Close encounter―real blade―


chapter3-2.Student Council Room


「ナンプレだな」

 僕の心の声が聞こえたかのようなタイミングで、メッセージウィンドウにハクの言葉が流れた。

「ナンプレ?」
「ナンバープレース。数独と呼ばれることもある。パズルの一種だよ。知らないのか?」
「言われてみれば、雑誌か何かで、見たことがあるような……」
「3×3のブロックに区切られた、9×9のます目に、1から9までの数字を重ならないように入れるパズルだ」
「ハクは、やった事、あるの?」
「まあ、暇つぶし程度にはな。これが表示されたってことは、解けと言うことなんだろう」
「え、どうしよう! 僕、これやった事ないよ!?」
「心配しなくても、お前には期待していない。俺が解く」

 ハクはそう言うと、ます目に数字を埋めていった。
 その通りなんだけど、いちいち引っかかる言い方するよな、ハクって……。
 僕がちょっぴり凹んでいる間にも、ハクはつまることなく数字を次々と埋めていく。
 暇つぶし程度にしかしたことがない、なんて思えないくらいのスピードで。

「終わった」

 あっという間に、虫食い状態だったます目に、全部数字が埋まっていた。
 タテ、ヨコ、太枠の3×3ブロック。
 すべてに、1〜9の事なる数字が入っている。
 なるほど、こういうパズルなんだ……。

「色が違う数字が表示されたな。これが、次のヒントか……?」

 ます目に全部数字が埋まった後、3つの数字だけが、赤く光っている。
 512。3けたの数字だ。

「この数字に、覚えはあるか? 学校の何かに関連する数字ではあるんだろうが……」

 ハクの問いかけに、僕は頭をひねった。
 パズルにはノータッチだったのだから、ここでは何か少しくらい、いいところを見せたい。
 512、512……。
 なんだろう、どこかで見たことのあるような数字なんだけどな。
 どこだっけ……?
 僕は、辺りに目をさまよわせながら、必死に考えた。
 そして、目の端に、生徒会室のロッカーが映ったところで、思い出した。

「ロッカーの番号! これ、部室棟のロッカーの番号だと思う」

 それも、バレー部の部室にある、僕のロッカーの番号じゃないか!

「ああ……。部室棟のロッカーは、部ごとに最初の番号が決まって、下2桁が個人の番号だったな」
「うん。それで、最初の番号が『5』だから、バレー部だと思う」
「そうか。お前の部か。それで思いついたんだな」
「そういうんじゃなくて! 他に3ケタで番号振ってるような数字がないってだけで……。クラスのロッカーや下駄箱は、学年、クラス、出席番号で4ケタだろ?」
「でも、5が、バレー部に割り振られた数字なのは知っている、と?」
「クラスに、バレー部のヤツがいるから……」

 これは、嘘じゃないし。
 クラスにいるバレー部員は、僕だけじゃない。
 だけど、これ以上この話題が続いたら、ボロがでそうだ。
 僕は、ムリヤリ話題を変えた。

「とにかく! バレー部の部室に行ってみよう!!」
「そうだな。時間もないし」

 ハクは拍子抜けするくらいあっさりと頷くと、さっさと生徒会室を出て行った。
 なんだか、遊ばれている気がするんだけど、被害妄想だろうか?


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