chapter3-1.Student Council Room
どこに向かえばいいのかなんて分からないので、とりあえず、僕は廊下を適当に歩いた。
さらに階段を上って、しばらく進んでいくと、近くのドアががらりと音を立てて開いた。
と、思ったら、いきなり中に引っ張り込まれた!
モンスターの襲撃!?
驚く僕の前に、現れたのは……。
「ハク!?」
「久しぶりだな、フユ」
以前、パーティーを組んでいた時のメンバーの1人、ハクだった。
パソコンの置かれた近代的な室内で、聖闘士の格好をしたハクがいるのは、どこか不思議な感じだ。
まあ、法術師の格好をした僕だって、同じなんだけど。
そんなことをつらつら考えていた僕に、ハクは続けて言った。
「いや、久しぶりってのは正しくないな。正確には、リアブレ内では久しぶり、だな」
「な、何を………」
確信を込めて言われた台詞に、僕はとっさに返す言葉が見つからなかった。
ハクが、リアルでは溝口大輔と言う名前であることは、僕も知っているし、溝口も隠していない。
だけど、僕がリアルでは何と言う名前で、何者かと言うことは明かしていない。
明かしていないが……。
「特にココは、最近来たばかりだろう? なあ、春寿」
春寿……。
それは、僕の本当の名前だ。
気付かれているのだろう、とは思っていたけど、こうも堂々と問われるとは思わなかった。
溝口……ハクらしい、と言えばらしいのだけど。
「僕は、フユだよ。それで、ここはどこなんだ?」
肯定も否定もせずに、僕はただリアブレ内での名前を告げ、場所を尋ねた。
ハクは、それ以上追及することはなく、あっさりと答えた。
「生徒会室だよ」
「生徒会室……」
言われてみれば、先日訪れた生徒会室に似ている。
もっとも、めったに訪れることのない場所だから、多少違うところがあっても、分からないけど。
「ハクは、どうしてここに?」
「こんなに学校にそっくりなんだ。どうせなら、よく知ってる場所を確かめたくなるだろう?」
それだけだ、と言われて、なるほど、と思うと同時に、本当に? と思ってしまった。
これが他の人から言われた言葉なら素直に信じるけど、言ったのがハクなら、何か裏があるんじゃないかと思ってしまう。
「疑ってるのか?」
「別に……」
そうだ、と頷く事も出来ずに、僕は曖昧に否定した。
ハクは、表情アイコンをあきれ顔に変えて、メッセージを流した。
「特殊イベントで、強制移動させられた場所なんだぞ? 何も企みようがないだろう。そんなつまんない事考えてないで、俺とパーティーを組め」
「え! やだよ!!」
命令系で言われて、僕は即座に断った。
「お前が断っても、関係ない。もうパーティー登録した」
「ええーっ!?」
気がついたら、この場限りのパーティー登録がなされていた。
どうやら、相手の意思にかかわらず一方的に登録できるように、今回のイベントでは設定されているらしい。
そして登録解除も、同様に出来るようだけど……。
「制限時間が設定してあるんだ。パーティーの相手を探すのに時間を使うなんて馬鹿げている。そうだろう?」
「それは……そうかもしれないけど」
ハクの言う事は一理あるけど、なんだか納得できないなあ。
「贅沢なヤツだな。俺じゃ不満だとでも?」
「うん」
「……言うようになったな、フユ」
怒ったような台詞だけど、たぶんハクは面白がっている気がする。
……少なくとも、溝口だったら、唇の端をゆがめて、企んでるような顔で笑っていそう、というか。
こんなことが容易に想像がつくくらいには、リアルで溝口と接触を持ってしまったのは、どうなんだろう……。
リアブレ内では久しぶりのはずなのに、全然、久しぶりって感じがしない。
それはきっと、ハク……溝口も、同じなんだろうな。
と、そこまで考えた時。
後ろで、パソコンのモニターがパッと光った。
何かが表示されている。
四角います目に、虫食い状態で数字が記入されている。
これは、何だろう……?
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