Close encounter―real blade―


chapter4-3b-2.Music room


「ごめん、ジェイク……」

 僕は申し訳なさいっぱいで、ジェイクに謝った。
 ジェイクはあれから1人で、何とかピアノを倒し、フルートを蹴散らしてから、僕を蘇生してくれた。
 だけど、2人でパーティーを組んでのイベントだったから、当然……。

『GAME OVER』

 無情な効果音と共に、ゲームオーバーの文字が表示された。
 あの時、素直にジェイクの言う事を聞いて、フルートに備えていたら……。
 後悔しても、終わってしまったイベントは、もうどうにもならない。

「いいって。気にするなよ、フユ」
「だけど……」
「あのフルートがあんなに攻撃力高いなんて、予想外だったしさ。ピアノに食われそうになってた仲間がいたら、俺だってそっちを優先させるって思うし。つか、俺も死ぬとこだった」

 ジェイクが、軽い調子でメッセージを流してくる。
 気を遣ってくれている彼に対して、これ以上謝るのはかえって悪いように思えて、僕は話題を切り替えた。

「音楽室って、意外と凶器になりそうなもの、多かったんだね」
「そこの準備室、一通りの楽器が仕舞われているんだっけ? ドラムにつぶされてたかもしれないんだな」
「シンバルに、挟み撃ちにされたりとか?」
「うわー、それはちょっと勘弁してほしいな。シンバルに倒される戦士とか」
「カスタネットよりはいいと思う」
「カスタネットが、どうやって攻撃してくるんだよ!」

 そんな風に、凶器になりそうな楽器について、ひととおり話している内に、明るい雰囲気になった。
 負けても、いつまでも引きずらなくて済むのは、いいな。
 次に、また頑張ろう、って思えるから。

「俺、しばらくピアノ触れなくなりそう」
「ピアノが噛みついてきそうで?」
「うん。ピアノ、ちょーコワイ!!」

 泣き顔の表情アイコンでジェイクが言うのに、僕はモニターのこちら側で、声をあげて笑った。
 メッセージウィンドウに、文字を打ちこんだ。

「その時は、僕が助けに来るよ。フルートに、襲われてる最中じゃなかったら、だけど」
「うん。待ってる。すげー待ってる!」


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