*ご主人ちゃま物語・渚カヲル編〜1*



渚カヲルは、愛する碇シンジの前で文字通り命を賭けてカッコつけ過ぎたばっかりに、エヴァンゲリオン初号機に握りつぶされてしまった。初号機の右手の中で1分20秒も待たされてヘビの生殺し状態にされたあげく、首チョンパ。何の実りもない一生である。
でも、こんな彼を不憫に思った神様がもう一度カヲルにチャンスを与えてくれることになった(カヲルが神様を色仕掛けでたらし込んだという噂もあるが、なにせ天界のことだし真相は不明)。


彼は、とあるマンションの一室で目覚めた。サードインパクトは起こらなかったようだ。窓から見える景色は、平和そのもの。活気溢れる朝の光景が目に飛び込んで来る。通勤や通学の人の波。それをぼんやりと眺めるカヲルだったが、ある一点で視線が釘付けになった。
「・・・・・シンジ君・・・・・だ・・・・・。」



カヲルの最愛の人。でも、自分を殺した人。今のカヲルにとって、シンジはもはやただの好意に値する対象ではなくなっていた。
しかも当のシンジと来たら、アスカとレイの美少女二人にサンドウィッチされて、思いっきり表情緩みっぱなし。
「シンジ君、僕を握りつぶしておいて自分はこれかい・・・・・。」
カヲルの頭の中では、シンジが4体のエヴァ量産機にそれぞれ手足を捉まれ、四方に引き千切られるという地獄絵図が展開されようとしていた。



その時である。どこからともなく味噌汁の香りが漂ってきた。
「!?」
そして、ドアの隙間から一匹のハムスターがちゅたたたと駈け寄って来た。なぜか、三角巾とエプロンをしている。ハムスターがカワイク言った。
「カヲルちゃま、カヲルちゃま、朝ごはんの仕度ができまちたよ。」
「君は?」
さすが使徒。ハムスターがしゃべった位では驚かない。
「エビちゅ、ハムスタァ。仕事はおるちゅばんでちゅ。」

これが、カヲルとエビちゅの出会いだった。



TO BE CONTINUED


 

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