*従者総愛人化計画〜前編*



朝もやの中、鳥のさえずりに送られて、村はずれの宿屋を出ると、白鳳一行は足取りも軽く私邸を目指した。果てしない旅の途中に訪れたひとときの休息。もうすぐ自宅でのんびりくつろげるのだ。屋敷には捕獲した数々の男の子モンスターのみならず、不本意な形で別れざるを得なかった仲間も待っている。目的地へ近づくにつれ、誰もが無意識のうち、早足になっていた。
「あれが白鳳さまの屋敷ですね」
「そうだよ。まじしゃんは初めてだっけ」
「はいっ。白鳳さまの家にお邪魔できるなんて、今からワクワクしちゃうなあ」
男の子モンスターを住まわせることを考え、周囲に人家のない場所を選んだので、遠目にも荘厳な建物の全景が見える。食料や雑貨の調達が不便なのは否めないが、モンスターたちにとっては豊かな自然に囲まれた理想的な環境だ。最初は彼らだけを残して出掛けるのに抵抗を感じたけれど、主人の言いつけは素直に守るし、適材適所で巧みに仕事を割り振り、館の生活をそれなりに切り回していた。
「・・・・向こうから何か聞こえませんか・・・・」
「鳥の声とも風の音とも違いますね」
「うむ、我々を呼んでいるみたいだが」
「きゅるり〜」
「どれどれ」
周囲の状況に敏感な従者たちに指摘され、注意深く耳を澄ますと、聞き慣れたひょうきんな声音が飛び込んできた。道の彼方に目を凝らすと、身体の半分くらいの容器を抱えた虫が、瞬間移動顔負けの早さで急接近して来るではないか。
「はくほ〜っ!!みんな〜っ!!」
「ハチっ」
「ハチだ」
「きゅるり〜♪」
「蜂蜜集めの最中なのに、迎えに来てくれたんですね」
見開いたどんぐり眼から、いくつもの涙の粒が空に放たれた。仲間との再会が心底、嬉しくて堪らないのだ。容姿は観賞用とはほど遠いものの、邪気がなく懐っこいところは実に愛らしい。サイズが違いすぎるので、残念ながら手を取り合ってとはいかないが、一同は満面の笑顔と共に、互いの無事な姿を喜び合った。
「会いたかったぞー」
「きゅるり〜」
「ただいま、ハチ」
「わざわざ出迎えてくれるなんて嬉しいなっ」
「相変わらず元気だねえ」
「蜂蜜玉飲んでっからな。みんなの分もしこたま作ったー」
両手でしっかと抱いた小瓶は、すでに飴色の液体で充たされていた。私邸に来てからも、ハチは毎朝、甲斐甲斐しく蜂蜜収集に励んでいたのだろう。
「・・・・荷物があるなら、屋敷に戻っても良かったのに・・・・」
優しく言いかけると、フローズンはちっこい両手を解放すべく、おもむろに容器を受け取った。手ぶらになったハチはスイの隣、すなわち白鳳の左肩へ着地した。
「でへへ、はくほーたちの匂いがしたら、居ても立ってもいられなくなっちった」
「匂いだって?」
「おうっ、オレ、すぐ分かったかんな」
腰に手を当て、誇らしげにえへんと胸を張るハチ。道中でも1キロ以上離れた場所の果実や料理の匂いを察知して、白鳳たちを驚かせることが何度もあった。もはや、単なる食いしん坊では片付けられないレベルだ。ひょっとしたら”はぐれ”の能力が、徐々に開花してきたのかもしれない。



仲睦まじいハチとスイのじゃれ合いを、目を細めて見守る白鳳主従。しばらくご無沙汰だった光景がひとつ戻っただけで、心がほんわかと暖かくなる。だが、まだフルメンバー揃ったわけではない。パーティーを救うため、力を使い果たしてリタイヤしたDEATH夫の状態が気掛かりだ。フローズンに瞳で促され、白鳳はやや強ばった顔で問いかけた。
「ハチ、DEATH夫は」
「寝てるー」
全員の表情が瞬時に重苦しく沈んだ。確実に快復していると思ったのに、封印の呪縛は予想以上に強固で解き難いものらしい。
