが嫌なんだよ」
「中里を邪魔だと思ったことは一度もない。逢いたいって言われれば逢いに行く」
毅は僅かに視線を逸らし、ボソリと呟いた。
「……来れるわけねぇのに…」
「うん？　すまない、よく聞こえなかったんだが…？」
「逢いたいなんて絶対言うかって言ったんだよ！」
ハリネズミのように刺を立てる姿が、涼介の目には愛らしく映っていると気付いていないのだろう。
しょうがないな、と涼介は苦笑する。
「やはり俺から逢いに行かないといけないようだな。俺が中里に逢えないのが寂しいからな」
涼介がそこまで言うなら許してやってもいいといった態度を作って、ほんのりと染まった顔をフイッと脇へ向ける。
「勝手にしろ」
「ああ」
涼介は嬉しそうに微笑み、毅へと一歩足を踏み出した。

　≪END≫