*優しい繋がり〜7*



生い茂った木々の合間から注ぐ光が、大鎌を振りかざす死神をうっすら照らす。足元にうごめくのは、ロープでぐるぐる巻きにされた密売団の5人だった。意識を取り戻した途端、ギロチンを思わせる刃を突き付けられ、男たちは真っ青な顔で震え上がっている。
「ひぇぇぇぇ」
「お、お助けを」
「うああ」
「な、な、何でもするから、殺さないでくれーっ!!」
闇市場のアイテムを奪われた今、さしたる戦闘技能を有さない彼らは、一般人と変わりない。無辜な男の子モンスターを食い物にする輩に、悪魔の使徒へ立ち向かう気概があるはずもなく、全員、ひれ伏して許しを乞うばかりだ。恐怖で醜態を晒す獲物を、冷たく見据えるDEATH夫へ、神風を従えた白鳳は、声を荒げて問いかけた。
「DEATH夫、どういうつもり?」
「ヤツらはここで始末する」
「えええええっ、なぜ!?」
「希望通りにしてやるんだ。感謝しろ」
やはり、白鳳主従の短いやり取りが、遺伝子レベルで刻まれた本能を刺激してしまったらしい。”DEATH夫”の役目は、死者の魂を狩り集め、マスターへ届けること。一般のDEATH夫でさえ、殺戮への欲求は強烈なものがある。にもかかわらず、上級悪魔の側近たるレア種を、非常時以外殺しをさせず、長年連れ歩けたのは、奇跡に近い僥倖だと、白鳳はようやく気付いた。いかに、悪魔界から放逐された身とは言え、種族の特性を考えれば、もっと危機感を持つべきだった。でも、根が能天気なだけに、仲間の真摯なアプローチが、氷の心を溶かしつつあると、白鳳はすっかり楽観していた。事実、最近のDEATH夫は馴れ合いこそしないが、皆の和を乱す言動は取らなかったのだ。
「ちょ、ちょっと待ってよ。あれは言葉のあやで」
「斬首しようが、八つ裂きにしようが、金は貰える」
手配書には生死を問わず、捕らえた者には報奨金を払うと書いてあったっけ。事務能力皆無のくせに、妙な部分をピンポイントで覚えている。だが、白鳳が必死に訴えているのは、無論、金銭のためではない。たとえ、マスターと認めてもらえなくても、悪魔界へ戻る日までは、彼にお供のひとりでいて欲しい。郷に入っては郷に従え。白鳳パーティーでは、非情のルールは通用しない。強者揃いのメンバーではあるが、戦闘はあくまで捕獲が目的で、後は降りかかる火の粉を払えればいい。属性に任せた無益な殺生は、断固、阻止しなければ。
「お金の問題じゃないの。いくら悪者だって、我々が勝手に裁く権利はないでしょ」
「ふん、こんな連中は生かしておく価値はない」
DEATH夫は弱者を軽蔑こそすれ、労りの感情は皆無だ。ゆえに、密売組織が同胞を迫害した事実を憤慨しているのではない。恐らく、修行もせず、闇アイテムに頼った怠惰さと、敵に命乞いするプライドのなさが、己にも他者にも厳しいDEATH夫の逆鱗に触れたのだろう。
「こいつらのしでかした事はムカつくけど、処罰は専門機関に委ねるのが妥当だよ」
「面倒だ、俺がケリを付けてやる」
「ダメ!!私が許さないっ!!!!!」
DEATH夫が鎌を振り上げたのを見て、白鳳はなりふり構わず絶叫した。どんなに悪辣な犯罪者でも、DEATH夫に人殺しをさせたらお終いだ。白鳳はがばと両手を広げると、縛られた5人を庇うように立ちはだかった。



真っ向から対峙する赤と黒を、やや離れた場所で見遣る神風だったが、もう、傍観者でいられそうにない。可能ならば、白鳳自身の力で、解決の糸口を掴ませたかったけれど、交渉難航を目の当たりにして、神風はさり気なく主人の真後ろへ移動した。