「・・・・床離れも出来ないのですか・・・・」
「うんにゃ。ですおはすっかり元気になって、毎日館の裏でトレーニングしてるぞ。ただ寝ぼすけなだけだ」
DEATH夫を心配するあまり、穿った解釈をしてしまった。単純に言葉通りの意味だと悟り、一同はほっと安堵の息を吐いた。そよ風になびく草の音がさわさわと耳に心地よい。
「そう言えば、DEATH夫は宿屋でもいつも昼近くまで寝てたっけ」
「トレーニングを欠かさないくらいなら、長旅も支障がなさそうですね」
「うむ、本当に良かった」
「・・・・ええ・・・・」
「きゅるり〜」
十分心身を癒して、私邸を後にする時は、6人と2匹で出立できるに違いない。寂しいとはあるべきものが存在しない状態だと、この2週間余りの日々で思い知らされた。輪の中でおどけるハチばかりでなく、外でそっぽを向くDEATH夫もいてこその白鳳団なのだ。
「ところで、ハチはDEATH夫と友達になったのかい」
不意に次の話題を振られ、ハチは短い首を捻りつつ、おぼつかない表情で呟いた。
「ん〜、どうかなあ」
「・・・・会話くらいするでしょう・・・・」
「あんま話はしてくんない」
いかにも残念そうに口をぎゅっと引き結んだ。悲しいかな、大切なリングを探してきた功績も、さして評価されていなかった。
「うし車からずっと一緒だったのに冷たいねえ」
「持って生まれた性格はそうそう変わらないですから」
確かにDEATH夫が突然、愛想良くなって、ハチと意気投合する姿など想像不可能だ。頑張っているハチには酷だが、時間をかけて粘り強く氷の心を溶かすしかあるまい。しかし、まんまるほっぺを紅潮させて付け足した一言が皆を驚愕させた。
「でもなっ、トレーニングの手伝いをしたり、一緒に寝たりしてるぞー」
「えええっ?!」
朝の清々しい空気を切り裂いて、素っ頓狂な叫びが綺麗にハモった。
「一緒にって、同じベッドで就寝してるの?」
「あたぼうよ」
小気味よい腹鼓がぱぁんと鳴った。
「そ、そんなあ」
ハチ相手では何度床を共にしようが、××の仲に進展するなんてあり得ない。にもかかわらず、白鳳はなぜか凄まじい敗北感に襲われ、その場に膝をつきそうになった。冷淡な魔界のマスターから略奪する機会を虎視眈々と狙っていたのに、まさかへちゃむくれの虫に先を越されるとは。
「よくDEATH夫が許してくれたねっ」
「でへへ、多分、ですおは知んない」
怪訝そうな面持ちを隠さないまじしゃんに、ハチはペロリと舌を出して肩を竦めた。
「・・・・知らないって・・・・」
「きゅるり〜」
「いったいどういうことだ」
胸に浮かんだ疑念を解消すべく、オーディンが問いかけた。待ってましたとばかり、ハチは身振り手振りも加え、明るく状況説明を始めた。
「オレ、いったん寝てから、夜更けにこっそり奥の部屋まで移動して、ですおの横にもぐり込むんだー。そんで、朝、ですおが起きる前に蜂蜜集めに出発してる」
「・・・・・・・・・・」
ハチの行動をどう判断したら良いか途方に暮れ、白鳳主従はしばし押し黙った。要するにDEATH夫の許可云々以前の問題で、相手が眠っている隙を突いて、一方的に添い寝しているに過ぎない。
「それ、一緒に寝てるって言わないんじゃ。。」
「そっかなあ」
「・・・・いいえ、ハチの感覚は間違ってないと思います・・・・」
「え」
DEATH夫と最も近しいフローズンだけに、一同は意外に感じながらも、彼の主張に耳を傾けた。賛同されて嬉しいのか、ハチの鼻の穴がぴくぴく動いている。
