chapter4-3a-2.Music room
床に、白いハンカチみたいなのが落ちていた。
もしかしてこれ、ピアノが襲ってくる前に見た、ピアノの上に載ってた紙みたいなヤツかな?
ジェイクが拾い上げた。
「何だった? それ」
「うーん。音符が書いてあるんだけど。楽譜?」
アイテム画面に表示された物を、確認する。
五線譜に、音符が踊っている。
確かに、楽譜だ。
そして、これは……。
「チューリップだね」
「チューリップ?」
不思議そうに問い返すジェイクに、僕は楽譜をもう一度確認してから、メッセージウィンドウに打ちこんだ。
「ドレミ ドレミ ソミレド レミレ。さいた さいた チューリップの はなが」
「ああ……! チューリップか!!」
ようやく、ジェイクにも何の楽譜か分かったようだ。
そしてここに、「チューリップ」の楽譜があると言う事は……。
「このピアノで、チューリップを弾けって事か?」
「たぶん。そうだろうね」
「よし! フユ、まかせた!」
ジェイクはあっさりと、僕に振ってきた。
すぐに何の楽譜か分からなかったみたいだし、あんまり得意じゃないのかな?
って、僕も別に、音楽が得意ってわけじゃないけど。
ドレミくらいなら楽譜も読めるし、チューリップくらいなら何とか弾けるだろう。
楽譜を見ながら、僕はピアノに近づいた。
画面が、ピアノの鍵盤に切り替わる。
最初は、ドレミ……。
一音ずつ、鍵盤を叩いていく。
「おお! チューリップの歌だ!」
「そりゃそうだよ。その楽譜通りにしてるんだから」
「えー。フユ、冷たいっ!!」
「ジェイクが大げさなんだよ」
そんなたわいもないやり取りをしつつ、僕は鍵盤を叩いていった。
最後の一音が終わると……。
『GAME CLEAR』
効果音と共に、モニターの中央に文字が表示された。
これで、今回の特殊イベントは、無事クリア出来たらしい。
「やったな、フユ!」
「うん。やったね、ジェイク!!」
僕らは、喜びを分かち合った。
ちょっと危ない場面もあったけど、何とか切り抜けられた。
それはやっぱり、ジェイクと一緒だったからだと思う。
そんな僕の想いが、聞こえたみたいなタイミングで、ジェイクのメッセージが目に飛び込んできた。
「やっぱ、いいな。フユと、一緒だと」
「うん。僕も」
「そっか。へへ……」
ジェイクが、笑顔の表情アイコンに切り替えて、頷いた。
モニターのこちら側で、僕は自然と、笑みを浮かべていた。
リアブレをプレイしていて、こんな心地よい達成感を覚えたのは、ジェイクとパーティーを組むようになってからだ。
「楽しかったな、フユ」
「うん」
「今度……。いつか、一緒に、うどん、食おうぜ。あ、ラーメンでもいい」
「そうだね、いつか、」
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