(相変わらず、白鳳さまは無茶をする)
一旦、こうと決めたら、後先考えず突っ走る困った暴れうし。長年付き従って来て、白鳳の気性は誰より熟知している。密売団の助命など、白鳳はこれっぽちも眼中にあるまい。もし、DEATH夫がヤツらを惨殺したら、人間のお供としては不適格とせざるを得ない。DEATH夫の進退は、フローズンの去就に直結するし、フローズン不在のパーティーに、オーディンが留まる保証はない。DEATH夫の暴走を阻止出来るか否かは、実のところ、パーティー存続を左右する問題で、だからこそ、白鳳は我が身を投げ出して、止めに入ったのだ。しかし、残念ながら、白鳳の本気がDEATH夫に通じるとは限らない。悪魔界のルールで染まった彼の価値基準は、人類のそれとはかけ離れている。なまじ、度胸を出したばかりに、魂を狩られる羽目に成りかねない。
(DEATH夫の攻撃を受けられるよう、万全の準備をしておこう)
最悪の事態に備え、神風は早くも主人の盾となる覚悟を決めた。口を真一文字に引き結んだ神風は、単衣の上から胸の勾玉をそっと握り締めた。
「そこをどけ」
DEATH夫は白鳳に尖った眼差しを向けると、抑揚のない口調で命じた。
「DEATH夫こそ、武器を下ろしなさい」
白鳳も怯まず、切り返したが、DEATH夫は大鎌をかざしたままだ。腐れ××者にマスター面され、機嫌を損ねたのか、DEATH夫はつっけんどんに吐き捨てた。
「俺はお前の従者ではない。お前の命令は聞かない」
「私のパーティーと道中を共にする以上、私の方針に従ってもらうよ」
相手の迫力に気圧されず、きちんと見解を主張しなければ。事務能力皆無なDEATH夫が、単独で旅を続けるのは難しい。優秀な仲間と袂を分かつのは、本意ではないはずだ。それに、損得勘定を抜きにして、白鳳はDEATH夫に無益な殺生をさせたくなかった。
(紆余曲折あったけど、DEATH夫は私たちのため、結構、頑張ってくれたよね)
ダンジョンでは鬼神のごとく敵をなぎ倒し、禁断の封印を解けば、異界の魔物すら寄せつけなかった。白鳳や他のメンバーとの関係も、神風を除き、すっかり良好になった。諸国での様々な出来事を通し、DEATH夫にも情のようなものが芽生えかけている。こちらの心情を包み隠さず伝えたら、きっと納得してくれるに違いない。白鳳はDEATH夫との月日の積み重ねを信じていた。が、傍で控える神風は、白鳳の気持ちが分かるだけに、かえって不安を募らせた。
(人の形をしていても、男の子モンスターは人間とは違います)
種族固有の性質は絶対的なもので、他者の説得ごときで変えられやしない。ましてや、彼は上級悪魔に天賦の才を認められたエリートなのだ。生来の欲求に火がついたからには、白鳳の言を素直に受け容れるとは思えない。案の定、DEATH夫は応答の代わりに、半月の刃を白鳳の眼前へ突き出した。
「どかなければ、お前も一緒に切り刻む」
「やれるものなら、やってみな」
鎌の切っ先が不気味に光り、白鳳はごくりと息を飲んだ。でも、表面上はあくまで強気を装い、DEATH夫を上目遣いで睨んでいる。思い遣りが裏目に出て、窮地に立った白鳳を見かね、神風は完全に戦闘モードへ移行した。チャイナ服の背後へ清しい残像を残し、神風は不意に、DEATH夫の正面へ歩み出た。
「白鳳さまに危害を加える者は、誰であろうと許さない」
主人を守護することこそ、己に課せられた使命だ。白鳳が無傷で解放されるのなら、DEATH夫に膾にされても構わない。強い決意を込め、神風はDEATH夫を瞬きもせず、見据えた。