「・・・・DEATH夫は戦闘に特化した身体能力を有していて、たとえ睡眠中でも侵入者を察すれば、即座に目覚めるはずです・・・・」
不時の危難に備え、基本的に眠り自体が浅いのだ。宿で常にフローズンと同室なのも、他の者とでは警戒心が勝って、十分な休息が取れないことを懸念した部分が大きい。
「・・・・ハチが隣にいるのにぐっすり寝入っているのは、それだけ心を許している証拠です・・・・。・・・・確実に仲良くなっています・・・・」
ハチにまるっきり戦闘能力がないという要素も、この場合プラスに働いているようだ。
「おおおっ、やた〜っ♪」
「きゅるり〜♪」
フローズンに認められ大喜びのハチは、スイも交えて紅いチャイナ服の肩先で踊り回っている。2匹の可愛らしい仕草に見入るパーティーだったが、白鳳は屈託なく楽しめなかった。ハチの説明の中で気になる単語があったから。
「ねえ、ちょっと聞いていいかな」
「どした、はくほー」
「さっき、奥の部屋って言ったよね」
留守番の男の子モンスターたちは、5〜6人ごとに一室を与えられ、生活しているが、部屋は全て居間の周辺に存在する。奥にあるのは館の主人たる自分の部屋だった。
「おう、ですおは奥の綺麗な部屋のふっかふかのベッドで眠ってるぞー」
「何だってえっ」
白鳳の細い眉がきゅっと釣り上がった。当然のように主人の自室を使うなんて、どこまでお高く振る舞えば気が済むのだろう。自分に甘く他人に厳しい白鳳は、一瞬激怒したけれど、よくよく考えれば、こんな美味しい状況はないと気付いた。
(誘うまでもなく、ベッドで待ってるんだもんね〜)
相手が体勢を立て直す前に、××の悦楽に引きずり込んでしまえばこっちのものだ。まさに千載一遇のチャンスではないか。屋敷を前にして、ぼやぼやしてる暇はない。直前までの怒りはどこへやら、むしろ優雅な笑みさえ浮かべると、白鳳は歌うごとく奏でた。
「じゃあ、さっそくDEATH夫を起こしてあげなきゃv」




パーティーが門の前に到着するやいなや、重厚な扉が左右に開き、男の子モンスターたちが総出で迎えてくれた。新たに捕獲したモンスターだけ、一足先に送り届けたので、居残り組も主人の帰宅が間近だと分かっており、窓から人影をチェックしていたらしい。
「お帰りなさいませ、ご主人様」
「お土産どこですかっ」
「ご主人様、遊んで、遊んで〜」
「また旅のお話して下さい」
「うん、あとでね」
満面に笑みを湛えてまとわりついて来る、可愛いしもべたちの相手をしてやれないのは心苦しいが、正直、今はDEATH夫を手込めにする算段で頭が一杯だ。押し寄せる男の子モンスターの波を通り抜け、白鳳は小走りで自室へ向かった。弟はすでにオーディンに預けてある。安定感なら一番の逞しい肩の上で、ハチとふざけて小突き合っていることだろう。
(これが従者総愛人化計画の第一歩。DEATH夫さえ陥落すれば、フローズンだって覚悟を決めるかもしれないし、後はなし崩しに・・・・・うっふっふ)
せっかく美形のモンスターを5人(虫除外)も侍らせて旅しているのに、未だ清い関係のままだなんて間違っている。世界中の良いオトコは自分の愛人にならなければ嘘だ。こんな自己中な論理を展開させつつ、廊下の奥まで進むと、白鳳は五感を集中させ、中の気配を探った。気の動きはこれっぽちも伝わってこない。
(しめしめ、DEATH夫はおねんね中と見た)
連れの男の子モンスターと懇ろになるべく、様々な計画を練ったけれど、聡明な彼らにことごとく見破られ、結構痛い目にも遭ってきた。でも、最後の詰めさえ誤らなければ、今度こそ上手く行くはずだ。扉をわずかにずらし、白鳳は隙間から室内に滑り込んだ。抜き足差し足でベッドへ近づく。
