NTTに 定年延長を求める会

陳 述 書
2008年6月4日
原告 黒岩 春吉

1、原告の黒岩春吉です。
  東京地方裁判所での審理開始にあたり、原告10名を代表して、60歳を超えて雇用継続
  を希望している社員に対し、NTT東日本が雇用継続を拒むことは高年齢者雇用安定法
  の雇用確保措置義務に違反していることから、年金受給開始年齢までの定年延長を強く
  求めて陳述したいと思います。

2、原告10名は、1947年〜48年のいわゆる団塊世代の生まれです。1966年(昭和41)
  〜70年(昭和45年)に日本電信電話公社に入社し、当時、電話の申し込み(需要)に
  設置(供給)が追いつかない中、公社の目指す「すぐつく電話、すぐつながる電話」の現
  場を支えてきた世代です。その後公社は1985年4月に民営化され、1999年7月には
  NTT(持株会社)、NTT東西会社及びNTTコミュニケーションズに分割・再編された結果、
  私たちはNTT東会社の社員となりました。
   私たちは、入社時から一貫して電気通信技術者としてNTT事業の発展に携わってきま
  したが、2001年4月の「NTTグループ3ヵ年経営計画」、NTT東・西会社の構造改革に
  より、11万人リストラ「50歳・退職再雇用」制度の選択が打ち出され、1年後の02年5月
  に強行実施されました。
   これは、51歳以上の人をいったん退職させ、賃金を15%〜30%切り下げて新設する地
  域会社に再雇用させ、60歳定年退職後は時給875円で契約社員として、最高65歳まで
  雇用するというものです。一方、退職に応じない場合は、長年にわたり培った技術を活かせ
  る職場を奪われ、全国配転もあるとされました。
   私たちは、賃金の切り下げも全国配転も納得できないとして選択に応じませんでした。
  しかし、NTT東日本は、選択通知書の提出がない場合は「60歳満了型を選択したとみなす」
  との条項を適用するとし、私たちはそれぞれ異職種、単身赴任、長距離通勤を命ぜられ、
  今日まで6年間光ファイバーを使ったインターネット回線の訪問販売に、不慣れながらも 
  一生懸命携わってきました。

3、60歳を迎えるにあたり、このまま退職となったときの生活設計を考えたとき、年金が支給され
  る64歳までの間の生活が成り立ちません。老後の蓄え等を切り崩して生活費にまわさなけれ
  ばなりません。60歳を超えてからの雇用は、求人情報を調べても厳しいものがあります。また
  、体も健康であり、まだ働き続けてNTTの事業に貢献できるとの思いから、それぞれが職場の
  上長に雇用継続を訴えてきました。昨年12月には、部代表取締役社長あてに「60歳超え
  雇用延長の申出届」を提出しました。しかし、NTT東日本は「制度がない」と60歳超えの雇用
  延長を行なおうとせず、この3月に定年退職とされました。
   06年4月から改正高年齢者雇用安定法が施行され、事業主には雇用継続を希望する社員
  の雇用確保が義務付けられています。常日頃、情報通信ではコンプライアンス(法令遵守)や
  CSRで人権尊重、法令・社会的規範の遵守を社員に強く求めているNTTが、一方で60歳超
  えの雇用延長制度を設けないのはおかしいことであり、「NTTに65歳までの定年延長を求め
  ること」を決意し、今回提訴に至りました。

4、これからの人たち(後輩達)は、やがて65歳年金支給となります。職場では「今でも生活は大
  変です。そのうえ60歳退職で5年間無収入となっては生活できません、頑張ってください」、
  「時給875円では生活できない、今のままで働きたい」等の切実な声があがっています。
   厚生労働省の発表(07年10月19日)では、雇用確保措置実施済み大企業は98 .1パー
  セントとなり、定年到達者のうち雇用継続される者の割合が77パーセントに上っているとされ
  ています。また、今後は少子・高齢化の進行、将来の労働力人口の減少に備え、70歳まで働
  ける企業の普及・啓発が課題とされています。今、まさに60歳超え雇用延長は世論の声、社
  会の大きな流れとなって進行しています。

5、裁判長には、ぜひ提訴に及んだ原告の趣旨をおくみとりいただき、NTT東日本社員が、65歳
  まで安心して働き、生活ができるようにしていただくことをお願いして、私の陳述とします。
                                以上