予期せぬ諍いにより、処刑数秒前で延命した密売団の連中は、未だ状況が飲み込めず、あんぐり口を開けたままだ。あっけに取られる雑魚を尻目に、DEATH夫と神風は激しい火花を散らし、視線を絡め合った。
「お前ごときに邪魔はさせん」
「私の命に替えても、白鳳さまは護り抜く」
神風は何もDEATH夫を倒すのが目的ではない。仲間が到着するまで、耐え抜けばいいのだ。一定時間、白鳳を庇って、DEATH夫の攻撃を凌ぐだけなら、能力差はあっても、どうにか太刀打ち出来よう。
(蜂蜜玉のおかげで、8割程度、力は戻った。必ず白鳳さまを護ってみせる)
先程まで心身を苛んだ倦怠感は、綺麗さっぱり消え失せた。意欲に満ち溢れているためか、蜂蜜玉の効用とは別に、内なるエナジーが湧き上がって来る。しかし、DEATH夫は本調子に程遠い神風を、歯牙にもかけなかった。
「口だけなら何とでも言える」
「口だけかどうか、試してみれば分かる」
「ふん、わざわざ命を賭けて、人間を護る馬鹿がいるものか」
「!!」
真摯な忠誠心をあざ笑われ、神風の表情があからさまに険しくなった。即座に、DEATH夫へ矢を射かけそうな神風を、白鳳がやんわり押しとどめた。
「ありがとう、神風の誠意は嬉しいよ。だけど、これは私とDEATH夫の問題なんだ」
「しかし、このままでは白鳳さまがっ」
従者の揺るぎない真心は、白鳳をいたく感激させたが、幸福に浸る余裕はなかった。封印弾のダメージが抜け切っていない神風に必要なのは、十分な休息だ。DEATH夫との抗争の巻き添えにするわけにはいかない。
「大丈夫。私だって、伊達にマスターやってないって」
「白鳳さま・・・・・」
なおも顔を曇らせる神風へ、艶やかに微笑みかけると、白鳳は再び、DEATH夫と向き合った。大鎌の洗礼が怖くないと言えば嘘になるが、恐怖が一定のラインを超え、逆に度胸が据わったらしく、不思議と胸は騒がなかった。傍らの神風の存在も、白鳳にとって、大きな力となっていた。
「レベル外のゴミを殺したところで、魂に価値はないし、第一、鎌の汚れじゃない」
誇り高いDEATH夫は、真の強者を倒すことに、意義を見出すタイプだ。脆弱な輩を相手にする無意味さを説けば、ひょっとして、目が覚めるかもしれない。白鳳の発想は決して的外れではなかったが、DEATH夫は耳を傾けようとしなかった。抑えて来た殺戮への欲求が爆発して、もはや対象は誰でもいいらしい。しつこい妨害に業を煮やし、DEATH夫の肢体から滝のごとく殺気が迸った。
「黙れ」
「ひっ」
魔性の眼力に影を縫われ、白鳳は指先ひとつ動かせなくなった。外見は見惚れるくらい美形でも、彼は紛れもなくモンスターだと、白鳳は改めて思い知らされた。DEATH夫と険悪な雰囲気になりかけた時もあったが、ここまでダイレクトに殺意を示されたのは、初対面の時以来だ。胸の奥を寒々しい木枯らしが吹き抜けて行く。数年間、運命共同体で過ごしたのに、未知の敵と同様に扱われ、白鳳は致命的な衝撃を受けた。
(かなり打ち解けたと思い込んでいたのは私だけで、結局、このコの本質を変えることは出来なかったのかな。。)
激しい挫折感に襲われ、茫然と立ち尽くす白鳳。主人が放心した訳を、神風は薄々察したが、ここでDEATH夫に仕掛けられたら、ひとたまりもない。神風は強引に白鳳の腕を引き、彼らしからぬ早口でまくし立てた。
「白鳳さま、落ち込む必要はありません。DEATH夫は一時的に、殲滅モードへスイッチしただけです。高ぶりが静まれば、普通に話が通じると思います」
「要するに、今のDEATH夫は殺戮で頭が一杯ってこと?」