(いつも不機嫌そうにしてるから、寝顔でも優しく見えるね)
瀕死の状態で寝込んでいた時を思えば、顔色も気の勢いも段違いだ。これなら依然みたいに、パーティーの一員として旅が続けられよう。もっとも、解呪と異なり、現状は萎みきった風船を目一杯脹らませたに過ぎない。時が経てば風船から空気が抜けていくごとく、いずれ限界が来て、DEATH夫はまた苦しむことになるのだ。その前に主人と再会が叶い、何らかの対応をしてもらえると良いが。
(ま、仮に再会したとしても、DEATH夫はすでに私のモノ。よく”悪魔のような貴方”というけど、私の魅力は悪魔以上だからねえ♪)
己の勝手な決めつけに酔って、ひとりうっとりする愚かな主人を、金の瞳が冷ややかに見つめている。いきなり尖った光に射抜かれ、白鳳は思わず硬直した。いつの間に目覚めてしまったのか。
「げげっ」
「なぜ、お前がいる」
「お、お、起きちゃったの。。」
「当たり前だ」
ハチにもぐり込まれても熟睡してるくせに、こんなの詐欺だ、インチキだ。白鳳は内心、歯噛みして地団駄を踏んだ。いかがわしい行為に及ぶ前なのが、せめてもの救いだった。下手にキスなど仕掛けていたら、全快したDEATH夫にこてんぱんに叩きのめされていたに違いない。
「帰ってきたからに決まってるだろ。だいたい、ここは私の部屋なんだけど」
「ふん、趣味の悪い調度品だな」
「・・・・・皆、居間でDEATH夫が来るのを待ってるよ。顔くらい出したら」
心の狭い白鳳に似合わず、容赦ない悪口をぐっと堪えたのは、自らに後ろ暗い部分があるからだ。部屋に入った理由を深く追及されることは避けたかった。
「別にヤツらの顔など見たくない」
「フローズンが凄く心配していたけどな」
「分かった」
他者に冷淡なDEATH夫でも盟友の名を出されると弱いらしい。面倒そうに床から出ると、ずれたタイとペンダントの位置を直してから、おもむろに帽子を被った。ベッドを整える白鳳を置き去りに、すでに出口まで歩を進めている。
「さっさとしろ」
「う、うん」
ドアノブに手をかけ、紅いチャイナ服へ睥睨するような視線を流した。これではどちらが主人か分からない。一介の男の子モンスターの身で、上級悪魔の側近をしていただけのことはある。
(はあ、妙な威圧感があるんだよね、このコ)
けれども、ムダに前向きな白鳳は、まだ従者総愛人化計画を諦めていなかった。自室でのアプローチはおまけみたいなもので、真の切り札を使うのはこれからだ。取っておきの最終兵器が発動した場面を妄想すると、死神のムカつく言動も我慢できた。




居間に黒ずくめのシルエットが到着した途端、清しい紺袴が真っ先に飛び出してきた。フローズンやハチならともかく、DEATH夫に一方的に毛嫌いされている神風がねえ、と白鳳が訝しがる間もなく、眼前でぺこりと頭を下げられた。
「白鳳さまっ、すみません」
「どうして神風が謝るんだい」
「いえっ、白鳳さまのことだから、起こすのにかこつけて、DEATH夫を無理やり襲うんじゃないかと思ってました。本当に起こしに行ってたんですね」
(ぎくうっ)
伊達に旅の初期から付き従っていない。主人の単純な思考回路は、一から十までお見通しだった。万が一、白鳳がいつまでも居間に戻らなければ、フローズンとオーディンを連れ、奥の部屋に乗り込んできたかもしれない。従者総愛人化計画の最大の障害となりうるのは、間違いなくこの従者だ。
「と、当然だよ。ひどいなあ、神風」
