Close encounter―real blade―


chapter2-5b-2.Rooftop


 ドラゴンとの戦闘は、僕らの勝利で幕を閉じた。
 結果として、僕が役に立てたのかは……微妙なところだ。
 たぶん、いやきっと、マコトは1人でも、ドラゴンを倒せたと思う。
 だけど、僕が戦闘に参加した事が、無駄だったとは思いたくない。
 マコトが、どう思っているのかは分からないけど……。
 戦いに勝てて嬉しいのに、マコトになんて言えばいいのか分からなくて、僕はキーボートの上で指が固まっていた。

「やったね、フユ!」

 そんな僕に、マコトが笑顔の表情アイコンで話しかけてくる。
 固まっていた指が、動いた。

「おめでとう。相変わらず、マコトはすごいね」
「フユが、サポートしてくれたおかげだよ」
「そんな……僕は、」

 僕のサポートが微々たるものだってことは、自分でも分かっている。
 あれくらいなら、マコトのレベルなら1人でも対処できただろう。
 思わず否定しようとした僕を、遮るように、マコトからのメッセージが流れた。

「すごく、動きやすかった。助かったよ。ありがとう、フユ」

 それは多分に、誇張が含まれていたのかもしれない。
 それでも僕は、嬉しかった。

「どういたしまして」

 すんなりと、言葉が出てきた。
 決して、感謝されたかったわけじゃない。
 ただ僕は……そう、マコトと一緒に戦いたかったんだ。
 パーティーの一員として、一緒に。
 それだけだったんだ、と今頃、ようやく気付いた。

『GAME CLEAR』 

 モニターに、効果音と共に文字が表示された。
 今回の特殊イベントは、これで終了らしい。
 僕は、ホッとすると同時に、少しだけ残念に思った。
 あと、ちょっと。ちょっとだけ……。
 このイベントを、続けていたい。
 そんな僕の想いをはかったかのようなタイミングで、メッセージウィンドウにマコトの言葉が流れた。

「フユ。今日のイベントは終わったけど。また……、俺と、パーティーを組もう」
「マコト、それは……」
「俺は、フユとパーティーを解散しただなんて、思ってないよ。俺がパーティーを組みたいのは、フユ、君だけだ。今なら、いや、これからなら。きっと、上手くやれる。だから……!」

 さっきの戦闘を通して、マコトに何かが伝わったのだろうか。
 伝えることが出来たのだろうか。
 以前、パーティーを組んでいた頃には、やれなかった事、出来なかった事が……。
 僕は、迷いながら文字を打ち込んだ。

「マコト、ありがとう、」


次へ進む





戻る