「はい、彼にとって、密売団のみならず、白鳳さまや私も単なる獲物扱いではないかと」
「が〜〜〜〜ん!!」
諸国を巡った日々はムダではないと知り、ほっとしたけれど、DEATH夫に屠られる確率は増した気がする。さりとて、悪党を生贄に、さっさと逃走するわけにもいかない。果たして、荒ぶる死神へどう対処したら良いものか。すっかり切羽詰まった難題に、白鳳は懸命に頭を搾った。だが、血に飢えたDEATH夫が、白鳳の結論を待つはずもなく、彼は邪魔者を排除せんと、紅いシルエットへ狙いを定めた。
「まず、お前から死ね」
「ああっ」
白鳳を攻撃するはずなのに、DEATH夫の眼差しは神風に流された。人間を護るため、身を捨てるヤツなんかいない。虹彩の奥の鈍い光がそう告げる。眼で挑発され、神風の忠義の芯がかあっと燃え上がった。
「白鳳さまっ、危ないっ」
目にも止まらぬ速さで、大鎌がなめらかに弧を描いた。ザシュという不気味な音に続き、DEATH夫の透き通った頬へ、鮮やかな血潮が飛び散った。



迎えに来たハチに、神風救助の朗報を聞いた待機組は、白鳳たちと合流すべく、木々を縫ってひた走った。被害を最小限に留め、首尾良く密売組織を叩き潰せた。ハチの先導に従う男の子モンスターとスイは、誰もが晴れやかな表情で、うっすら月明かりを浴びている。
「でっかい松の木の向こうだぞー」
「きゅるり〜」
ハチが指し示した方角を、メンバーは期待を込めて仰ぎ見た。ところが、慣れ親しんだ姿を視界に入れる前に、野性の嗅覚が大気に混じった異分子を察知した。
「あり?変な臭いがすんな」
ハチの指摘で、五感を高めたオーディン、フローズン、まじしゃんは、彼方より流れる不快な臭気に眉をたわめた。
「むっ」
「・・・・血の臭いがいたします・・・・」
「本当だっ」
ハチの報告では敵味方双方、流血に至る怪我人はいなかったはずだ。しかし、実際、全員が血の臭いを感じ取っている。ハチが救援隊と別れてから、いったい何が起こったのだろう。更に、彼らを憂鬱にさせたのは、その並外れた感覚ゆえに、現場を目にしなくても、流された血が誰のものか、はっきり認識出来てしまったことだ。
「「「・・・・・・・・・・」」」
ある程度、状況を把握した一同は、幾度も目くばせをしたが、言葉を紡ぐ者はいなかった。一旦、話題にすれば、不本意な推測を認めたのと同じだ。己の五感に誤りはないと分かっていても、脳裏に浮かぶ悲劇を信じたくなかった。雑草を踏みしめる音だけを発し、黙々と松の木を行き過ぎる3人と2匹。が、道無き道を抜けた彼らへ、突き付けられた光景は、イメージと寸分違わぬものだった。
「神風っ、神風〜〜〜〜っ!!」
銀の糸を振り乱した白鳳が、横たわる神風に取り縋って、絶叫している。白い単衣は鮮血で真っ赤に染まり、投げ出された四肢はピクリとも動かない。ただ、胸元に覗く勾玉が、厳かな光を放つのみだ。脇に佇むDEATH夫の大鎌からはひっきりなしに血が滴り、血痕の付いた顔は笑っているようにすら見える。後ればせながら到着した仲間は、腰を抜かしている密売団を無視し、雪崩を打って白鳳主従へ駆け寄った。
「神風っ!!」
「こんなことってっ・・・・酷いよっ」
「目を開けてくりよう〜」
激しいショックのせいで、お供やスイの呼びかけにも、白鳳の反応は極めて鈍い。兄の注意を喚起するため、スイはまじしゃんに頼んで、自分を白鳳の左肩へ乗せさせた。チャイナ服の襟を摘みつつ、スイは力の限り、耳元で存在をアピールした。
「きゅるり〜っっ」
「!?・・・・・スイ、皆も」