内心のどきどきを必死で抑え、白鳳は精一杯の作り笑顔を浮かべた。幸い、他のメンバーはリタイアしていたDEATH夫の登場に注目して、ふたりの会話を聞いていなかったみたいだ。
「来たなっ、ですおー」
「きゅるり〜」
「DEATH夫、ただいまっ」
「また、よろしく頼むぞ」
「・・・・只今、帰りました・・・・」
友の健在な姿を見て、嬉しげに微笑む雪ん子のみに、DEATH夫は一瞬、穏やかな眼差しを向けた。が、すぐに険しい面持ちになると、抑揚のない口調で言い捨てた。
「たった2匹捕獲するのに、随分時間がかかったものだな」
「!!」
ハチとDEATH夫が乗ったうし車を見送って、すでに2週間近く経っていた。だけど、捕獲は相手があることだから、机上の計算通りに行くとは限らない。DEATH夫とて短くはない道中で、十分理解しているはずだ。彼の悪意のある物言いに慣れてはいるが、さらりと受け流すには全員、あまりに疲れすぎていた。一同の周囲に不穏な空気が漂い始めたのを感じ、フローズンが可憐な唇を開いた。
「・・・・そんな言い方をしては・・・・」
が、双方の立場を立て、かつ場を収められる上手い表現が見つからない。どう収拾をつけたら良いか、困り果てる雪色の肌を掠め、ハチがひょっこりしゃしゃり出た。
「みんなっ、違う違う」
誇らしげに胸を張っても、ぽっこりせり出すのは腹だった。
「ですおが言いたかったのはなっ、やっぱパーティーにゃ、ですおとオレがいなきゃダメってこった」
「え」
最初はあっけに取られた白鳳主従だったが、じっくり及び好意的に検討してみれば、ハチの発言内容は決して的外れではない。
「うん、全員揃っていれば、もっと早く捕まえられたよねっ」
「きっと究極の婉曲表現なんですよ」
「なるほど、DEATH夫の言葉は、表層的に受け取ってはいかんのだな」
「とことん素直じゃないからなあ」
「きゅるり〜」
皆の同意を得てハチはすっかりお調子に乗り、止せばいいのに短い人差し指をちっちっと振りながら付け加えた。
「どうせ、はくほーがまたへっぽこなことをして、遅くなったんだろ」
白皙のこめかみがピクリと反応した。
「へっぽこ一代が何を言う」
「あてっ」
たおやかな手が一閃して、ハチは背中からカーペットに墜落すると、でんぐり返しよろしくころころ転がった。3日と置かず同じ災難に遭うくせに、ちっとも学ばない虫を、フローズンが静かに掌へ乗せた。
「・・・・大丈夫・・・・?」
「おうっ、いつもですおに鍛えられってっから」
「・・・・ありがとう、ハチ・・・・」
「別に礼を言われることしてないぞー」
「・・・・ハチの素敵な解釈のおかげで、険悪な雰囲気を避けられました・・・・」
「うんにゃ。オレにはマジでそう聞こえたかんな」
にぱっと格好を崩すと、自信満々で言い切った。DEATH夫はハチのおめでたさに呆れ果てた様子で、視線を窓の外に逸らしている。
「ハチの3グラムの脳みそも侮れないねえ」
詫びのひとつもしなかったけれど、白鳳は直前の形相とは打って変わった和やかな顔で、ちっこい頭を何度か撫でた。
「でへへー」
太めの眉を八の字に寄せ、ハチは情けない顔で照れ笑いをした。事あるごとにどついてばかりだが、白鳳とて内心は掛け替えのないムードメーカーだと高く評価している。苦しいとき、悲しいとき、荒んだとき、ハチの屈託ない笑顔や一言に、パーティーが何度救われたことか。おへちゃな食いしん坊にしか見えないこのコを同行させた、己の慧眼を褒めてやりたい気分だった。




TO BE CONTINUED


 

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