Close encounter―real blade―


chapter4-3a-1.Music room


「わかった! ジェイクも気をつけて!!」
「おうっ! おきつね様の威力を見せつけてやるよ……!!」

 ジェイク、それはちょっと、違うと思うよ?
 と、メッセージを打ち込む間も惜しく、心の中だけで突っ込んで、僕フルートに対峙した。
 あんなに回転しながら向かって来られたら、フルートだって立派な武器だな。
 グランドピアノほどは、重量がないのが救いだけど。
 法術師の魔法は、回復魔法がメインだけど、一応攻撃魔法も少しは使える。
 ジェイクとパーティーを組むようになってから、レベルも多少は上げたから、仕える魔法の種類も増えたんだ。
 A定食のおかげで魔力もアップしたし、こないだ覚えたばかりの水の魔法を使ってみようかな。

「ウォータスプラッシュ!」

 水しぶきが、僕に襲いかかってきたフルート目がけて飛んでいった。
 そのまま、フルートをくるみ込むように水の膜で覆っていく。
 フルートは暴れるように身じろぎした後、動かなくなって、ぽとりと落ちた。
 よし、なんとか倒せたみたいだ……!
 ジェイクは、大丈夫だろうか?
 振りかえって、ジェイクを確認すると……。

「うわっ! ジェイク!?」

 今まさに、グランドピアノに食べられようとしていた。
 というか、半分食べられてるし!
 僕は急いで、攻撃魔法を繰り出した。

「コールドクラッシュ!」

 ピアノが、一瞬で凍りついた。
 ジェイクが、ピアノのあぎと……もとい、蓋から這い出してくる。

「サンキュ、フユ。助かった!」
「どういたしまして。来るよ!」

 ピアノはぶるんと身を震わせて氷を振り払うと、また襲いかかってきた。
 僕は急いで、HPがレッドゾーン近くまで下がっていたジェイクに、回復魔法をかけた。

「これで、とどめだ……!!」

 ジェイクは、ピアノを叩き割るような勢いで、斧を打ちこんだ。
 
 バキィッ!!
 
 派手な破壊音が響いて、ピアノの音が止まった。
 だけど、壊れてはいない。
 また、動きだすのか……?
 息をつめてその様子を伺うが、ピアノはぴくりともしない。

「勝った……のか?」
「そうみたい」

 ピアノは、ただのピアノに戻ったようだ。

「あれ、何か落ちてる……」


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