弟の鳴き声で我に返り、白鳳はのろのろと顔を上げた。と、その時。凍り付いた空気を引き裂いて、痛烈な音が響き渡った。ぎょっとして振り向いたパーティーは、雪ん子の大胆な行動に目を見張った。
「フローズン!!」
「ほえ〜」
「思い切ったことを」
フローズンがDEATH夫の頬を力任せに叩いたのだ。穏やかで大人しいフローズンが実力行使に出るケースはめったにない。DEATH夫の暴挙がよほど腹に据えかねたのだろう。DEATH夫もフローズンの傷心を汲んだのか、敢えて友の平手打ちを避けなかった。
「・・・・神風を傷付けて、気が済むのですか・・・・情けない・・・・」
語尾が聞き取れなくなるに連れ、フローズンの可憐な瞳から幾筋もの涙が零れた。その落涙をきっかけに、加害者に対する弾劾が始まった。いくら、折り合いの悪い間柄でも、同士に刃を向けたDEATH夫の罪は許せない。集団行動に非協力的だったこともあり、メンバーはDEATH夫への腹立ちを隠さず、声高に罵った。
「最初から神風を助けるつもりなんてなかったんだっ」
「・・・・神風はDEATH夫を嫌っても憎んでもおりません・・・・」
「ですおのバカ野郎〜っ。かみかぜと勝負すんなら、大食い競争で戦えば良かったじゃないかよう」
「うむ、気に食わない相手を、暴力で排除するとは最低だ」
「きゅるり〜っっ」
全員から厳しく追及されても、DEATH夫は無言のまま、雲の動きを目で追っている。DEATH夫が応じなければ、裁判は成り立たず、無為に時間が経つばかり。頭から湯気を出そうな従者を宥めるごとく、白鳳はおっとり言いかけた。
「落ち着いて。DEATH夫を糾弾するより、神風の手当が先でしょ」
「!!」
「白鳳さまのおっしゃる通りだ」
「おうっ、かみかぜを元気にしないとなー」
白鳳に指摘され、同行者は冷静な判断力を取り戻した。確かに、現状では神風を治療することが最優先だ。怒りも動揺も胸の奥にしまい込み、パーティーは神風を囲んで、てきぱきと動き始めた。
「よし、俺が血止めをしよう」
「・・・・私は薬と包帯を用意いたします・・・・」
「僕は強力な快復魔法をかけるよっ」
「オレ、すぺさるすーぱー蜂蜜玉を用意すっから、スイも手伝ってくりや」
「きゅっ、きゅるり〜っ」
エンジンがかかれば、優秀な彼らの措置は早い。見る見るうちに、止血が終わり、傷口の消毒が開始されている。フローズンから正式な診断を聞いたわけではないが、出血の割に気は弱まっていないし、どうやら命は取りとめそうだ。自分の身代わりで神風が切られた時は、動転して取り乱したが、ようやく人心地ついた。ふと、忘れていた修羅場の記憶が蘇り、白鳳はポツリと呟いた。
「そうだ・・・神風は意識を失う前、DEATH夫を責めるなと言ってたっけ」
「・・・・え・・・・」
「嘘っ」
「信じられん」
「かみかぜ、いいヤツだなー」
「きゅるり〜」
「・・・・・・・・・・」
白鳳の意外な伝言は、全員の心を大きく揺さぶった。無表情を貫いていたDEATH夫さえ、目を瞬せたのを白鳳は見逃さなかった。さんざん揉めたあげく、害されたのに、神風はなぜ最後までDEATH夫を気遣ったのだろう。あまりに優し過ぎるのか、他に思うところがあるのか、彼の本音は仲間のみならず、白鳳にも読めなかった。
(神風・・・どうか、無事でいて)
残された言葉の真意は気になるけれど、今はただただ、神風に意識を取り戻して欲しい。紅唇をきつく噛み締めながら、白鳳は血の色が戻りかけた端正な面を見つめた。


TO BE CONTINUED


 

back